僕の最新著書である「水素水を科学する」ですが、第一章の書き出しは以下のように始まっています。
1997年に九州大学の白畑教授が初めて「活性水素」という概念を世に提示された米国の「BBRC(BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS)」誌ですが、この雑誌は斬新な研究内容の論文を優先的に載せてくれる雑誌の一つです。
2014年のインパクトファクターは2.27。
僕も東大医学部大学院の在籍時代の2002年に、当時の英文研究論文をこの雑誌に受理させたことがありますので、よく覚えています。
当時は今と違って英語も苦手でしたので、毎日が英文との戦いでしたが、僕の研究に対する情熱と医学論文英語力はこの時期に培われたのだと思います。
思えば、六本木でレーザークリニックを開設しながら休診日と夜に研究を続け、学位論文を書いていましたので全く休みがなかったですね。
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水素に、近年新たな医学的な価値が見出されてきたのは、この本を手に取られた方はご存知のことだと思います。
今日の医学界において「老化の進行や数々の病気の発症プロセスには、“活性酸素”が深くかかわっている。」ということが常識となってきています。
水素が医学的に注目されるようになった背景には、1956年に、アメリカ ネブラスカ大学のDr. Denham Harmanによって発表された「フリーラジカルセオリー」があります。
フリーラジカルセオリーとは、「生体内に入った酸素が、フリーラジカル反応を起こし、細胞膜や細胞内の小器官の生体膜を破壊しその結果として、DNAを傷つけ、ガンや生活習慣病、老化の原因になる。」というもので、様々な医学や生理学の研究成果によって“活性酸素”による体内の酸化が、ガンをはじめとする多くの生活習慣病や慢性疾患、さらには、老化そのものの大きな要因であることが確認されて来たのです。
特に1997年に、九州大学の白畑實隆教授によって「電解陰極水中に生成される活性水素が活性酸素を消去する」といった主旨の論文が、アメリカ生物科学誌「BBRC(BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS)」誌に発表され、これ以降、“水に溶け込む水素による治癒効果”が科学者に注目され研究され続けてきました。
白畑教授の発表は
「反応性が高く、存在時間が極端に短い原子状水素が、水の中に単体で存在することはあり得ない。」
との反論を受けましたが、のちに「水を電気分解する過程においては、陰極側から溶け出した電極材料の金属ナノコロイド(コロイド状ミネラル)に、活性の高い原子状水素が吸着されキャリアーとして機能して、強い還元力を示すこと」が示されました。
実際には水は還元されると(電子を与えられると)、水酸イオン(OH-)が生成され弱アルカリ性になるとともに、水素(H)も生成されて溶存水素量が増える性質があります。このように水を電気分解した時の陰(マイナス)極側にできる“アルカリイオン水”や“電解還元水”は、水素が豊富に溶け込んだ“水素水”となります。
さらに大きく水素療法が注目されたのは、2007年5月にアメリカの科学雑誌「Nature Medicine」にて発表された日本医科大学大学院 細胞生物学の太田成男教授らによる水素をとけこませた水の影響を培養細胞で調べたところ、酸化力が強くて体に有害な「ヒドロキシルラジカル」という活性酸素を除去できることがわかった。」といった内容の論文でした。
こちらは、新聞やテレビニュースなどのマスコミにも取り上げられましたので、“水素”を体内に摂り込むための“水素水”や“水素サプリメント”など玉石混合の様々な商品が数多く出回る発端となりました。
気体である水素が生体に対して作用するためには、まだまだ未解明で研究過程のものが多いですので、この本では個別の商品についての言及は避けます。
この本では、“活性酸素”による体内の酸化が病気や老化の原因であるなら、酸化を抑制することが重要になり、究極の還元剤である“水素”が注目されているという事実について、実際の研究データの引用を加えながら、紐解いてゆきたいと思います。