音楽が身体に与える影響は、単なる聴覚的体験を超えて、触覚や神経系を巻き込む複合的な感覚体験を提供します。
音楽中の低周波(超低音振動)、可聴領域、高周波(超高音域)の成分は、皮膚や身体全体で異なる方法で感知され、それぞれに関連する受容体が重要な役割を果たします。
わかりやすいくいうと、音楽と身体感覚の関係を考えるにあたっては、
実際に耳で聴こえている可聴領域以外に、
超低音の振動 と 超高音域、
いわゆるハイパーソニック
の影響があるということなのです。
耳で聴こえない周波数域は、人間は肌で聴いているということになります。
超低音振動は身体を「揺らす」感覚的体験を、
可聴領域は音楽を「聴く」感覚的理解を、
超高音域は脳や感情を「刺激する」深層効果を、もたらします。
これらが協働することで、音楽はより豊かな体験を提供しているともいえるのです。
1. 超低音振動(低周波音域:20Hz以下)
➀特徴
周波数:20Hz以下、耳で聴こえないが、皮膚や骨、筋肉を通じて振動として感知されます。
主に低音やリズム音に関連。
➁作用と対応受容体
ⅰパチニ小体(Pacinian corpuscles)
深部皮膚、筋膜、骨膜に分布し、低周波振動(10〜300Hz)を感知。特に250Hzに高感度。
ⅱ骨伝導
振動が骨を通じて内耳に伝わり、全身に振動として感知されます。
➂心理的・身体的効果
リラックス感や安心感を誘発。
ストレス軽減や筋肉の緊張緩和。
関連エビデンス
Skille, O., Wigram, T., & Weekes, L. (1989). Vibroacoustic Therapy: Journal of Music Therapy.
低周波振動が身体や心理に与えるリラクゼーション効果。
2. 可聴領域(20Hz~20kHz)
➀特徴
音楽のメロディ、リズム、ハーモニーを含む、聴覚的に感知可能な音の範囲。
➁作用と対応受容体
ⅰメルケル盤(Merkel discs)
低周波成分や圧力変化に反応し、音楽のリズムや触覚的要素を感知。
ⅱルフィニ終末(Ruffini endings)
皮膚の伸展や圧力変化を感知し、音楽の圧を認識。
ⅲ聴覚受容体(内耳の有毛細胞)
中高周波成分を音として感知し、音楽のメロディやハーモニーを認識。
➂心理的・身体的効果
心拍数や呼吸リズムの調整。
感情的高揚や集中力の向上。
関連エビデンス
Bolanowski, S. J., et al. (1988). The Journal of the Acoustical Society of America.
音楽の物理的振動が皮膚で感知される仕組みを解明。
3. 超高音域(超音波域:20kHz以上)
➀特徴
人間には聴こえないが、身体や脳に影響を与える超高周波音。
➁作用と対応受容体
ⅰ自由神経終末(Free nerve endings)
超高周波の微細な振動や熱変化に反応し、皮膚や神経系を刺激。
ⅱ皮膚の角質層振動感受性
超音波が皮膚表面で微振動として感知され、神経系に伝達。
ⅲ神経系(ハイパーソニック効果)
超高周波が脳内の神経活動を活性化し、快感や集中力を増強。
➂心理的・身体的効果
α波の増加によるリラックス効果。
音楽体験の深みを増強し、感情的満足感を強化。
関連エビデンス
Oohashi, T., et al. (2000). Inaudible High-Frequency Sounds Affect Brain Activity: Hypersonic Effect. Journal of Neurophysiology.
超高周波音が脳波パターンと感情に与える影響。
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