TakahiroFujimoto.com

HOME MAIL
HOME PROFILE BOOKS MUSIC PAPERS CONFERENCES BLOG MAIL CLOSE

BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

三島由紀夫の「英霊の聲」

昨夜赤坂見附を通過したときに、二・二六事件の事を思う瞬間がありました。

日本の陸軍皇道派の影響を受けた青年将校らが約1500名の下士官兵を率いて起こしたクーデター未遂事件。

1936年に事件が起きてから昨日はちょうど80年という節目の日だと、どこかで見た記憶が蘇ってきたのです。
多くの犠牲者がでた事件であり、当時蔵相だった高橋是清も赤坂の自宅二階で反乱軍の青年将校らに胸を6発撃たれて亡くなったと習いました。

高橋是清と言えば、日露戦争の戦費調達のために渡英、公債募集を成功させ、当時の日本の活路を開いた人物ですよね。

僕が歴史以外で二・二六事件の事を思い出すのは、高校生の時に読んだ三島由紀夫の「英霊の聲」という本です。

mishima

こちらの本には表題の「英霊の聲」とともに「憂国」「十日の菊」という二・二六事件三部作と言われる作品が収められています。

12813996_10209210773294840_8745300233882775647_n

僕はとくに「憂国」は三島の最高傑作のひとつに数えられると思います。

憂国の舞台は四谷青葉町。

三島由紀夫も四谷区永住町(現在の四谷4丁目)で生まれ育ちましたので、クリニックFの徒歩圏内。

11歳で二・二六事件を体験し、20歳で敗戦を経験した三島由紀夫が、盾の会の思想とともに市ヶ谷の陸上自衛隊駐屯地で割腹自決したのは、この本を書いたわずか4年後の45歳の時でした。

僕にとって文章を書くことは思考の整理にもつながります。

書くことを生業とする多くの作家にとっては、どうなのでしょう?

三島由紀夫の端正で緻密な文章に今も読む度心打たれ、彼の言葉をそのまま母国語で読み感性を共有できることに思わず感謝したくなることさえある僕ですが

この三部作を書くことによって彼のその後の思想は様々な形を現実に成し、色彩が与えられ、少しずつ膨れ上がり、いつしか決壊を超え溢れていったのではないか・・・とふとした時に思うことがあります。

昨夜もそんな夜でした。

憂国の主人公が割腹自殺する際の見事な描写が、三島の自決に結び付いたのではないかと思いましたね。

半生の中で何を自分は成し遂げることができたのだろうと思うと、迷子になりそうな時もありますが、最近そういえばゆっくり三島文学を読み返す時間もなかったような気がします。

来月は出張もまたありますので、スーツケースにいくつか詰めて、旅先でまた読み返してみようと思います。


カテゴリー