【新国際学会周遊記──“フュージョン型キャリア”という生き方】
世の中のビジネスも研究も、大きく分ければ「ゼロから生み出すクリエイト」と、「既存のものを掛け合わせるフュージョン」がある。
僕は昔から、後者のフュージョン型が得意だった。

◆ フュージョンの感覚
医学生時代、痛みの治療を研究していたときに出会ったレーザー機器が、その象徴的な経験だった。
医学と工学が一瞬でつながり、「あ、これが僕のやりたいことだ」と直感した瞬間だ。
その後、MBAやDBAで経営管理学を学び、薬科学で経皮デリバリーの研究を進めるなかで、異なる知識の組み合わせが、まったく新しい治療やビジネスモデルを生むことを何度も経験した。
◆ 3つの理系の博士号はフュージョンのため
僕が医学・工学・薬科学と3つの博士号を取ったのは、資格のコレクションのためではない。
それぞれの分野を自分の中で統合し、分野間の翻訳者になるためだった。
医学は生物学的な「人体と病気のメカニズム」を、
工学は物理学的な「技術や装置の原理」を、
薬科学は化学的な「分子やデリバリーのプロセス」を扱う。
この3つをひとりで理解できるようになったことで、
「レーザーの波長特性を皮膚生理に合わせて設定する」
「ナノリポソームの薬物動態を臨床応用に結びつける」
といった異分野融合の研究や臨床が展開できた。
◆ 「共通言語」がフュージョンを加速させる
異分野展開で重要なのは、相手分野の“基礎共通言語”を身につけることだ。
たとえば物理学の「波長」「吸収係数」や、経営学の「ROI」「スケーラビリティ」「企業価値評価法」。
これらの基本語彙さえ知っていれば、相手の専門家と議論ができ、論文が読める。
そして、その基礎を足がかりに、ほんの少し追加学習をするだけで、
異分野をまたいだ展開が一気に現実化するのだ。
◆ AI時代に求められる“繋ぐ力”
AIが単一分野の知識を深掘りしてくれる時代、
人間に残る価値は、異なる分野を横断して繋ぎ合わせる力だと思う。
そして、その力を育てるための道具こそが、
・幅広い基礎知識
・分野間の共通言語
・そして、フュージョンのセンス
なのだ。
僕のこれまでのキャリアは、まさにこの「フュージョン型」で築かれてきた。そして今、時代の要請もそれを後押ししているように感じている。
これからも、異なる旋律を掛け合わせて、まだ聴いたことのない音楽を奏でるように、学問やビジネスを横断して新しい価値を創り出していきたい。
