今日のフジテレビ系列「とくダネ!」。観てくださった方々、ありがとうございました。
思いがけず沢山のメッセージをいただき、驚いています。
Adoさんのうっせぇわ、本当に流行っているのですね。
放送では限られた時間でのコメントになっていたようですので、補足を兼ね今回僕から局の方にお話した内容を追記しておきます。
1)まず うっせぇわの特徴として僕が感じたことは、曲にメロディが無く、リズム感で曲が支配されていること。
音楽の三要素である、リズム、メロディ、ハーモニーの中でも 主にリズムだけで構成されている、簡単にわかりやすくざっくり分類すると、ラップみたいなイメージですかね。
以前より様々なところでお話していますが、音楽三大要素のリズムは旧脳に働きかけます。
脳の中でも情動や本能などを司る部分です。
そこに、本能を解放するような、脳に対するショッキングな言葉を入れている、強い語気の言葉を混ぜ込んでいるんですね。
言葉自体も非常に簡単でわかりやすい言葉を使っています。
そのため、老若男女問わず印象に残りやすい。
普段は思っていても口に出せない言葉が並び、歌を歌ってるだけと言うエクスキューズが成り立ちスカッとする印象がある。
コロナで行動や生活により制約のある今は、特に響くのかもしれません。
2)次に思ったのは、このAdoさんは物凄い歌唱力がありますね。
このメロディーの無い曲がここまで印象深く記憶に残るのは、低い音から高い音まで幅広い声質で歌いこなせていること。
表現力が素晴らしい。
通常の声があり、ウィスパーボイスがあり、怒声があり、裏声があり。
たとえば、うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ は、ちょうど1オクターブ離れた音を繰り返しているんですが、これを実際に歌うとなると、通常の声と裏声を繰り返さなければならないことになり、かなり大変ですよ。
普通であれば、警報や警戒音に使われる音の並びです。
表の人格と裏の人格を行ったりきたりしてるような、建て前と本音をオクターブの端と端で行き来してるような、そんな印象さえ受ける、見事な女優さんですよね。
3)そして、この曲は短調をベースに作られています。
音楽には、長調と短調がありますが、もの悲しい印象を与えるときに短調は使いやすい音階です。
さらに、ここまで意識しているかわかりませんが、この曲YOUTUBEで聴く限り、ロ短調なんですよね。
絶対音階のシから始まるのです。
このロ短調は、クラシック音楽だと、
チャイコフスキー「交響曲第6番<悲愴>」、ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」などに使われているんです。
孤独や不安、焦燥感、絶望感から始まり、それがいつしか静かな期待や未来への希望が持てる ようなイメージになりますね。
あとは、取材ではお話ししませんでしたが、この曲わざとなのか冒頭のフレーズ、懐かしいチェッカーズの「ギザギザハートの子守唄」へのオマージュとも取れる歌詞と曲調で始まります。
チェッカーズが「ちっちゃな頃から悪ガキ」だったのに対し、こちらは「ちっちゃな頃から優等生」。
抑圧された社会で、高齢化社会の中、一生懸命頑張ってきた若い世代。
それがまたここに来て苦しい生活や未来に希望が持てない。
優等生で頑張ってきたのに、というZ世代の叫びなんでしょうね。
迸る才能を感じましたよ。
普段はクラシックにどっぷりな僕ですが、いつもとは違うジャンルの曲に考察を深める、今回は良いチャンスをいただきました。
僕も取材依頼でで初めて聴きましたが、耳に残りますよね。