国内で2015年の話題と言えばもう一つ、Qスイッチピコ秒レーザーをあげることができます。
米国では3年前に発売され、当初はとても注目されたものの、医学会では生体においてはナノ秒のレーザーとの違いを今一つ明らかにできずにいました。
刺青はともかくとして、特に肝斑に関しては「ノーレスポンス」と評価されてしまったのはレーザーを専門に扱う医師としても残念でした。
一般の医用レーザーを利用した場合、照射系は数mmほど。
ターゲットとなる顆粒が皮膚のごく表層にあるのならばともかく、メラニン顆粒も刺青色素もある程度深い位置にあります。
さらにメラニン顆粒を含んだ皮下の一定の体積の球体に対してレーザーエネルギーを加えた場合、中心の温度の放熱と、端の温度の放熱の経時はまったく異なることが分かります。
つまり、いくら照射幅をピコ秒にこだわっても、組織の放熱時間を考えると、ナノ秒とピコ秒では大差がないことが指摘されているのです。
この意見に対抗するには、なるべく直径の細いレーザー光をスキャナ状に肌に打ち込む必要があります。
実は少しでも工学の知識があれば、ピコ秒レーザーもフェムト秒レーザーも簡単に作れます。
コンピューターを組み合わせて自作できるのと同じで、いまはすべてがモジュール化されてキットが販売されているからです。
例えばこの コヒレント社のMira-900 system はcontinuous-waveで、700nmから1000nmの範囲の好きな波長で、 pico秒と femto秒の発振ができます。
過去の実験経験では、こちらに4段階程度の増幅装置を付けて信号を増幅すると、肌に照射しても効果があるぐらいのフルレンスを得ることが出来ました。
僕も昨年からこうした長所と弱点を補うための、ピコ秒+セミフェムト秒のスキャナ制御の新たな医療レーザー機器開発にかかわっていますので、細かいデータはそちらの機器で、数学物理学的に出して、本年以降発表してゆこうと思っています。
国内の臨床のデータは取れる先生がたくさんいらっしゃいますが、僕は機械オタクらしく、工学理論を軸に自分にしかできない発表をしてゆきたいと思います。
今年も国際学会にいくつ演題を通すことができるか、楽しみです。