レーザーを患者さんに照射するとき、介助でスタッフがつきます。先日その介助が終わり、患者さんが帰られた後、声をかけてきたスタッフがいました。
「メラニンにレーザーが“ジャストミート”すると、他の場所を打つときとはまた違った、独特な音が鳴るんですね。“ペシッ”というか、“パリッ”というか・・・それが初めて今日わかりました!」
その話を聞いて、僕はこのスタッフを見る目が正直、変わりました。優秀なスタッフだとは常々思っていましたが、何十人ものスタッフと今まで一緒に仕事をしてきた中、こんなことに気付くことのできるスタッフは今までいなかったからです。
以前のブログで書いたことがありますが、僕は絶対音感があります。
昔、絶対音感を持つプロゴルファーが、
「パターでボールを弾く音を聞いた瞬間に、そのボールがホールに入るか、わかるときがある」
とコメントをしていたのを聞いて、
「わかる わかる」
と、深く頷いてしまったことがありました。
普段の生活でも、この絶対音感が役立つことはいくつかありますが、仕事で言えば、冒頭のスタッフの話のように、レーザー照射時、メラニンが数ミリの狂いもなく、“ジャストミート”すると、ある一定の高さの音がするので、僕はそれを照射終了のメルクマール(判断基準)にしているのです。
シミと一言で言っても、それは平面ではなく、3Dで捉える必要があります。
まず顔を見て、どの場所にシミがあるかを特定します。これは医師でなくても、誰もが見ればわかる平面的なことですので、ここに光を「ジャストミート」させることは簡単なことですよね。機器の仕様がわかり、視覚の正確さがあれば可能である、ということになります。
しかし、ここからが問題です。皮膚は当然平面ではなく、「深さ」のある立体です。
そして、シミによって存在する深さが違うのです。
温泉や油田の採掘を例えに考えるとわかりやすいかもしれません。
どこまでも続く地面の中から、
「ここだ」
と、まず当たりをつけます。
そこから源泉を探って慎重に掘り進めていきますよね。
僕もメラニンの「源泉」を探し当てるような気持ちで、毎回シミの深さを想定し、機器を選び、パワーと波長を調節した上で、照射を行います。
ただ地面と違って皮膚は「スコップや機器で掘る」ことができませんから、波長に対する知識と音だけを頼りに深さをアジャストしていくわけです。
このとき、面で捉えたポイントがわずかでもずれれば、いくら掘っていっても「ジャストミート」の音がすることはありません。
また、深さの違うメラニンの焦点がすこしでもずれれば、やはり「ジャストミート」の音はしないのです。
これは多分医師や技術者の中でも熟練の人か、もしくはよっぽど耳の良い人でないと聞き分ける事ができない。
僕自身は、絶対音感がないとその感覚がわからないのではないかと思っていて、この話を他人にしたことはありませんでした。
それが、こんな身近に、その音の違いに気付いてくれるスタッフがいたとは・・・
自分は良いスタッフに恵まれているんだな、と思いましたね。