今月号の米国皮膚科学会誌は、光エネルギーの肌の影響についての細かい総論が特集されていました。
僕の様な光治療を専門にしている医師にとってはお宝ですね。新たな研究のヒントももらいました。
以下、アブストラクトを訳したものです。
光生体調節(Photobiomodulation, PBM)は、以前は低出力レーザー光線療法として知られていた非侵襲的な光療法であり、可視光(VL, 400-700 nm)スペクトル内の赤色光(RL, 620-700 nm)および近赤外線(NIR, 700-1440 nm)スペクトルの波長を利用します。PBMは、さまざまな皮膚疾患および非皮膚疾患の治療において有望で、ますます広く使用されている治療法です。
RLおよびNIRの光子は、ミトコンドリアのシトクロムCオキシダーゼ(COX)を含む内因性の光受容体によって吸収されます。
COXの活性化は以下の変化を引き起こします:ミトコンドリアのアデノシン三リン酸(ATP)の調節、活性酸素種(ROS)の生成、および細胞内カルシウム濃度の変化。ATP、ROS、カルシウム濃度の調節に伴い、インスリン様成長因子やホスホイノシチド3キナーゼ経路(PI3K経路)などのさまざまなシグナル伝達経路が活性化され、これが細胞の増殖、移動、分化に対する下流効果をもたらします。
効果的なPBM療法には、照射量(fluence)、治療時間、出力パワーなどの治療パラメーターが重要です。PBMは一般的に耐容性が高く、安全性も高い治療法であり、最も一般的な副作用として一過性の紅斑が見られますが、これは自然に消失する傾向があります。
(J Am Acad Dermatol 2024;91:793-802.)