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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:医療

オフェンシブ栄養学

オフェンシブ栄養学がいよいよ出版され、反響いただいています。

僕も参考にした文献とともに、読み返しているところです。

医学の歴史は近代までは、栄養不足と感染症との戦いでした。

クリミア戦争の兵士に対して感染症の予防に大きな功績を残したのはナイチンゲールでしたが、日本の戦国武将達も各地の温泉で傷を癒した事でしょう。

医学は、いかに正確な情報をいかに手に入れるか?

さらにその情報をいかに根拠をもって、取捨選択するかが生死を決めていたわけです。

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徳川13代家定将軍(享年35歳)、14代家茂将軍(享年21歳)は短命で、脚気(ビタミンB1不足)で亡くなっていますが、これは白米信仰のせいと言われています。

玄米にはビタミンBが豊富に含まれていますが、精米してしまうと無くなるのです。

当時脚気は、なぜか高貴なものの方が罹患した病気でしたが、感染症の可能性も否定できなかったのです。

明治時代の陸軍と海軍では兵士の四人に一人が罹患し、死亡率が2%もあった脚気対策を、陸軍軍医の森林太郎(小説家の森鴎外)と、海軍軍医の高木兼寛がそれぞれ指導することになりました。

感染症を疑った鴎外が指導した陸軍では、日露戦争期間に27000人の死者が戦死者以外に出てしまい、一方で栄養素に注目した高木兼寛が指導した海軍では病気による死者がほとんど出ませんでした。

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病気になったら薬を飲む人は多いと思いますが、薬は基本的に病気に対して処方するもの。

マイナスをゼロにしかできません。

健康な人は栄養素の高い食材を取り、場合によってはサプリメントで補填して、健康の予備力を上げておくことが大切となります。

現在では、多くの医療情報がインターネット上に載る時代ですので、新たなサプリメントや治療法に興味を持ったら是非、日本語以外の言語で検索を掛けてみてください。

日本語の健康医療情報、美容情報が、いかにガラパゴスであるか、驚くと思いますよ。

これからの時代は、解法暗記の記憶力勝負の勉強ではなく、多くの情報を得て、自分でジャッジできる教養を身に着けることが大切なのかもしれませんね。

 


再生治療について

最近、患者さんから、エクソソームやら幹細胞上清液やらの再生治療ってどうなのですか?と良く聞かれるようになりました。

医師の間でも知識の差がかなりあるように思います。

僕も物理学、化学、生物学の分野で3つの博士号を持った唯一の日本の医師ですので、ちょっとこちらに、現在のアカデミックな見解をまとめておきますね。

再生医療のカテゴリーは多くあると思いますが、確かに多くの魅力を持っていることは事実です。

自分の感覚だと、特に美容医療の場合、すべてがまだ実験段階でどんなリスクが紛れているか全くわからず、クリニックFでは、静観中です。

ただし、クリニックFでは写真の通り、細胞培養用の冷蔵庫も機器も用意して、大学病院などとの共同研究は行っています。

さらに、レーザーとのコンビネーション治療については、すでに昨年に英文論文 ( Lasers Surg Med. 2022 Oct;54(8):1167-1176. doi: 10.1002/lsm.23590. Epub 2022 Aug 2. PMID: 35916125) も発表しています。

こうした研究の中、「分化能」と「自己複製能」がある幹細胞に限定すると、三つに分けられます。

1)胚性幹細胞(ES細胞) 受精卵由来

2)人工多能性幹細胞(iPS 細胞) 細胞由来

3)体性幹細胞(成体幹細胞) 生体由来

です。

1)胚性幹細胞とは、「胚」からつくられる多能性幹細胞です。

受精卵から分離し、あらゆる細胞に分化できる能力(多能性)を持っている細胞です。

一方で、受精卵の成長過程から胚を抽出しているために、倫理的な問題で慎重な対応も求められています。

2)京都大学の山中伸弥教授(当時)が、ES 細胞のようにあらゆる細胞に分化できると能力を持った細胞を作り出すことに成功し、ノーベル賞を受賞したのはご存知だと思います。

iPS 細胞は患者自身の皮膚の細胞から作り出すことができるので、ES 細胞が抱える拒絶反応や倫理的問題を解決できる可能性がありました。

しかしながら、日本政府は 2019 年、iPS 細胞の研究支援資金の打ち切りを発表しました。

なぜならiPS 細胞を作成時に発癌に関連する遺伝子を用いているため、細胞が癌化してしまうリスクがあるということです。

正常細胞であっても癌化のリスクはありますので、研究が進んでもこの問題を解決するのは難しく、実用はかなり先ではないかと思っています。

3)体性幹細胞は、成体幹細胞とも言われています。

体性幹細胞培養には自分自身の細胞を用いることができ、採取も容易であるため、すでに実際の治療に用いられているものもあります。

倫理上生き残るのはこの分野だけでしょうね。

そうなると自分の臍帯血を保存したり、自分の体内から幹細胞を増殖されるペプチドの研究などが進むと未来があるでしょうね。

一方でES 細胞や iPS 細胞に比べると、分化できる細胞は限られます。

つまり、脂肪組織から取ったものは、脂肪にしかなりません。

歯髄から取ったものは、基本的に歯髄にしかなりません。

その用途で用いられている場合は良いと思いますが、例えば、外胚葉由来の神経組織や、皮膚組織はそもそも末梢に胚細胞が存在しておらず、再生しません。

これを点滴で入れることで、身体が若返るかどうかはご自身で判断してください。

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次に美容目的での再生治療について。

色々なマーケティング用語がありますし、多くの宣伝があると思いますが、

1)幹細胞
実際に幹細胞自体を化粧品に配合することは不可能です。
幹細胞は非常にデリケートな「生き物」であり、外に出せばすぐに死んでしまいますし、たとえ、CPC(細胞培養加工施設)の環境下でも細胞の生存は 48 時間が限界です。
それ以上の保存となるとマイナス 196℃以下(液体窒素)での保存が必要です。CPCは価格も維持も高額で、作れるものも少量なので、コストが合わないでしょう。

2)培養上清液
培養上清液は、幹細胞などの増殖に用います。細胞ほどではないにせよ、当然のようにエクソソームやペプチドは壊れやすく、 1 年以上の保存にはマイナス 80℃の冷凍庫が必要です。
また、すべてのエクソソームや、ペプチドが良い働きをしてくれるとは限りません。体内にある癌細胞ですら、エクソソームを放出しています。功罪あるでしょうね。
冷蔵庫保存ができない場合は、フリーズドライにし、パウダー化するしかありませんが、これらは、価格においても、実際の医療現場では1cc あたり約 1 万円で売買されていますね。
その場でフリーズドライを溶かして使用する化粧品ならば、ちょっとは信憑性が上がりますが、いずれにせよ、500ダルトン以下の物質でないと表皮下には入りません。となると、大きさ0.1nmぐらいですかね。ナノ化された粒子は50nmぐらいですから、お考え下さい。

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医療は進化するものですし、検証は必要だとは思いますが、日本は、特にこうした新しいものに対する法律は後手後手に回ることが多く、抜け道が沢山あります。

マウスで数例実験したのちに、日本人に使用されていることも良くあります。

科学雑誌のNatureから日本のやり方は酷いと指摘を受けてしまっているような状況です。

なんとかワクチンもそうでしたよね。

そう考えると、レーザー治療も、最初は癌化するかなど言われていましたが、1980年代から臨床利用されてから50年近く。

かなり安全であることが確認されていますね。

美容医療と言っても、医師免許を持った人間は医療の一端を担うわけですから、エビデンスがあり、安全な治療を選択してゆきたいものです。

 


欧州皮膚科学会の会員誌

本日届いた欧州皮膚科学会の会員誌。

アトピー性皮膚炎の薬についてでした。

日本語では得られない情報も多く、こうした学会誌には助けられていますね。


今月号の日本医師会雑誌「ウイズ・コロナ社会における高齢者のウェルビーイングを考える」

今月号の日本医師会雑誌は、「ウイズ・コロナ社会における高齢者のウェルビーイングを考える」でしたが、掲載論文を見ただけでも、コロナ渦およびワクチン薬害以外にいかに、多くの問題を引き起こしたかわかります。

過去にない高齢社会。

他者との接触が無くなることで心身共に多くの問題が顕在化しました。

さらに幼少期のマスクによる認知問題。

想定するよりもはるかに致死率の低いウイルスであったのに、数兆円の国家予算を費やすほどの対策をすべきであったのか、途中で軌道修正ができなかったのか、政策を半強制した首長や政治家さんに改めて問いただすべき案件だとは思いますね。

【論文】

COVID-19パンデミックにおける高齢者の行動変化

コロナ自粛後の身体変化に関するJCOAアンケート調査ーコロナロコモの実状と対策

コロナ禍での行動制限が与えたフレイルへの影響

コロナ禍における生活習慣病管理の重要性

COVID-19パンデミックにおけるメンタルケア

COVID-19パンデミックと認知症

COVID-19 パンデミックがパーキンソン病患者に与えた影響

就労と社会参加を通したウェルビーイングへのアプローチ

健康長寿を支える地域のシステムづくり

一共創の場形成支援プロジェクトにおける取り組み

高齢者のポリファーマシー対策


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