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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

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再利用チップに御用心

今日クリニックに出勤したら見覚えのない社名の郵便物が来ていました。

なんだろうと開封してみると、

「フラクセルを導入されているクリニック様へ」

という表題がついています。

ちょっと読んでみると、

「接続機械をつけるだけで、フラクセルチップがなんと再利用できます。」

「タイタン用もあります」

「コスト削減できます。」

という言葉が…。

いわゆる“再利用チップ”購入の申込書だったのです。値段も正規のチップに比べると、驚くほど格安です。

写真を撮ってそのままブログにアップしようと思ったぐらい、ちょっとびっくりしてしまいましたが、こういったものが横行しているのですね。

フラクセルやサーマクール、タイタンは、一定の容量を超えると機器の先端に使う“チップ”が使用できなくなります。

その消耗品の金額が高いものも多々あって、それ故にそれぞれのレーザー施術は、「最低価格」が自動的に決まってしまうことも多いのです。けれど、本来使い捨てをすべきチップのコンピューターROMを書き換えてしまうことで、これらの消耗品を再利用する人たちがいる・・・というわけです。

都内でも安価で施術を受けられるクリニックが何軒もある時代ですが、実はこの1週間余りの間に、他院でフラクセルやサーマクール等の施術を受けたが、

「ひどい火傷をしてしまった」

「かえって状態が悪化している」

「受けていた説明どおりの効果を得られていない」

「何度も通っているが、むしろお金を取られすぎている気がする」

・・・などなどの理由により、なんとかならないか、セカンドオピニオンを求めていらしたり、クリニックFで改めて治療を受け直したい、と言っていらした患者さんが、5人もいました。医者含めスタッフが20名くらいいるような大手のクリニックで「5人」という数字は決して多くないかもしれませんが、クリニックFのような、医者と言えば僕しかおらず、一日に数名の患者さんしか診ない細々とやっているクリニックで「週に5人」というのは、結構な数字なのですよ。

以前から他院でのトラブルに懲りていらしてくださる患者さんは結構いましたけれど、それが最近特に増えているようで、ちょっと気になりますね。

レーザー治療で起きるトラブルは、もちろんパワーやパルス幅、波長、カバレッジの%選択ミス、機器のメンテナンス不足、医師の技量不足、知識不足・・・ということが原因の場合も多いと思うのですが、再生チップを使用したことで、こうしたトラブルが起こっている可能性も否めません。

使い回しの注射針を使われることを想像してください。ぞっとしますよね。なにより、僕はレーザーの開発現場で、技術者たちがどれだけ苦労をして新しいレーザーを作り上げているか、実際その工場や工程を様々な国で見てきていますし、それらが文字通り「血と汗と涙の結晶」であることを知っています。格安の再生チップは、安全性を欠くばかりか、そういった人たちの努力を踏みにじり、技術者・研究者に対するリスペクトを欠くものであるといっても過言ではないと思います。

こればかりは賛成できません。

クリニックFのレーザー治療価格は、国際基準に照らし合わせたものです。

ゼロを二つ取ると、そのままUSドルになります。新しく出るレーザーを定期的に購入するレーザー専門のクリニックであれば、クリニックFの価格と比較して、値段をそんなには下げられないはずなのですけれどね。

しかしながら、キャンペーン価格などで、どう考えても原価を割るような価格で治療を提供するクリニックがある。

レーザー治療を安く提供するクリニックはありますが、安く提供するためにはそれなりの理由があるのです。

日本におけるレーザー医療全体の信用と未来に関わる問題ですから、僕ももう少しちゃんとリサーチしてみたいと思っていますが、これからレーザー治療を受けようとお考えの方がいらしたら、クリニックを選択する際にはお気をつけください。


瀬戸内の海の幸

講演後に、赤池先生ご夫妻に、美味しい海の幸を御馳走になりました。

おいしいお酒を手に入れてくださったとおっしゃっていたのですが、

まず出てきたのがなんとこの本格芋焼酎「森伊蔵」しかもそのプレミアムバージョン

「森伊蔵 極上の一滴」

だったのです!!!

これには酒好きの僕もびっくり。

東京ではまず手に入らないプレミアム焼酎です。

初めて飲ませていただきましたが、甘い香りとまろやかな味わいにやられてしまいました。

皆で味わいながら飲んでいると、もう一本あったのです。

なんと次に出てきたのはこれ。

あの幻の焼酎「魔王」です。

この焼酎もめったに手に入らないのです。

しかもお店で出てくるものは、瀬戸内の海の幸である美味しいものばかり。

本当においしい焼酎をロックで沢山いただき、酒好きの僕としては珍しく、夜10時には撃沈してしまいました。

赤池先生、また関係者の皆様。

本当にありがとうございました。

 


眉山

講演の後、会食まで少し時間があったので、眉山に連れて行っていただきました。

徳島駅を背にすると、赤池先生のクリニックのあるビルが見えます。徳島駅前通りには背の高い椰子の木があるので、南国に来たなと感じますね。

駅前通りをまっすぐつきあたると、阿波おどり会館があります。

こちらから眉山まで、ロープウェイが出ているそうです。

僕たちは車で眉山を目指しました。

市内から約15分ぐらい。山道を登ってゆくと眉山の頂上の公園につきました。

ここから 長い階段を登ると視界が開ける場所に出ます。

そこは徳島市から鳴門海峡、淡路島、そして海の先には和歌山県が見える絶景でした。

阿波おどり会館までのロープウェイの駅がこの展望台の下にあるようで、ロープウェイがちょうど出発したところでした。

ロープウェイ乗り場にはこんな映画の撮影記念看板がありました。

レストハウスにもこんな文字が。映画のおかげで眉山は全国的に知名度が上がりましたね。


徳島出張

生まれて初めて徳島県に行きました。

徳島の赤池瞳先生率いる赤池クリニックグループで開催された、講演会に呼んでいただいたのです。

僕にとって徳島といえば

「阿波踊り」

「鳴門海峡のうずしお」

そして僕が漫画「小早川伸樹の恋」連載のときに、医療監修をさせていただいた、柴門ふみさんの出身地。

ただ実際空港でこの阿波踊りのブロンズ像を見た時は、ちょっとびっくりしました(笑)。

そういえば、羽田発徳島空港行きの同じ便に、プロレスの蝶野正洋さんが乗っていて、徳島空港で人だかりになっていました。迫力ありましたよ。

会場は徳島駅に接する「ホテル・クレメント」

赤池瞳先生の経営されるクリニックもまさに駅前のビル。そしてこの「ホテル・クレメント」には赤池グループのエステティックサロンもあるのだそうです。

ホテルの一室から見た光景はこんな感じ。

右手には、松嶋菜々子さん主演の映画で話題になった「眉山」もよく見えます。

そういえば、僕はこの映画、海外の学会に行く時に機内で見たのでした。もうひとつ徳島との接点がありましたね。

講演会場はこんな感じでした。

僕の講演は、

「肌の老化の仕組みと美肌レーザーの歴史~世界の最新技術でここまできれいになれる~」

というもの。

講演の演題そのまま、肌の老化の仕組みと、美肌のレーザー機器の歴史の話をさせていただきました。

僕は通常同業者=ドクターに対して講演することが多いので、難しいスライドが多かったと思うのですが、皆さんとても熱心に聞いて下さって、感激しました。

聞けば、この講演会は今回が5回目。僕のブログにも登場した、エンビロンの創始者デスモンド・フェルナンデス医師や、大阪の葛西形成外科の葛西健一郎先生などが過去にご講演されているとのこと。

あまりのビックネームが並ぶので、僕なんかでよかったんだろうかと恐縮してしまいました。

講演が終わった後、赤池クリニックを見学させていただきました。

駅前のビルの中にあるクリニック。

細長い間取りをとても綺麗に使っていらっしゃいました。

診察室にはアファーム・マルチプレックスとがありましたよ。

なんでもサイノシュア社によると、この機器は四国四県に一台しかないのだそうです。


巨星落つ

実は京都出張に出掛けていたのは2月の終わりのことでした。

先週から僕はアメリカ・サンフランシスコで行われていた2009年米国皮膚科学会(AAD)に参加しており、その間のIT環境が読めなかったため、滞在中にアップするブログを出発前に書き溜めていたのです。

現地でもし状況が整えば、今年のAAD最新情報を御紹介しようと思っていました。

ところが、サンフラン滞在中思いがけず一人の偉大な人物の訃報を耳にすることになり、大きなショックを受け、それどころではなくなってしまいました。

そして、ショックを受けたまま、今日の夕方帰国しました。

日本最大のレーザーディストリビューター(輸入代理店)=株式会社JMECの創始者である森下純一元社長が、肺腺がんのためにわずか60歳で亡くなったのです。

アメリカに発つ前、東京医大にお見舞いで伺ったばかりの事でした。

森下社長はある老舗の医療機器メーカーから独立され、平成7年に株式会社JMECを設立。そのカリスマ的な営業力と統率力に、初期からマーケティングを担当されていた現社長である西村浩之氏のインテリジェンスが加わり、このふたりの素晴らしいケミストリーによって、JMECはわずか数年で業界ナンバーワンといわれる企業へと成長します。

森下社長は、人的魅力に溢れた人であったのはもちろん、市場に何が必要かという事に対して天才的な嗅覚を持った人でした。

ロックス・アンダソンの熱融解理論に基づいた、アレキサンドライト脱毛レーザーであるサイノシュア社LPIRを、日本人に対して美容目的でかつ安全な脱毛レーザー機器として見出し、当時の厚生省未認可商品を、医師の個人輸入という形で日本の市場に取り入れたのです。

脱毛と言えばエステティックサロンで針脱毛を行っていたような時代です。今では当たり前の「レーザー脱毛」という施術がこれによって生まれ、LPIRは脱毛機器市場で一大ヒット商品となりました。また、それによって美容のクリニックと言えば「美容整形」クリニックしかなかった日本に、新しく「美容レーザークリニック」「美容皮膚科」というものが生まれたのです。

レーザーとはまた違う「光治療」機器の代名詞=オーロラや、セルライトを機械で解消するフランス製の「エンダモロジー」を日本に持ってきたのも森下社長ですし、「メディカルスパ」や「アンチエイジング」という言葉をこの日本で医療関係者に広めたのも、森下社長なのかもしれません。そういった意味でも彼は本当の目利きでしたし、日本における美容医療、レーザークリニック、そしてアンチエイジングの歴史はJMECと森下元社長を抜きにしては語ることができません。社員の方々が、森下社長の“商才”を本当に尊敬されていたのを、僕は大学病院にいた頃からよく耳にしていました。

実は森下元社長は全くの下戸。お酒は一滴も飲めませんでした。

でも、飲みや歌いに行く席で、毎回新たなブラック&親父?ジョークを仕入れて、皆を楽しませてくれたのを思い出します。場の空気をいち早く読み、誰よりも気遣いをされる方でした。

森下元社長が僕に繰り返し言ってくれた言葉があります。

「藤本先生が僕に初めて会ったとき、なんて言ったか覚えていますか?

“僕はレーザーの世界に初めて入った新参者です。どんな事でも努力しますので、御指導ください。”

・・・と、僕に頭を下げて挨拶してくれたのですよ。当時、若いお医者さんでそれほど謙虚な人を見た事がなかったので、とっても印象深かった。

その姿を見て、心からサポートしたいと思ったのです。」

と。

僕自身は、ただ当然のことをしただけのつもりで、実はそんな挨拶をしたことすら覚えていなかったのですが、それでもそう言ってもらえると嬉しくて、今思えばずいぶん甘えさせて頂きました。森下社長はそのお言葉通り、僕が悩んだとき、壁にぶつかったとき、挫折しそうになったとき、いつも力になってくれました。そして、現在の僕を支えてもらっているネットワークの土台をいくつも築いてくださったのです。

たとえば、JMEC主催のトータルアンチエイジングセミナーがきっかけとなった出来事があります。セミナーで僕の講演を聴き

「感動しました」

と言ってくれたマックスエンジニアリング社(現ルートロニック社)のヘイリャン社長が、2004年に韓国での講演に僕をスピーカーとして呼んで下さった。

それが僕にとって初めての海外講演となり、これがまたひとつのきっかけとなって、また別の国で行われる次の海外講演へと繋がっていきました。

現在まで僕は31回の海外講演をさせて頂いており、ブログ「国際学会周遊記」「新国際学会周遊記」もそこから生まれました。

森下社長が、僕のここまで来る道筋を、最初に示し、創って下さったのです。

ヘビースモーカーだった森下社長。肺の扁平上皮癌は喫煙と多いに関連するのですが、森下社長が闘病した腺癌は喫煙には関連がないと医学的には言われています。

因果なものですね。

ブログのタイトルにした「巨星落つ」とは、大きな業績を残した偉大な人物が亡くなってしまう事。

「惜別の念をこめている」

と辞書にありましたが、森下元社長はこの日本の美容レーザー界において、本当に大きな功績を残した人ですし、また僕自身にとって森下社長の存在は巨星に値するほど大きく、教えて頂いたことのすべてが、一生の財産となっています。いくら感謝してもしきれません。

60歳は、あまりに若い。若すぎますよね・・・。

明日がお通夜。明後日が告別式となるそうです。

森下元社長のご冥福を心から、本当に心からお祈り申し上げます。


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