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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

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2011全米皮膚科学会の気になった演題

全米皮膚科学会の演題は、多岐にわたった演題が発表されるので、レーザー治療を行っている医師にとっては診療に直結する最新の発表が多く、非常にためになります。

去年は3つの演題を発表したので、講演を聞く時間があまりなかったのですが、

今回は、莫大な講演の中から興味のあるものをピックアップして、滞在が短くなった分、寸暇を惜しんで(笑)聞いてきました。

アメリカの学会は著作権がうるさいので、講演の中のスライドをここで写真で載せるわけにはいかないのですが、雰囲気が分かるように、演題名と人物の写真だけアップしますね。。

個人的に、一つ興味深かったのは、太陽光のエネルギーのうち、可視光線の肌に対する影響の演題。

太陽光は、紫外線、可視光線、赤外線の光が含まれ、それぞれ7%、40%、53%位のエネルギー配分を持ちます。

太陽光が肌に加齢現象を与えることはよくわかりますが、そのうほとんどの働きは、7%分のエネルギーでしかない紫外線だと言われてきました。

ほぼ可視光線のみのスペクトラが含まれている蛍光灯の光で、肌が加齢をするとは、通常は考えられないですよね。

太陽光線の中でも、肌に悪いのは紫外線だけだと思ってきました。

しかしながら、この発表によると、太陽光に含まれている可視光線を抽出して肌に照射すると、細胞内マトリックスを破壊し、コラーゲンを減少させると共に、IL1b、TNFα、IL6、IL8などの炎症性サイトカインが紫外線と同じように誘導され、新しいコラーゲン発現に関わるmRNAなどが皮下から減少するのです。

80分間太陽光に浴びる状態が続くと、紫外線は20J/cm2のエネルギーしかありませんが、可視光線は750J/cm2と、桁の違ったエネルギーを受けるのです。

当然、メラニンの発生も増加します。

衝撃的なことに、太陽光の可視光線から誘導される色素斑は、紫外線のUVA1から誘導されるものよりもより暗い色で、しかも沈着しやすいというのです。

特に肝斑の様な症例は、紫外線よりも可視光線の影響の方が強いかもしれないと結論していました。これは症例を見ていると思い当るところもありますね。

紫外線をカットするサンスクリーン剤を塗った方がいいとお勧めしてはいますが、外で長時間過ごす場合は、実際には紫外線ばかりではなくて、可視光線もカットする必要があるのですね。

今、クリニックFでは、院内処方のサンスクリーン(日焼け止め)を試作しているのですが、考えなければならない情報ですね。

また、レーザーについての講演も多くありました。

ハーバード大学医学部の光医学研究所、ロックス・アンダソン教授もここ数年の新しいレーザー機器の技術進化について講演をしていました。

講演は大きく分けて3つ。

一つ目は、フラクショナルレーザーを、皮下へのドラッグデリバリーに役立てるという話。昨年からこの種の演題は多いのです。

二つ目は、ウルセラに代表される、高集中型超音波システムによるリフティングについて。

この二つの演題は何度も耳にしているのですが、もうひとつ、三つ目に話した治療法がちょっと画期的でした。

今まで深い色素斑や、入れ墨などを消去する時には、Qスイッチレーザーを何度も照射する必要がありました。多い時には10回以上。

それは、一定以上のパワーで照射すると、照射直後にホワイトニングと呼ばれる皮膚が白く変わる時期があり、それを機転に照射をやめていたからなのです。

ホワイトニングは肌の中でメラニンが破壊された時に起こるショックウェーブの影響で、気泡が入り込んだものです。皮膚の色が白くなってしまうとレーザー光が散乱して、色素に反応しなくなるのですよね。

この反応が、後に反応後色素沈着症を引き起こすので、肝斑の様な炎症性の色素斑にレーザー治療してはいけないと言われていたのです。

実際に肝斑のレーザートーニングは、ホワイトニングをさせない弱いパワーで照射することがポイントになります。

実は、このホワイトニングは、照射すると20分位で消えてきます。

ホワイトニングが消えるまで待ち、その後に連続照射したらどのような結果になるのか?

ということを実験した先生がいたのです。

しかも同一日時照射で4回も。つまり20分間隔で、1時間かけて4回照射したということです。

これはコロンブスの卵の様な発想。

一部を普通の打ち方を、一部を連続照射をした症例写真が出て来ましたが、連続照射した部位は、たった一回の照射で真皮性色素斑が見事に消えているのです。

一目で見て、会場のすべての人が、あっ!と驚く症例写真でした。

パワーの設定なども書き残してきましたので、アジアンスキンに可能かどうか見極めて、パラメーターを決定し、今後、クリニックFの患者さんにもご紹介していこうと思います。

ここ数年のフラクショナルレーザー治療器の開発で、ニキビ痕などの患者さんに対しての治療は完成したというドクターが増えてきていますが、今後は治療時間の短縮なども考えなければなりませんね。

まだまだレーザー治療でやり残した研究は沢山ありますね。

 


肝斑治療 レーザートーニングのC6 祝20周年

再び、アメリカ・ニューオーリンズで開催されたAAD全米皮膚科学会の話題に戻ります。

さて、ここ数年、肝斑治療のレーザートーニングとして一気に知名度が上がったメドライトC6。

米国の学会でも最近は取り上げられるようになりましたが、肝斑という特徴あるシミに対してここまで強い興味を示すのは、アジアンスキンを持つ人がほとんどです。

肝斑治療といえば、レーザートーニングが常識になりつつある現在ですが、僕がレーザー治療に興味を持った約10年前には、

「肝斑にはレーザー治療をしてはいけない」

というのが常識。教科書にも載っているくらいでした。

そんな中で、なぜ僕がレーザーによる肝斑治療を始めたかと言えば、2004年頃使用していたルートロニック社(旧マックスエンジニアリング社)のローフルレンスQスイッチヤグレーザーがきっかけです。

毛穴縮小を目的にマックスピールの施術をした患者さんの肝斑が、施術を重ねる毎に薄くなっていったのです。

そこで、「Qスイッチヤグレーザーは肝斑治療に効果があるのではないか?」

という推測の元、比較研究を始めたのです。

その時行った肝斑治療の演題は、2005年3月にアメリカ フロリダ州オーランドで開催された米国レーザー医学会で発表しましたので、僕は

最も早く、「レーザーによるアジアンスキンの肝斑治療」についての演題を世界の学会に提出した医師

ということになるのです。

この演題と論文は、ルートロニック社のマーケティングツールとして使われたこともあり、ヨーロッパやアジアに「フジモトプロトコール」という名前で広まりました。

思えば、このレーザーを使用した肝斑治療によって、その後僕は海外の学会で多く声をかけていただくようになりました。また、医師としてこれから歩んでいくテーマのひとつを、レーザーにこだわってみようか・・・という考えが、僕自身の中で生まれました。

僕にとって、ひとつの分岐点となったのです。

現在国内では、Qスイッチヤグレーザー機器のトレンドが、マックス社スペクトラVRM(マックスピール)からホヤコンバイオ社C6(レーザートーニング)に移りましたので、この機器が肝斑治療に主に使われています。

クリニックFでも2008年12月からメドライトC6を導入し、肝斑治療に役立てています。

2009年には、この機種を販売するホヤコンバイオ社の本社にも見学に行きましたよね。

この会社。今年で設立20年目なのだそうです。お祝いをしていました。

そしてこちらが、日本未導入のC6の上位機種RevLiteです。

通常のQスイッチヤグレーザーにPhotoAcoustic Technology Pulse(PTP)と呼ばれる新機能が付いているのです。

個人的にはこれが欲しいんですけどね。

個人輸入できないか思案中です(笑)。


ピアニストの内田光子さんがグラミー賞

診療の合間にWEBを見ていたら、ピアニストの内田光子さんとB’zの松本孝弘さんがグラミー賞を受賞したというニュースが。

世界の音楽市場に評価された証である賞はいくつもありますが、それにしても世界最高の音楽の祭典であるグラミー賞を日本人が受賞するなんてやっぱり嬉しいですよね。

しかも内田光子さんのピアノは、3ヵ月前にオランダ・アムステルダムのコンセルトヘボウで、実際に演奏を聴いたばかりなのです。

超技巧派といった演奏ではなかったのですが、曲に対する理解深く、芸術性の高い演奏をする人で、なんというか演奏が胸を打つんですよね。

さすがにヨーロッパを中心に活躍する演奏家だなあと、深く感動した覚えがあります。その感動の記憶が今日のグラミー賞で、また鮮やかに蘇ってきました(笑)。

内田さんはアメリカ5大管弦楽団(Big Five)の一つに数えられるクリーヴランド管弦楽団(オハイオ州)とのカップリングで、モーツァルトのピアノ協奏曲、特に23番と24番の演奏が高く評価されたのだそうです。

このCDです。

モーツァルトのピアノ協奏曲は全部で27曲あるのですが、クラシック音楽を聴くことをこれから趣味にしたいと思っている人ならば、それこそベートーヴェンの交響曲全集の次ぐらいに購入したほうがいい全集です(笑)。

ちなみにアメリカの交響楽団、Big Fiveの残り4楽団とは、

ニューヨークフィルハーモニック

シカゴ交響楽団

ボストン交響楽団

フィラデルフィア管弦楽団

なのですが、そういえば僕はクリーヴランドだけ生演奏を聴いたことがありません。

次に機会が会ったらぜひ聴いてみたいと思います。

 


キュテラ社久しぶりの新機種デビュー

おはようございます。今日も寒そうですね。

先週アメリカ・ニューオーリンズから東京に戻ってきた僕ですが、次の海外出張は今のところ3月下旬の予定。その前に来週ひとつ国内出張が入り、火曜日と水曜日は休診日とさせていただくことになりそうです。

今週は木曜日と日曜日以外クリニックも開いていますし、僕も診療をしていますので、お時間ありそうな方はお越しくださいね。

では、再び先週出席してきたAAD全米皮膚科学会の話題に戻ります。

今日は、カルフォルニアのキュテラ社について。

クリニックFでもライムライト、タイタン、パール、ジェネシスなど人気の機種が沢山ありますが、今回久しぶりにキュテラ社が新機種をデビューさせました。

それも、正統派のレーザー機器。

写真左手にある「CUTERA」の文字が見えますか?

ブースも大きかったです。

デビューした機種の一つは、1064nmロングパルスレーザーであるジェネシスの進化版です。

こちらは非接触型の皮膚温センサーが新規に内蔵されるようになったので、熱傷のリスクが格段に下がったと言えますね。

クリニックFでもレーザー照射の正確さを増すために、皮膚温度センサーを使っていますが、この皮膚温センサーを内蔵した機種がキュテラからデビューする、というのは好印象を持ちました。

さらに、こちらは532nmのKTP波長でも、ジェネシスのように連続照射ができる新機器です。

クリスタルガラスによる接触型クーリングシステムも搭載していますので、シミばかりではなく、血管病変についての治療の幅が広がるでしょうね。

これらも実際に使って、効果を見てみたいところです。

もう少し詳しく説明を聞きたかったのですが、聞きたい講演が沢山あって、この日は会場を後にしてしまいました。

 


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