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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

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ASLMS米国レーザー医学会 2011⑥ 静脈を映し出す興味深い機器

今回の学会会場では、美容レーザー機器についての新しい発表はなかったのですが、レーザー/光機器を使用したいくつか興味深い機器は発表されていました。

一つはこの機器。

緑色の光が僕の手にあたっているのですが、ここで何が起こっているかわかりますか?

これ、光が照射されている部位で、僕の静脈の走行が見えているのです。

理論を詳しくは教えてもらえなかったのですが、ヘモグロビンに集光させているのでしょう。

もともとは静脈の硬化療法の手術時に使用する機器のようで、紹介されている動画で、下枝静脈瘤がきれいに治療されていくのが目に見えてわかり、これはおもしろいな、と、そしてこれを使用することで可能性が広がるものがいくつか思い浮かびました。

また、医療従事者なら経験があると思いますが、患者さん中には、本当に血管が見えにくい人がいます。特に出血や脱水がひどい場合、救命救急の場では、輸血のラインが早くとれるかどうかは一刻を争います。

僕も研修医の時に、神奈川こども医療センターという小児専門病院で研修を受けたことがあるのですが、あのとき新生児の血管をとるのが難しかったことを思い出しました。新生児の血管って、皮膚からはほとんど見えないですからね。

開発が進み、懐中電灯のような、もう少し小さな機械になって、血管の場所を素早く同定できる様になると、小児や救急の場でも使用できそうですよね。

こちらは赤色LEDを使って、頭皮の血流を上げ、増毛効果を期待する機器です。

特に赤色光によって、皮下の細胞が活性化する研究は盛んに行われています。増毛にどこまで効果があるかは、正直なところ、まだ世界的に信頼のおける医学雑誌では研究結果が出ていませんが、まだまだ研究の価値があると思いますよ。

毎年、何十台と新たな機器が発売されますが、思えば、毎年この学会では発売会社の担当や開発者に意見を聞き、自分の医学知識に照らし合わせて果たして効果があるのか考えるということを、ここ何年もやっています。

最終的には、「自分のクリニックの患者さんのために是非購入したい!」と思うような機器は、年に一台あるかどうか?

という感じですよね。

以前訪れた、NYの一流クリニックで導入されていたレーザー機器がクリニックFで導入した機種とほとんど一緒だったと、ブログで書いたことがありますが、どのレーザー機器を選択するかということは、こうしたレーザークリニックのコンセプトを作るうえで、最も大切なことかもしれません。

 


痛みとトラウマのメカニズムの類似性、癒すタイミングの違い

本日木曜日はクリニックFの休診日です。

通常の木曜日は、僕は工学部大学院でレーザーの研究をする日にしているのですが、震災後は、普段診療を行う「レーザー治療」のほかに、日本ペインクリニック学会認定医としての僕のもう1つの専門分野である「痛みの治療」で御相談を受けたり、診療に借り出されることが増えています。

日々余震と原発の存在を感じながら先が見えないことによる様々なプレッシャー、不安、恐怖、強烈なストレスなどなど。

そうしたものと戦っていると、心や身体にいくつもの不具合を感じるようになりますよね。

ぐっすりと眠れない毎日が続き、リラックスできるはずの家の中でさえ、緊張感を感じながら避難道具を脇目にTVやインターネットをついつい見てしまう人もいることでしょう。

心理的ストレスを長期間受け続けると、ストレスに対抗するため、副腎皮質よりコルチゾールが分泌されます。さらにストレス状態は持続的な交感神経優位状態になりますので、心身のバランスが崩れないわけがありません。

闘争モードの交感神経が優位になっていると、細動脈も収縮し、末端組織に血流が行きにくくなりますので、頭痛を始め、関節の痛みや腰、首などの痛み、腹痛などが引き起こされることもあります。

こんな際には、クリニックFでも行っていますが、「痛みの悪循環」を断ち切るペインブロック注射が非常に有効な場合があります。

しかるべき関連医療機関に紹介状を書く場合もあります。

また、最近似たような御質問を何人かから受けました。

「先生は、痛みのメカニズムに関して本を書いていますが、トラウマのメカニズムと痛みのメカニズムは一緒なんですか?」

この御質問についてお答えしますね。

まず、トラウマとPTSDの違いが分からないと言われる方がいますが、「PTSD」とは Post Traumatic Stress Disorder(ポスト・トラウマティック・ストレス・ディスオーダー=心的外傷後ストレス障害)の略です。

「PTSD」の方が直後に引き起こされる生体ストレス反応までを包括した表現なのですが、現在使われている「心的外傷・トラウマ」の意味においては、基本的には同じものと考えてよいです。

確か、以前のブログにも書いたことがあるのですが、まずそもそも「痛み」とは何か、ということをクリアにしていきましょう。

世界疼痛学会(IASP)で決定された、「痛みの定義」という ものがあります。

それによると

「「痛み」とは、実質的、または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはそのような経験から表現される不快な感覚、または情動経験をいう。」 と定義されています。

「情動経験」・・・日常生活でなかなか聞きなれない言葉ですが、“情動”とは短時間で強く作用する脳とホルモンや免疫系、生体物質における興奮状態としての「生理反応」であり、わかりやすく定義すると「感情の動き」ということになります。

つまり、痛みとは「感覚」であると同時に、それに伴う「感情の動き」でもある、ということなのです。

また痛みの知覚が、脳の中では「視床」と呼ばれる部位で感知されることが多いのはご存知の方もいるとおもいます。

しかしながら、

この「痛みによって引き起こされる情動反応」

さらには

「痛み刺激の予知と回避についての学習」

といった、感知された痛みに対するより高次元な脳反応には、大脳辺縁系の一部の「前部帯状回」という部位が関わっています。

心的ストレスは、「心が痛い」といった表現をしますよね。

その言葉通り、心的ストレスを受けた場合、fMRI (functional Magnetic Resonance Imaging=機能的磁気共鳴画像)を利用して、脳のどの部位が活動しているのかを機能分析すると、この「前部帯状回」が痛み刺激を受けた場合と同じように反応することが分かっています。

「トラウマ」と「痛み」によって引き起こされる情動、つまり脳における反応メカニズムはほぼ一緒なのです。

これはむしろ、人間の進化の過程で、生体にとって最も脅威となる「痛み」を感じるために発達した「痛みの脳回路」が、同じように社会生活の中で最も脅威になる「心的ストレスのための脳反応回路」に、「転用」されたと考えた方が良いのでしょうね。

人類が社会生活を初めて早4000年の歴史があります。進化の過程による対応策の1つだったのでしょう。こう考えると不思議ですね。

ただし、今回の震災を考えた場合、それによって受けた心の痛みとからだの痛みとでは、その癒すべきタイミングは、多少異なるかもしれない、というのが僕の見解です。

心も体も、痛みをメカニズム的に癒し、傷を再生させるためには、自律神経を整えることがどうしても必要です。

闘争と逃走の神経=交感神経は、いついかなるときに震災が起きても逃げられるよう日々準備を整えておかなければならない昨今のために、現在日本に住むどんな人の体の中でも日夜フル稼働していることでしょう。

しかしながら、Relax & Digestの副交感神経を十分に作動させ優位にしない限り、傷はなかなか癒えてはくれません。

身体的な傷や痛みは、自律神経の状態に関わらず、西洋医学的な治療薬でもって早期解決する事が日常生活を送る上でも、からだの機能的にも求められる場合があります。

けれど、災害によって心に出来てしまったトラウマのケアをしていくときには、こうした社会状況も考えながらのケアが求められると僕自身は思うのです。類似した状況が続き、交感神経が優位であることを刻々と求められる状況では、痛みを根本的に癒すことは難しい。

つまり、ある程度余震や原発状況が落ち着き、日々の生活への不安や恐怖が遠のいてから・・・せめて枕元に避難道具を置かないと落ち着かない夜が去ってからの方が、有効的な治療ができると考えています。


キュテラ社 Scott Davenport工学博士

米国キュテラ社も血管系疾患を対象とした532nmの波長のレーザー機器「エクセルV」をデビューさせました。

0406アメリカ キュテラ社 ExcelV開発者Dr.Scott Davenport(右)

友人でもあり、エクセルVの開発者Scott Davenport工学博士(右)にもいろいろと質問しました。

血管系に強い532nmの波長で、ここまで細かい設定が可能な機種は現行ではありません。

新しい機種なので、アジア人に対するパラメーターの設定には時間がかかると思いますが、興味深いですね。

クリニックFでも、今年は赤系統の疾患に効果のある「MaxG」か「エクセルV」のどちらかを導入したいと思っています。どちらにするかはもう少し考慮してみますね


ASLMS米国レーザー医学会 2011⑤ スカー(ニキビ跡など)に対する注目演題

数日前のブログにも報告した通り、ニキビ跡などのスカー治療に対する演題は、ソルタメディカル社のフラクセル3DUALの演題が圧倒的に多く、この機種の優位性は変わらない様に思いました。

ちなみにこちらは僕の今年の発表演題です。

フラクセル3DUALを利用した、ニキビ跡と肝斑治療についてです。

フラクショナルレーザーは

『ヒーティングによる細胞活性化』

『ネクローシスによる細胞入れ替え』

『アブレーションによる細胞蒸散』

の3つの生体反応のバランスが大事で、機器の持つ波長によってどれが長けているかが違います。

ちなみに、光治療は『ヒーティング』

フラクセル2は『ネクローシス』

CO2フラクショナルは『アブレーション』を

おこすことが主な作用機序です。

フラクセル3 DUALは特に

1550nmエルビウムレーザーで『ネクローシス』

1927nmツリウムレーザーで『アブレーション』

を行うことで治療をするのですが、

やはりエルビウムドープと、1927nmのツリウムドープの二つの波長を独立して利用できるのは、メリットがありますよね。

CO2フラクショナルレーザー機器は、ここ数年、あまりに数が多くデビューしたため、演題は逆に減ってきました。

ただし、機種としては注目すべき第二世代の機種が出てきています。

シネロン/キャンデラ社のCO2REや

DEKA社のSmartXIDE2

この辺りはフラクショナルCO2レーザーとしては注目機種ですね。

そして、米国FDAの認可が下りるのを待つばかりの「イントラセル」

のブースもありました。

会場で目立っていたのは、スタッフ全員が西部劇のような帽子をかぶって、テキサス風だったサイトン社。

いい写真を撮ってきたつもりが、ピンボケだったのです(涙)。

皆この絵のような服装だったので、インパクトがありましたよ。

サイトン社のフラッグシップの機種であるジュール。

こちらのフラクショナルレーザーも、技術力開発力を共に持つサイトン社ですので、2970nmのエルビウム以後の波長デビューが待たれますね。


ASLMS米国レーザー医学会 2011④ 血管系病変(ヘモグロビンによる赤)に対する注目機種

今年のASLMSの演題は、例年よりも数が少なかったのですが、

「血管系病変(ヘモグロビンによる赤)に対するもの」

「スカー(ニキビ跡など)に対するもの」

「痩身に対するもの」

の三つの分野で進歩があったように思います。

まず血管系病変に対してですが、

先月の米国皮膚科学会(AAD)のブログでもふれましたが、パロマ社の「MaxG」の演題が多くありました。

MaxGは、レーザーではなくて光治療器ですが、ヘモグロビンに集光しやすいようにパワーバンドが調節されているのです。

ここ数年、ヘモグロビン系の治療ではダイレーザーに代わる新たな機種が模索されていますが、米国レーザー会の重鎮の一人であるエミル・タンゲッティ 医師も「MaxG」を強く推薦していました。

エミル・タンゲッティ医師は僕が米国皮膚科学会(AAD)に入会するときに推薦状を書いてくれた一人です。発表は信頼できますね。

この機種はクリニックFでもテスト済みです。非常に好印象。

もう一つ、こちらも米国皮膚科学会(AAD)ブログでふれましたが、米国キュテラ社も血管系疾患を対象とした532nmの波長のレーザー機器「エクセルV」をデビューさせました。

友人でもあり、エクセルVの開発者Scott Davenport工学博士(右)にもいろいろと質問しました。

血管系に強い532nmの波長で、ここまで細かい設定が可能な機種は現行ではありません。

新しい機種なので、アジア人に対するパラメーターの設定には時間がかかると思いますが、興味深いですね。

クリニックFでも、今年は赤系統の疾患に効果のある「MaxG」か「エクセルV」のどちらかを導入したいと思っています。どちらにするかはもう少し考慮してみますね。

スカーと痩身については次のブログで。


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