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ニキビ跡治療 クリニックFメソッド 近赤外線の肌への功罪

クリニックFのニキビ跡治療は、過去の治療経験より、3段階の行程を経て行います。

1)皮下のコラーゲンとエラスチンを増生させ、真皮のハリを持たせる。皮膚の健康状態を正常に戻し、耐性を作り、その後のレーザー治療が効果を出せる皮膚を作る。

2)その上で適切なパワー設定・照射方法を算定したフラクショナルレーザーを用いて、肌の上に出来てしまった凹凸を整え平らにする。

3)レーザーアシストによるドラッグデリバリーで肌の中に薬剤を導入し、仕上げを行う。これにより皮膚に適切な保水能力やバリア機能が戻り、ニキビなどの皮膚トラブルが将来的にできにくい皮膚を作る。

この3ステップを僕と一緒に真面目に取り組んでくださった患者さんの皮膚は、男性であっても女性であっても、お若い方であってもある程度年齢を経た方であっても、見違えるようになります。

皆さん、本当に喜んでくださいます。

特に1)に当たる施術を、クリニックFでは、「肌の基礎工事」と呼んでおり、その後の治療結果に大きな影響を及ぼします。

 

今日のブログでは1)について少し触れたいと思います。

近赤外線領域のレーザーや光治療機器を、皮膚のなるべく広い範囲に照射して、コラーゲンとエラスチンを増加させることで、肌の予備能力を上げるのですが、これには多くの根拠論文があります。

近赤外線を特殊な条件で照射することで、真皮を加熱、皮膚を即時に引き締め、コラーゲンの再合成を高めることが可能になったのです。

○Goldberg DJ.: New collagen formation after dermal remodeling with an intense pulsed light source, J Cutan Laser Ther, 2: 59–61, 2000.

○Ross EV, Sajben FP, Hsia J.: Non-ablative skin remodeling: selective dermal heating with a mid-infrared laser and contact cooling combination, Lasers Surg Med, 26: 186–195, 2000.

○Bitter PH. Noninvasive rejuvenation of photodamaged skin using serial, full-face intense pulsed light treatments, Dermatol Surg, 26 :835–843, 2000.

○Zelickson B, Ross V, Kist D, et al.: Ultrastructural effects of an
infrared handpiece on forehead and abdominal skin, Dermatol Surg, 32:
897–901, 2006.

○Chan HH, Yu CS, Shek S, et al.: A prospective, split face,
single-blinded study looking at the use of an infrared device with
contact cooling in the treatment of skin laxity in Asians, Lasers Surg
Med, 40: 146-152, 2008.

○Tanaka Y, Matsuo K, Yuzuriha S.: Long-term evaluation of collagen and elastin following infrared (1100 to 1800 nm) irradiation, J Drugs in Dermatol, 8: 708-712, 2009

○Tanaka Y, Matsuo K, Yuzuriha S, et al.: Differential long-term stimulation of type I versus type III collagen after infrared irradiation, Dermatol Surg, 35: 1099-1104, 2009.

ほんの数年前まで、太陽光に対して肌を守るためには、紫外線対策のみがなされてきました。

SPFやPAなどの紫外線を遮断するための指標が生まれたのは、紫外線によって皮下の細胞のDNAを守るためにメラニンが増えるので、美的にも注目された背景があります。

しかしながら、太陽光に含まれる紫外線は、太陽光の熱エネルギーのわずか10%以下。

それに対して、紫外線以外の光線の、太陽光の熱エネルギーに占める比率は、可視光線が約40%、近赤外線が約50%もあります。

近赤外線は、肌のヘモグロビンや水に吸収されるため、血管が拡張し、日光過敏症などの症状を引き起こしますが、近赤外線の肌への効能がわかってきたのは、ここ数年のことで、こちらの日本語の専門資料はほとんどない状況にあります。

皮下に特殊な条件下で強力な近赤外線を照射すると、反応性にコラーゲンやエラスチンが増加し、若返るのは、いわば生体の近赤外線に対する防御反応の一つなのです。


正しいレーザー治療とは? スマイルリフト スマイルアイリフト FOTONA社

クリニックFにFOTONA社のスマイルリフトが導入されました。

タッチパネルは使い勝手が良いですね。

こちらは口腔内からロングパルスのエルビウムヤグレーザーを照射して、頬を引き締めるスマイルリフト

さらに、下眼瞼の結膜下からレーザーを照射して、目の下のゆるみを引き締めるスマイルリフトアイの二つのレーザー照射が可能です。

どちらも肌の表面からの照射ではないので、ダウンタイムが全くないところがよいですよね。

クリニックFでパラメーターを検討したうえで、患者さんへのデビューは3月中ごろからになると思います。

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医師免許を取得して20年が経過して、西洋医学にどっぷりとつかってきましたが、いつも「正しい治療とは何か?」と考えさせられます。

僕はレーザー関連する分野として、

工学(物理学)

医学(生物学)

そして

薬学(化学)

の3大自然科学の分野を修めるために、勉強と研究を続けていると、常日頃このブログでも書いてきました。

三つの自然科学の学問を学ぶと興味深いのは
物理学であれば、17世紀にほぼ完成した学問であり、すべてを論理で示すことができますので、絶対的な真理であると証明する方法が数多く存在します。

一報の画期的な科学論文が出ると、その論文の数式を理解することができる知識人には、その真理が正しいものとすぐにわかります。

反対に、生物学の一端である医学生理学には、絶対的に正しいという真理がありません。

つまり、われわれ医師にとっては、「正しい治療」をしている保証は、実は存在しないのです。

一般的に信じられてきた治療が、まったく覆ってしまうこともいくつか。

僕は20年前に研修医でしたが、その時は毎日のガーゼ交換と消毒で一日が始まりました。

湿潤療法が一般化されるまで、傷がいえるまで雑菌を毎日消毒して殺したほうがよいと考えられていました。

傷口から出る浸出液が傷治療を促進しているという発想もなかったのです。

ここ数年にわたる、バターとマーガリンの論争もそう。

刷り込まれた経験とは怖いもので、頭で理解していても、なかなかそれまでの常識から逃れられないのです。

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現在行われている西洋医学の治療も、本当に正しいのかどうか?

昨日のブログにも少し書きましたが、

①医師の個人的経験:
「私の経験では、この波長のレーザー治療は肝斑の色彩を減らすようである。同僚もそう言っている」

または

②権威者による推奨:「この治療法は当大学で100例以上の良好な成績を収めており、関連病院にも勧めている」

など、いわば個人的な治療経験を根拠にして、一世代前までは西洋医学の治療が行われてきたのです。

そんな中、僕が治療の根拠のよりどころとして考えているものは、英文による医学論文です。

こちらはいわば過去の治療経験のつみあがった、共有知。

インターネット時代には、お金さえ払えばすべての英文医学論文をクリニックで読むことができますので、本当に良い時代になりました。

そして、情報過多の時代、もっと重要なものは、多くの情報源からの優れた情報の選択。

これには自分の論文や研究に対する審美眼を磨くという、日ごろからの勉強と知識の習得も必要です。

「常に最新の情報を得て自分の価値基準で治療法を取捨選択し、患者さんにとって少しでもメリットがあると考えられる治療を、患者さんごとに選択する。」

ということが、医師としての心構えであり、医師が常に勉強を続けていかなければならない理由なのだと思いますよ。


根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)

根拠のある正しい治療のために僕が指針としていることについて、ちょっと前のブログを久しぶりに読み返してみました。

EBM:evidence-based medicineのレーザー医療への応用 なぜ最新医学論文を読むことが大切か?

よろしければ、ご一読ください。

※※※

レーザー皮膚治療は、西洋医学の中でも比較的新しい分野です。

レーザーでシミやあざを取っていた「点の治療」をしていた時代が20世紀。

その後、肌質を若々しくしたり、肌の透明感を上げたりと、「面の治療」をするための機器が21世紀になって数多く開発されました。

しかしながら、この10年で新しく開発された21世紀の機器に関しては、厚生労働省の認可が遅いために日本国内の大学病院などで最新の機器を使用することができません。

ドラッグラグやデバイスラグの問題は、以前もこのブログで伝えていますよね。

日本の場合、通常最新機器はまず大学病院に導入されて医師のトレーニングが行われます。

すなわち、レーザー治療はこの日本において医療分野の中で唯一大学病院でのトレーニングが難しい分野である、ということになります。

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一般的な診療を行う上で

「根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)」

という考え方があるのをご存知でしょうか?

「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」

“conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence”

医療のあり方をさす考え方です。

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特に新しい西洋医学を治療に応用するにあたり、人体の生理反応や治療の効果や副作用には必ずしも再現性が認められず、同じ治療でも患者によって結果は異なることは常に指摘されてきました。

多くの治療法の中から、目の前の患者さんにとって最も最良の結果を生むためには医学的な根拠が必要です。

こうした根拠には、従来「生理的原則や知識」が重視されてきました。

さらに、それを補うものとして「医師の個人的な経験」や、「権威者による推奨」が治療法の選択根拠として用いられてきたのです。

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仮に、低出力レーザーを使用した肝斑治療を挙げて考えてみましょう。

生理学的原則や知識として

「表皮下部に存在する肝斑を取り去るためには、特定の波長の低出力レーザーにより、表皮下部のメラニンを破壊する治療が有効であろう。」

として治療法が考えられます。

この事実を証明するために

①医師の個人的経験:

「私の経験では、この波長のレーザー治療は肝斑の色彩を減らすようである。同僚もそう言っている」

または

②権威者による推奨:

「この治療法は当大学で100例以上の良好な成績を収めており、関連病院にも勧めている」

などを根拠にして、一世代前までは西洋医学の治療が行われてきたのです。

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しかしながら、この数十年で、医療や治療を行うにあたり、主に書籍・学会誌・論文発表を根拠にして、客観的な経験知を共有することがいかに大切なのかが、次第にわかってきました。

1980年代以降は米国国立医学図書館による「MEDLINE」など医学情報の電子デー タベース化が進み、また疫学・統計手法の進歩によりできるだけバイアスを排した研究デザインが開発されるようになりました。

そうしたうちに、治療法などの選択となる根拠は

「正しい方法論に基づいた観察や実験に求めるべきである」

という主張が、カナダのマクマスター大学でDavid Sackettらにより提唱されました。

1990年にGordon GuyattによりEBM (Evidence-based Medicine) と名づけられました。

EBMという言葉の文献への初出は1992年ですので、もう20年以上前ということになりますね。

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こうした考えで、もしもレーザー治療を患者さんに、根拠に基づいた医療つまりEBMを用いて説明する場合。

「医学誌のレーザー治療ジャーナルの2004年10月刊行の論文によれば肝斑の治療方法における、治療法A(高出力レーザー治療と薬剤補充療法)の250件と治療法B(低出力レーザー治療のみ)の250件の比較調査を行った。

治療法Bの方が肝斑の逓減率は15%ほど低い結果が得られた。

ただし同雑誌2008年の4月の論文における追跡調査では50歳以上の患者の場合は逆に治療法Aの方が5%ほど完治率は低いとの結果である。

この患者は高齢であるので治療率の観点からは治療法Aが最適な選択となりうる。

ただし治療法Aは薬剤補充療法であり、これには他の副作用が報告されている。

よって治療法AおよびBの治療率およびもろもろの副作用の可能性を患者に掲示した。

最終的に治療法を選択するのは患者である。」

ということになると思います。

クリニックFにおける僕の立場は、実際の治療を行うエンジニア兼ドクターであると同時に、レーザー治療のコンシェルジュでもあります。

患者さんの肌を診断し、問題を解決するために、

僕は日々

「最新英語の論文を読み」

「レーザー機器を購入し」

「機器のメンテナンスをする」

こうしたことでエビデンスのある治療を選択していただけるようにしているのですよね。


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