今日は三連休ですが、僕はクリニックFの外来です。
朝の大和。
船頭と船尾の木材を組み合わせ、ナイフとヤスリで削り、形を作っています。
今日は三連休ですが、僕はクリニックFの外来です。
朝の大和。
船頭と船尾の木材を組み合わせ、ナイフとヤスリで削り、形を作っています。
3年間研究在籍していた慶応義塾大学大学院薬学系研究科での研究を終え、
医学博士(東京大学2004年)
工学博士(東海大学2013年) に次ぐ
僕の3つ目の博士号である 薬学博士
博士(薬科学) (慶應義塾大学2017年)を受理することができました。
ここに至るまで、思わず涙が出るほどつらい経験もしました。
その分本当に嬉しいです。様々な局面で支えてくださった方々のおかげです。
ありがとうございました。
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僕は小学生の頃から理科が大好きな子供でした。
父親は文系の研究者でしたが、理系の研究者という職種が存在すると気づいたのは、小学3年生の頃だったような気がします。
当時、千葉の放射線医学総合研究所(放医研)に勤めていた理学博士の叔父の研究室に遊びに行かせてもらって感激したのです。
思えば、将来博士号を取るという事を明確に意識したのがこの時でした。
物理 化学 生物 は理系の主要な三部門です。
新たな理論を立証する手法は、それぞれの学問で異なります。
物理であれば数式で
化学であれば化学式で
生物であれば図表で
証明することが必要になりますが、
レーザーを軸にし、工学(物理学) 薬学(化学) 医学(生物学) の三分野の博士号を取得した医師は世界にも他にいません。
人生においても、研究においても、経営においても、他人とはひと味違った、またはちょっと角度の異なるオリジナルなものを作り上げたいというのが僕の常なる目標でありモチベーションですので、転んでしまった時もとりあえず立ち上がりひたすら信じる道を進んできたな、と思います。
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フラクショナルレーザー機器を用いたドラッグデリバリーの論文は英文で2報書くことができました。
一本目の論文は、レーザー医学の世界のトップジャーナル。Lasers in Surgery and Medicine誌に載せることができました。
生体に薬を入れる手法は大きく分けて三つあります。
経口 経静脈 経皮 (経肺というルートも考えられます)
ですが、この論文は、経皮の薬剤吸収を促進する方法です。
今回の僕の論文は、リポソームを薬剤トランクのように用いて、フラクショナルレーザーをアシスト照射することで薬剤の皮下への導入を増やそうというもの。
それまで、経皮の薬剤吸収の促進と制御方法には上記二つの手法がありました。
こちらのフラクショナルレーザー機器を物理的な手法とすれば、以下のようにより有利に薬剤をコントロールして皮下に導入できることとなります。
皮下に導入するフラクショナルレーザーとしてはCO2の波長を選択しました。
この波長は照射後の皮膚が乾燥し、薬剤が浸潤しやすい状況を作るからです。
波長を決定して、残りの3要素のパラメーター
パワー 照射密度 照射時間をコントロールして実験を行いました。
リポソームに内封させる薬剤としては、
低分子モデル 分子量376 5CF
低分子タンパクモデル 分子量6000 インシュリン
ワクチンモデル 分子量 45000 OVAアルブミン
と、大きさの違うモデル薬剤を用いて、それぞれ実験を行いました。
どのモデル薬剤を用いても、パワー依存性、照射密度依存性、パルス幅依存性に薬剤導入が増すことが確認できました。
こうしたフラクショナルレーザーを用いた薬剤導入で最もメリットがあると思われるのは
〇針を使って日々インシュリンを導入しなければならない糖尿病患者
〇予防接種のためにワクチンを注射する小児
〇組織内圧が高く、そもそも注射が難しいケロイド患者
などが想定されます。
さらに、フラクショナルレーザーで開ける穴を調節することで、さらに大きな、例えばメラノサイトのような細胞を導入できるようになります。こちらはドラッグではなく、セル(細胞)デリバリーとしての応用です。
白斑や薄毛の治療などにも大きな福音となるでしょう。
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二つ目の論文は、リポソームに用いるペプチドを、温度応答性に構造変化する変形性のペプチド組み込むことで、崩壊のタイミングをレーザーでコントロールするというもの。薬学のジャーナルに載せることができました。
皮下に温度応答性のリポソームをしばらく沈降させて、必要な時間にレーザーを照射して皮下温度を上昇させることで薬剤放出をさせることができるのです。
実際にクリニックFでは、フラクショナルレーザーを使用したのちにこうした効果的な薬剤を塗布することで、肌を入れ替える施術を行っています。
難治性のニキビ跡や、初老期の表皮の細かいシワなどの肌を、脱皮させ、生まれ変わらせることができますよ。
来月頭に米国はサンディエゴで開催される米国レーザー医学会(ASLMS)の演題ができました。
一つはキュテラ社トゥルスカ施術の顔面への応用で臨床ポスター発表。
もう一つは温度応答性のリポゾームを利用したレーザードラッグデリバリーの基礎実験の口頭発表。
こちらのPtは、5回の施術を行ったのち、顔面認証システムが反応しなくなり、写真を取り直したのだそうです。
首から頬にかけてのラインが明らかに変わりますね。
春爛漫。
クリニックFに桜の花が届きました。
見ての通りバラの色が表裏で違うのです。
美しいものを見ると癒されますね。