早いもので、もう9月になってしまいましたね。
今年は慣れない薬学の博士論文に取り組んでいて、英語漬けです。
こういった時、なぜか僕の場合は日本語の表現能力が落ちるんですよね。
特に最近はまとまった長さのブログがなかなか書けないのが悩みです。
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今日は時間ができましたので、僕が現在特に注目している「プラズマ」の医療応用について考えたいと思います。
いよいよ本格的にプラズマの医療応用研究がスタートします。
プラズマには、とても未来を感じていますので、楽しみです。
美容医療機器の中には、レーザーを中心として様々なエネルギーベースを利用した機器があります。
Enagy based Medical Device という言葉が海外では一般化しましたが、市場にあるものを考えても、かなりの機器が存在しています。:-
○レーザー
ピコ秒レーザー(ピコシュア ピコウェイ エンライトン)
Qスイッチ Nd:ヤグレーザー(メドライトC6 レブライト)
Qスイッチ ルビーレーザー
Qスイッチ アレキサンドライトレーザー(アコレード)
ロングパルス Nd:ヤグレーザー(ジェネシス フォトナ4D)
ロングパルス エルビウムヤグレーザー(スマイルリフト)
ダイオードレーザー
エキシマレーザー
CO2レーザー
○フラクショナルレーザー
halo ヘイロー(ハイブリッドフラクショナル エルビウムヤグ2970nm+ダイオード1470nm)
フラクセル3DUAL(ツリウムグラス1940nm+エルビウムグラス1550nm)
スターラックス1540XD
スマートサイドスクエア(RF+フラクショナルCO2 10600nm)
○光 IPL(インテンスト パルスライト)
主に色素用
M22
eplusSR
オーロラ
ライムライト
BBL
スターラックス
○光 NIR(近赤外線)
主にたるみ用
サブライム
タイタン
スキンタイト
○RF(ラジオ波 高周波)
サーマクール
エンディメッドプロ
インディバ
ヴァンキッシュ
トゥルースカルプ
○パルス磁場
ヴィーナスレガシー
ヴィーナスフリーズ
○超音波
エクシリス
○HIFU(ハイフ・高密度焦点式超音波)
ウルセラ
○LED
オムニラックス
○クライオ(氷結)
ゼルティック
○衝撃波
セルトーン
などなど
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レーザーは「クロモフォア(発色団)」に反応するため、肌の色の濃い人や、色ぐすみがある方の皮下の治療は難しい側面があります。
RF(ラジオ波、高周波)はたるみ治療には効果的ですが、モノポーラやバイポーラ、マルチポーラなど、エネルギーを出力するジェネレーター先端の数によってエネルギーの伝わり方やその伝わる深さが異なります。
新たなエネルギーベースとしてここに加えておきたいのが、プラズマです。
プラズマは、気体 液体 固体 ではない第四の「物質の”相”」と言われるものです。
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“相”とは聞きなれない言葉かと思います。
「形態」という言葉に直すともう少しわかりやすいかもしれません。
水を例にとると大気圧下では、0度以下の状態で、固体=氷、常温では液体=水、100度を超えると気体=水蒸気、となり、数千度を超えるとプラズマ=電離ガスという状態になります。
プラズマ中では、イオン、電子、中性粒子、ラジカルなどがランダムに運動していう状態です。
レーザーと比べた場合のプラズマの特徴は、皮下にどんな物質があろうが一様にエネルギーを伝えることができることです。
これは、高エネルギーの小さな物質を、ピストルの弾のように皮下に打ち込んでいくことをイメージしていただければ良いと思います。
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クリニックFでは、ネオジェンスパという機器が現在活躍しています。
プラズマにはいくつかの特性があり、その性質が様々な分野で応用されています。
例えばプラズマのもつ反応性。
このラジカルなど反応性の高い粒子が生成される性質は、半導体プロセシング、空気清浄、脱臭などに利用されています。
また、気体に固有の波長の光を発する性質は、PDP、レーザー、微量元素分析、紫外線殺菌などに、摂氏10,000度の高温を容易に実現できる性質は廃棄物処理、核融合などに応用されます。
さらに近年「低温プラズマ」が開発されたため、2000年代後半以降、大気圧プラズマの研究が流行しています。
大気圧低温プラズマはほとんど室温のヘリウムプラズマです。
プラスチック、金属、半導体、繊維、紙、生体などあらゆる物質へのプラズマ照射が可能となるため、様々な物質の表面処理だけでなく、医療分野への応用「プラズマ医療(PLASMA MEDICINE)」も始まっています。
歯のホワイトニング、医療機器の滅菌、血液凝固、がん細胞のアポトーシス、植物の成長促進、そして細胞の活性化や創傷治療など美容医療への応用が十分に期待できる分野です。
クリニックFでは、プラズマの医療応用として、火傷治療の加速やケロイド治療などに使っています。
では、このプラズマ、美容目的に利用したとして、一体どのような効果があるのでしょうか?
一般的にプラズマの適応疾患は毛穴、キメ・くすみ(特に美白化)、小じわ(眼瞼内も可能)、にきび、にきび痕、傷跡・瘢痕などが挙げられます。
プラズマによる殺菌の研究は進んでおり、窒素ガスプラズマを水分を含んだ皮膚に照射するとアクネ桿菌や黄色ブドウ球菌、などを主体とする皮膚の常在菌の他、高耐性細菌を殺菌することがわかっています。
こうしたプラズマの抗生物質などとは違った形での殺菌への作用機序と創傷治癒の能力が、ニキビ治療の分野で期待されています。
また、殺菌親水性はくすみの解消や美肌にも効果的ですし、先ほど述べたようなクロモフォアに反応しない点、熱変性による小じわの改善、成長因子の産生や活性化による毛穴の改善など、様々な症状に対して全て同時進行の治療を1台で実現することが可能です。
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もう一つクリニック F が他のレーザーや光などのエネルギーべースと違う、プラズマに注目する理由があります。
プラズマには「プラズマ洗浄」という工学的な言葉もあるように、レーザーと違って皮膚表面の有機物(角栓、老廃物、脂質)を完全除去する効果があるのです。
科学的な説明としてはプラズマの不対電子が、表面付着物の基材との結合を切っているためで、これは、レーザー施術などの前処理にプラズマが利用できる可能性を示唆しています。
いうなれば「プラズマ・ピーリング」。
プラズマを照射すると皮膚の透過性が増し、治療中や後のドラッグ・デリバリーの効果が高まります。
これは 肝斑治療への併用も期待できるのではないかと注目しています。