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COLUMN

コラム「音楽は名医」
3. 痛みと上手に付き合う。慢性痛を音楽でスッキリ。

3. 痛みと上手に付き合う。
慢性痛を音楽でスッキリ。

専門的に言うと痛みにはたくさんの種類があります。しかしながら、これらを大きく分けると「急性痛」と「慢性痛」という2つの種類に分類することができます。

前回は、音楽が痛みをマスク(覆う)する仕組みについてお話しました。今回は痛みの種類や特徴を含め、どんな痛みに音楽を活用するのが良いかお話しします。

◆急性痛と慢性痛

急性痛とは、怪我や病気、接触など、痛みの発生した状況が分かりやすく原因のある痛みです。特に怪我や病気により発生した痛みは医療機関で痛みの原因を特定出来ますので、しかるべき治療を施せば改善、解消されるものがほとんどとなります。

ここでとても大切なことは痛みが発生した早い段階で必ず専門医の診療を仰ぐことです。急性痛は医療の領域になりますので、自己判断は禁物です。

一方慢性痛は、上記の急性痛が治まり、怪我や病気が寛解した後も残る痛みや、例えば片頭痛、肩こり、腰痛、生理痛、関節痛といった長期に渡って続く痛みや天候や気温によって左右される痛みなどを指します。

気が付けば痛いことが当たり前になっていたという方も多く、いつ頃始まった痛みなのか記憶が定かでない場合も多々あります。

こうした慢性痛ですが、いずれも急性痛と同様できればまず専門の医療機関で診断を仰ぐことをお勧めします。

今では慣れ親しんでしまったいつもの痛みに実は大病が隠されていた、何かのSOSだったということはよくあることです。

その上で重篤な病気が発見されず、医療機関で処方される薬や治療法ではなかなか改善を見られない場合、自律神経の乱れやホルモンの不活性を改善することは有効であることでしょう。そのために音楽を活用する、ということができるわけです。

◆痛みは記憶される

痛みには、実際痛んでいないのに痛い気がしてしまう、という類のものもあります。病気や怪我が治ったのに痛いという感覚だけが残ってしまうのです。これを「痛みの記憶」といいます。

痛みを経験すると脳はそれを学習し記憶します。通常であれば、痛みの体験だけが記憶され痛みそのものは記憶から消えてしまいます。

例えば、一度ハチに刺されれば脳は「ハチに刺されると痛い」という学習をそこでして以後ハチを避けて通るようになりますが、ハチに刺された痛みをいつまでも感じ続けることはありません。

しかし、何度も同じ痛みを長く体験し続けることで、神経に誤作動のようなことが起こり、痛みがないにも関わらず痛みを感じることがあります。慢性痛の中には、実際痛んでいるわけではなく、この痛みの記憶が原因のものも時にあります。

音楽はこうした痛みの記憶を解消することにも効果的です。音楽が脳に与える影響は大きく、繰り返し聴くことで意識を痛みから切り離し、実際にホルモンの活性による効果で痛みの記憶が薄らぐことを期待できます。

◆痛みは痛みを呼ぶ

痛みには、適切に対応しないと痛みが増すという仕組みがあります。これを“痛みの悪循環”といいます。痛みで交感神経が過剰に刺激されると、血管が収縮し筋肉は緊張して血行不良を起します。

血行不良は冷えや痺れなどを引き起こし、さらなる痛みの物質を発生させ脳にそれを知らせます。これでは痛みがひどくなるばかりです。

歯科医院を含めた医療機関に行きたがらない方や忙しくてなかなか時間が取れず自分のことをついつい後回しにしてしまう方もいますが、先にもお話ししたように痛みは身体からのSOSということを忘れないでほしいと思います。

音楽の効果は先に挙げたように、聴覚を通してホルモン活性を高めたり自律神経を整えることで痛みの記憶や痛みの悪循環から私達を遠ざけてくれることでありますが、それだけではもちろんありません。

痛みという自分以外の人にわかってもらえない果てしない孤独に、音楽はいつもそっと静かに寄り添ってくれます。

ぜひこれをきっかけに好きなクラシックの楽曲をひとつでもふたつでも多く見つけて頂けたら嬉しく思います。

音楽は名医であるだけでなく、生涯の親友でもあるのです。