コロナ禍で生活スタイルが変わり、時間はあるけどうまく眠れない、という人もまた増えているようですね。患者さんからもいくつか相談を受けています。
以前枕についての書籍を出した際こんなあとがきを書きました。
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僕は所謂‟ロングスリーパー”です。一日7時間は眠らないと体がもちません。短い睡眠時間では集中力や決断力が欠けるような感覚もあり、翌日良い仕事をするため必ず睡眠時間を確保しています。海外出張も多いですから、時差の調整も課題になります。そのため、寝具や寝間着などにもこだわりがあり、いかに良質の睡眠を確保するかについて日々考えています。
そんな長時間睡眠が必要な僕にとって、最もしんどかったのは研修医時代でした。寝る時間がないほど忙しく、どうしたら短い時間で深い睡眠をとれるかと常に試行錯誤していました。奮発してウォーターベッドを購入したこともあります。寝返りが打てず、腰も痛くなり、結局処分しました。あれは勿体なかったですね。
眠ることは、一日の終わりに誰もが与えらる、黄金の数時間です。
そして、ただ眠るだけでなく、数時間何も考えずぐっすり熟睡するというのは、最高の贅沢でもあることでしょう。
温かく穏やかな環境で、何にも身構えることなく、身体を横たえ手足を伸ばし、安心して眠ることができる。
例えば戦時中、あるいは現代の日本であっても様々な問題を抱えた環境では、望んでも決して得ることのできないものです。
平和で守られた、親密な場でしか甘受できない正に「ギフト」であると、僕は思うのです。
良い睡眠が与えられると、脳は喜び実に良い仕事をしてくれます。
精密なコンピューターとして前日の記憶を整理・リセットし、必要な記憶を定着させます。蓄えるべきものを蓄え、脚色すべきものを脚色するのです。
身体と心の疲れを精査し、調整を図ります。
循環を促し、明日への準備を整えます。
ホルモン活性は睡眠中にピークを迎え、若さとスタミナの貯金を着々と蓄えます。
睡眠をうまくコントロールすることができれば、人はいつまでも美しくいられるのです。
美しさとは、ではどういったものを指すでしょう?
造形としての美はもちろんあることでしょう。しかしながら、こうした美と若さに関わる現場に長年いると、それだけでなく、人としての美に思考が及ぶようになります。
慈愛の心をもち、まっすぐ立つことができ、しっかりと視線が定まり、穏やかで透明な空気を漂わせることができる。
皮膚や髪、指先に静かな力が漲り、動作や所作にキレと品があり、安定している。
混沌を感じさせず、思考がクリアであり、近くにいることで自然とこちらも居住まいを正すような、あるいはゆとりやリラックスを促すような、そんな存在感がある。
美しく、若々しい人。それはやはり年齢でも生まれ持ったDNAに依存するものでもなく、こうした要素により複合的に構成されるものであると思うのです。
そして、これらすべてに、良質の睡眠は欠かすことができません。
枕はそんな睡眠を日々守り、確実に向上させてくれます。
ぜひこの機会に御自身に合う枕はどういったものであるかを考えてみてください。
生涯を共にするたった一人の伴侶を見つけるのではなく、自分という妃を守る三人の騎士を選び見つけ出すような気持ちで、最高の枕を揃えてください。
睡眠という毎晩の夜間飛行があなたにとってより充実したものになるよう、心から祈っています。
2017年4月 アメリカ サンディエゴにて
医師 医学博士
藤本幸弘