innovation イノベーションとResearchリサーチの関係性について
最近経営学でよく耳にするイノベーションという言葉がありますが、深く意味を考えたことがありますか?
イノベーションは1911年に、オーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって、初めて定義された言葉です。
イノベーションとは、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義されています。
先週、知財の専門家である政策研究大学大学院大学教授の隅藏教授と話していた時に、
Science and Technology Policyを実現化するためには、二つのルートがある。
一つはアカデミックな「リサーチ」を続けることで、Academic Impactを得ること。
もう一つは企業による「イノベーション」を続けることで SocialもしくはEconomic Impactを得ること。
それぞれにパテントなどの知財が複雑に関わっている。
という事をズバリと指摘され、眼から鱗が落ちた気持ちがしました。
僕は、臨床家としては臨床技術をイノべーションすることに日々努力をしてきましたし、研究家としてはリサーチを続けることに努力してきました。
二つの努力は、スパイラルのように相互作用するものと思っていたのですが、明らかにゴールが違い、むしろ並走するものなのですよね。
巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論として、有名なものにイノベーションのジレンマ (The Innovator’s Dilemma)というものがあります。
これは、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンが、1997年に初めて提唱した理論です。
Wikiには、「大企業にとって新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、カニバリズムによって既存の事業を破壊する可能性がある。
また、既存の商品が優れた特色を持つがゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない。
大企業は、新興市場への参入が遅れる傾向にある。
その結果、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に、大きく後れを取ってしまうのである。」とあります。
イノベーションには、従来製品の改良を進める「持続的イノベーション」と、従来製品の価値を破壊して全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」があります。
大企業は、既に持続的イノベーションのプロセスで自社の事業を成り立たせているため、破壊的イノベーションを軽視するため、画期的な事業変革に舵を向けることができないという事ですよね。
僕も2000年に美容医療に関わることになり、4つのクリニックの設立経営を経験したのちに、2007年に自分の作りたかった専門性の高い、「肌質を改善するためにレーザー治療を利用する」クリニックを作ることになりました。
クリニックFを設立して10年間。
ひたすらコーポレートイノベーション(レーザー、光、RF、超音波、HIFU)とアカデミックリサーチ(医学、経営学、工学、薬学)に対する努力を続けてきたつもりですが、個人的には、ここ数年で、レーザー医療の世界でも、圧倒的な「破壊的イノベーション」が起こるのではないかと思っています。
すなわちシャークフィン型のプロダクトサイクルに変化し、既存の概念が吹っ飛ばされるということです。
幸いにもクリニックFはまだまだ小さな船ですので、イノベーションのジレンマにはまることもなく、舵も取りやすい。
1年後、3年後、5年後、そして10年後を明確に意識しながら、変化に対応して安定した経営とより優れた医療を提供してゆきたいものだと思います。