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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:瘢痕

瘢痕治療、線維化した組織をどう再プログラムするか

瘢痕治療は、美容医療の中でも最も難易度の高い領域の一つです。

なぜなら瘢痕とは、単なる“傷跡”ではなく、「異常な創傷治癒の完成形」だからです。

つまり重要なのは、“削ること”ではありません。

「線維化した組織をどう再プログラムするか」という視点です。

上段に示されている「ASAPプロトコル」は、特にFitzpatrick III〜VIの有色人種において問題となる、ケロイド・肥厚性瘢痕・PIHリスクを最小化するための現実的戦略です。

まず“A”はAssessment。

瘢痕は見た目だけでは評価できません。

重要なのは「硬さ」「張力」「血流」「色素」「可動性」です。

近年はVSS(Vancouver Scar Scale)だけでなく、Durometerなどによる硬度測定も使われ始めています。

次の“S”はSoften。

これが実は極めて重要です。

レーザーや注射をいきなり行うのではなく、まずハイドロコロイドやシリコン被覆材を1〜2週間用いて、瘢痕組織を“柔らかくする”。

これは単なる保湿ではありません。

物理的密閉環境によってTEWL(経表皮水分喪失)を減らし、線維芽細胞の異常活性やコラーゲンクロスリンクを変化させる、「創傷生理学的準備」なのです。

その後の“A”はApproach。

ここでは、“タマネギの皮を剥くように”層別介入を行います。

血管優位ならPDLやNd:YAG、
線維優位ならステロイドや5-FU、
拘縮ならサブシジョンやフラクショナル。

つまり「瘢痕を一つの病態として見ない」ことが重要なのです。

最後の“P”はPigmentation。

炎症後色素沈着は、有色人種では“最後まで残る問題”です。

そのため最後にPicoレーザーやLADDで色調を整えていく。これがASAPプロトコルの全体像です。

さらに下段の「Single-Session Multi-Step」は、現代瘢痕治療の本質を表しています。

Rolling scar、
Box scar、
Ice-pick scar。

これらは全く異なる構造を持つため、本来は治療法も異なります。

Rolling scarにはサブシジョンで線維性アンカーを解除し、
Box scarにはEr:YAGなどでエッジを滑らかにし、
Ice-pick scarにはTCA CROSSで点状化学再構築を行う。

つまり、「同じニキビ跡」という言葉で一括りにできないのです。

さらに肥厚性瘢痕では、5-FU+トリアムシノロン混合注射が“黄金律”として使われることがあります。

ステロイド単独では萎縮しすぎる一方、5-FUを組み合わせることで線維芽細胞増殖抑制とのバランスを取る考え方です。

現代の瘢痕治療は、「レーザーを当てる技術」ではありません。

瘢痕の組織学、
力学、
血流、
炎症、
線維化、
色素。

これらを一つ一つ分解し、時間軸と層構造を設計していく“再構築工学”へ進化しているのです。

Alster TS, Tanzi EL. Dermatol Surg. 2007;33(2):131-140.
Manstein D et al. Lasers Surg Med. 2004;34(5):426-438.
Fabbrocini G et al. Dermatol Res Pract. 2010;2010:893080.
Asilian A et al. Dermatol Surg. 2006;32(7):907-915

Screenshot

Scar treatment is one of the most challenging areas in aesthetic medicine. This is because a scar is not simply a “mark left behind by injury,” but rather the end result of abnormal wound healing.

In other words, the key issue is not merely “removing tissue.”

The real challenge is:

“How do we reprogram fibrotic tissue?”

The “ASAP Protocol” shown in the upper section represents a practical strategy designed to minimize the risks of keloids, hypertrophic scars, and PIH (post-inflammatory hyperpigmentation), particularly in patients with Fitzpatrick skin types III–VI.

The first “A” stands for Assessment.

Scars cannot be evaluated based on appearance alone. What truly matters are:

Stiffness
Tension
Blood flow
Pigmentation
Mobility

In recent years, evaluation methods have expanded beyond the Vancouver Scar Scale (VSS), with objective hardness measurements using devices such as durometers increasingly being utilized.

The next “S” stands for Soften.

This step is actually extremely important.

Rather than immediately performing laser treatment or injections, scar tissue is first “softened” over 1–2 weeks using hydrocolloid or silicone dressings. This is not merely moisturization. By creating a physically occlusive environment, transepidermal water loss (TEWL) is reduced, altering abnormal fibroblast activity and collagen cross-linking. In other words, it serves as a form of:

“physiological preparation based on wound-healing biology.”

The subsequent “A” stands for Approach.

At this stage, treatment is performed in a layered manner — almost like “peeling the layers of an onion.”

If vascularity predominates, PDL or Nd:YAG lasers may be selected.

If fibrosis predominates, steroid injections or 5-FU may be more appropriate.

If contracture is the primary issue, subcision or fractional laser treatment may be indicated.

The key principle is that:

“A scar should not be treated as a single uniform disease entity.”

The final “P” stands for Pigmentation.

Post-inflammatory hyperpigmentation often remains the most persistent problem in patients with darker skin types. Therefore, the final stage may involve Pico lasers or LADD (Laser-Assisted Drug Delivery) to improve overall skin tone and pigmentation.

That is the overall concept of the ASAP Protocol.

The “Single-Session Multi-Step” concept shown in the lower section further illustrates the essence of modern scar treatment.

Rolling scars,
Box scars,
and Ice-pick scars

all possess fundamentally different structural characteristics, and therefore require entirely different treatment strategies.

For rolling scars, subcision is used to release fibrotic anchoring bands.

For box scars, Er:YAG lasers and related resurfacing techniques are used to smooth the sharp edges.

For ice-pick scars, TCA CROSS is employed to induce focal chemical reconstruction.

In other words:

“The term ‘acne scar’ cannot be treated as a single category.”

In hypertrophic scars, combination injections of 5-FU and triamcinolone are sometimes regarded as a “gold standard” approach. Steroid monotherapy may produce excessive atrophy, whereas combining 5-FU helps balance fibroblast suppression while reducing the risk of over-atrophy.

Modern scar treatment is therefore no longer simply:

“the technique of applying lasers.”

It has evolved into a form of:

“reconstructive engineering”

that systematically analyzes and redesigns:

Histology
Biomechanics
Blood flow
Inflammation
Fibrosis
Pigmentation

while integrating both temporal progression and layered anatomical structure into treatment planning.

References:

Alster TS, Tanzi EL. Dermatol Surg. 2007;33(2):131–140.
Manstein D et al. Lasers Surg Med. 2004;34(5):426–438.
Fabbrocini G et al. Dermatol Res Pract. 2010;2010:893080.
Asilian A et al. Dermatol Surg. 2006;32(7):907–915.


クリニックFのフラクショナルレーザー3兄弟

【クリニックFのフラクショナルレーザー三兄弟】

 
肌を脱皮させて入れ替える「フラクショナル・リサーフェシング治療」が米国レーザー医学会ASLMSでデビューしたのは2004年のダラス開催の学会での話でした。
本年2018年の米国レーザー医学会はダラス開催。

当時と比べると隔世の感がありますが、僕も15年以上同じ学会に演題を出し続けていると思うと感無量ですね。

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ドット状にレーザーを打ち込み、棒状に熱凝固させることで、肌の一部の入れ替えてしまうというこの治療法は、ニキビ跡や毛穴、さらには肝斑といった肌の面の症状を、肌を入れ替えることで一気に改善するというものでした。
当初新しい波長として注目された1550nmのエルビウムグラスレーザーの波長でしたが、クリニックFで今現在治療に利用しているものは、3種類に分かれます。

どの機器も一長一短ですので、理想は三つ利用することなのですけれどね。

 
1)スマートサイド・スクエア(通称マドンナリフト)10600nm

0703イタリア デカ社副社長Dr.マウロ・ガリと
イタリアのレーザー機器メーカーDEKA社が得意の10600nmのCO2レーザーを用いて作った機器で、特徴的なのはレーザー照射後にできる熱だまりを利用して、組織を縮めることができること。

2012年には目の上のタルミを治療するマドンナアイリフトが一気に市場を席巻しました。現在クリニックFではこの機種を顔全体に照射したのちに、レーザードラッグデリバリーの技術を利用して目の上と顔全体をレーザー照射し、サイトカインんを大量に塗布するという方法を使っています。

ダウンタイムは3-5日間。肌質が5-10歳程度若くなるため、肌が入れ替わる満足度は高く、年末年始やゴールデンウィーク、お盆休みなどの直前の予約はいつもいっぱいです。

レーザーアシストによるドラッグデリバリーについては僕の英文論文もありますので、ご興味ある方はご覧ください。

肌を入れ替える能力と、肌を縮める能力は最も高いと思います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27990655
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28277004
2)サイトン ヘイロー 1470nm + 2970nm

 
米国はカルフォルニアパロアルトの非上場レーザーメーカーサイトン社は2013年に皮膚の引き締め能力の高い1470nmの波長と、表皮を浅く蒸散する2970nmのエルビウムグラスの波長をハイブリッドに照射する独自技術の機器を開発しました。

いわば肌の、タイトニングとリサーフェシング、ブライトニングを合わせ持つ機能があります。

照射部位の面積をあらかじめ測定し、その部位に合わせて何ジュールのエネルギーを照射すればよいという、面積当たりの総エネルギー量を明確にした機器で、僕の様に工学博士を持つような工学部出身者としては非常に効果が理解しやすい機器ですね。

色彩を含め肌質を明るく入れ替える能力、さらにリフティングの能力は一番高いと言えるでしょう。
3)フラクセル 3 DUAL 1550nm + 1927nm
世界で最も早くフラクショナルレーザー機器を開発したリライアント社。

こちらがソルタメディカル社に買収され、さらにバリアント社に買収されるという事になりましたが、オリジナル技術を持ったメーカーです。
1550nmのエルビウムグラス波長はタイトニングを、さらに1927nmのツリウムグラスレーザーはミニマムアブレイティブと呼ばれる、はだに爪楊枝の先のような小さなかさぶたを沢山作り、肌を入れ替えます。
こちらはターンオーバーを亢進させる効果もありますので、弱く照射して肝斑を治療したり、さらにはフラクショナルレーザーを最もダウンタイム短く照射することができますので、ダウンタイムを減らしたい人には最適な施術であると言えます。


ニキビにはプラズマをダブル照射

プラズマの登場でニキビ治療が変わることになりそうです。

クリニックFでは現在この二台のプラズマ治療器を採用していますが、プラズマと一言で言っても二台それぞれに特性があります。

クリニックではこの二台をどちらも使って炎症性ニキビにアプローチしており、場合によってはダブル照射を行っているのです。

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これが結果を伴うことに手ごたえを感じています。

現在大学の研究室と一緒になって研究を行っていますが、論文などで前後の写真使用を御承諾いただければモニター照射も可能ですので、お困りの方はお声がけください。

赤みや痛み、凹凸に悩まれていて鏡を見る度憂鬱な思いをされている方のお役に立てればうれしいです。


マドンナリフト公式サイトで

この時期から一気に施術が増えるマドンナリフトについては、専門サイトでもインタビューにお答えしています。

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こちらもご一読ください。

http://www.madonna-lift.com/dr/interview003


静かなDEKA社オフィスにて

フィレンツェはDEKA社のオフィスに行ってきました。

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今日はファクトリーがお休み。

本社をほとんど貸切の状態で、副社長のマウロガリ博士と機器のアップグレードと共同研究テーマについて打ち合わせをしてきました。

静かなオフィスで良い話ができましたよ。

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特に今年は僕も慶應義塾大学薬学部で薬学博士号が取れたばかりなので、マドンナリフトやスマートサイドスクエアを使ったフラクショナルレーザーアシストのドラッグデリバリー後の、生体内のサイトカインカスケードをパヴィア大学と研究する事になりそうです。

新たなレーザーの機序が、薬学的な側面でも解明できるかもしれません。

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飽くなき知的好奇心の探求。楽しみです。


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