こちらの図は、体に必要な50要素の栄養素を俯瞰するために作った作成途中の図。
それぞれの解説と最終バージョンは本に載せました。
現在は、食が豊かである一方で、食材の安全性が確保されている訳ではない時代です。
「ディフェンシブ栄養学」を書く際に思った事を、はしがきにまとめましたので、ちらっとご紹介いたします。
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肉体の健康と食、睡眠、精神状態は直結しています。
精神の健康は睡眠に直結しますが、食にも大きく依存します。
特にこの日本で食は混迷を極めます。
一般家庭でこれだけ世界各国の料理を食べる習慣のある国は他に例を見ないのではないでしょうか?
朝トーストに目玉焼きを乗せ、昼は焼き魚定食、夜にビーフシチューと春雨サラダ、週に一度は外食で最近インド料理にハマってる・・・と聞いても「それの何が一体珍しいのか」考えることすらないでしょう。
流通している食材の種類も他国の比ではありません。
美味しさとインパクトの追求により、脂の乗った肉、魚、甘みを極限まで追求した果物が身近に溢れ、いつでも食べ物が手に入るコンビニエンスストアや食材が安く手に入る激安店も普及しています。
今の世の中で私たちは普通にただ暮らしているだけでエネルギーの取りすぎになりやすく、お腹いっぱいになることは簡単で、一方栄養バランスは偏りやすいのです。
これは社会的な問題と国民性によるところも多く、一般庶民には変え難い現実です。
そして、こうした背景によりペニシリンの発見以降確立され支持されてきた西洋医学もある危機に直面しています。
これまで医師に与えられてきた使命のひとつは、病気を治し、人の寿命を延ばすことでした。
特に、疫病といったひとりの個人が罹ってしまうことでその村落が滅亡してしまうような病気の根絶が、初期の西洋医学のテーマであったと思います。
ひとつひとつ治療法を確立することで人間の寿命は飛躍的に伸び、人口は瞬く間に増えていきました。
長寿を期待することが大それた欲でもなんでもなく、当たり前になっていったのです。
一方で、我々医師は医学部時代から「病気」については本当に多くの事を学びます。
しかしながら、どうすれば健康でいられるのか?
アンチエイジングができるのか?
と言う事は学んで来ませんでした。
これらの問いについての答えは、現在検証中で、未だに解決されていないと言うのが正確なところです。
何度か講演でも話しましたが、医師は「健康の専門家」ではなくて、「病気の専門家」なのです。
病気と健康は相対立してきっぱり分かれるものではなく、連続しています。
「病気がない状態」がいわば健康ですが、健康には、「完璧な健康」、「病気の要因を孕んでいる健康」、「病気直前の健康」というように様々な健康のレベルがあります。
健康のカテゴリーに入るにもかかわらず、幅があるのです。
さらに困った事に、健康の度合いは臓器ごとでも異なっています。
心臓、血管、脳神経、消化管、肝臓、脾臓、血液骨髄系……。
加齢をするごとに、それぞれの臓器が酸化、糖化、炎症していくことで、身体の予備力が落ちて行きます。
そして、どれかの臓器の防御系が決壊すると、病気になります。
難しいのは、それぞれの臓器の予備力が非常に高いために、それぞれの健康状態を客観的に測定する方法が実際にはないということ。
定期検診で血液検査をして、全てA判定が出たからといって、何かの臓器が悲鳴をあげる寸前なのかも知れない。
完璧な健康状態であることを保証してくれるものでは無いのです。
では、健康を維持して、病気にならないためにはどうしたらいいでしょうか?
例えば、敵である特定の病気がわかっているのであれば、そこに対して攻撃できるオフェンシブな薬を作れば良い。
これは「病気の専門家」としての攻め方です。
しかしながら、健康を守るためには、全ての臓器の予備力を上げ、さらに防御能力を高めるような「ディフェンシブ」な考え方が必要です。
体のディフェンス能力を上げるには、食事や軽度な運動が大切です。
投網をかけるように6大栄養素と抗酸化物質をまんべんなくとり、健康を害する可能性のあるリスクをヘッジすること。
さまざまな脅威から、自分をどう防御するか。身体を支える要となる日々の食事をどうしたらディフェンシブに見直すことができるのか。
この書ではこうしたことを考えていきたいと思います。