12年後 この10年で博士が二つ増えました。

Twelve years later, I have added two more doctoral degrees over the past decade.
藤本幸弘オフィシャルブログ
12年後 この10年で博士が二つ増えました。

Twelve years later, I have added two more doctoral degrees over the past decade.
皮膚を「触る」という行為に対して、「快」か「不快」かを感じますが、同じ刺激なのに不思議ではないですか?
工学部にいた一時期、こうした肌への刺激をレーザーによって作ることができないか、考えていたことがありました。
それは、単に皮膚の感覚受容器(レセプター)だけの問題ではなく、その情報をどう脳が解釈するかという感覚神経-中枢処理系の複雑な相互作用によって決まっています。
【皮膚の快・不快感覚を司るメカニズム】
① タッチ受容体(Mechanoreceptors)の種類と働き
皮膚には、触覚を感知するためのいくつかのレセプター(感覚受容体)が存在します:
レセプター名 刺激の種類 特徴
1)メルケル細胞 持続的な圧力 形の識別に関与
2)マイスナー小体 軽いタッチ 指先など敏感な部位に多い
3)パチニ小体 振動 深部に存在、 短い刺激に反応
4)ルフィニ終末 皮膚の伸張 肌の緊張や圧に反応
5)C触覚線維 ゆっくりとした優しいタッチ 情動的な「快」感覚に関与(後述)
特に注目すべきは、C触覚線維(C-tactile afferents)という、比較的新しく発見された低閾値機械受容器です。これは主に有毛部位の皮膚(前腕や背中など)に存在し、人の優しいスキンタッチ(3–10 cm/sec)に最も強く反応します。
■ McGlone et al., Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 2014, 34(2): 155–167
「C触覚線維は感情的な触覚の基盤であり、脳の報酬系を活性化する」
② 脳内での処理:触覚と情動の結合
皮膚からの触覚情報は、まず脊髄後角 → 視床 → 一次体性感覚野(S1)へと伝達されます。ここで刺激の物理的性質(圧力、位置など)が処理されます。
しかし、「快・不快」の情動的な評価は別の経路、特に以下の領域が関与しています:
島皮質(Insula):C触覚線維からの入力を受け、快感覚や内受容感覚(interoception)を統合。
前帯状皮質(ACC):痛みや不快な感覚と関連。
扁桃体(Amygdala):情動評価の中心。
報酬系(Nucleus accumbensなど):心地よい触覚で活性化。
■ Olausson et al., Nature Neuroscience, 2002, 5(9): 900–904
「C触覚線維は、島皮質と報酬系を活性化し、快感としての触覚を創出する」
③ なぜ「同じ刺激」でも快と不快が分かれるのか?
1) 文脈依存(Context)
同じスキンタッチでも、誰に触られているか、どんな場面かによって脳の解釈が変わります。
社会的文脈や心理的状態が、触覚の「情動的評価」に強く影響。
2) ストレス状態・炎症・ホルモンの影響
ストレス下ではコルチゾールの影響で、C線維の快刺激が抑制される。
IL-6, TNF-α などの炎症性サイトカインが神経感受性を変化させ、触覚が過敏になったり、逆に不快になることも。
■ Pavlov VA, Tracey KJ. Nature Reviews Neuroscience, 2012; 13: 397–404
「炎症状態は迷走神経系と感覚系に影響を与え、感覚過敏や不快感を引き起こす」
3)中枢性感作(Central Sensitization)
繰り返しの刺激や慢性的な痛み・ストレスにより、脳が「過敏」な状態になる。
例えば線維筋痛症の患者では、軽い触覚でも痛みや不快感を訴える。
■ Yunus MB. Current Pain and Headache Reports, 2007; 11: 343–348
■ 結論と今後の展望
皮膚に触れたときの「快・不快」は、単なる末梢の刺激だけでなく、脳がそれをどう解釈するかという“認知的評価”と“情動的統合”の結果です。
この背景には、皮膚-脳の双方向性の神経回路と、腸内環境や免疫、内分泌まで巻き込む全身的ネットワークが存在しています。

日本光学会出版の工学系科学雑誌「光学」にて光治療の効能について依頼原稿を頂いたので書き上げました。

亀田総合病院の町田洋一先生との共著です。

皮膚レーザーに関する理論はほぼ完成していますが、光治療については今ひとつ。
そこで
1)IPLについて
2)LEDについて
3)エキシマ光について
4)市販の光美容機器について
の四つを議題に上げて光学的かつ工学的に解説しました。

懸念されていたコロナウイルスやワクチン由来の白斑に関しては、何度かのやり取りの末に、文章を生かしてもらいましたよ。
報告も多いので、皆も意識していただけると良いと思います。
昨日は東大化学科の合田圭介教授の研究室へお邪魔させていただきました。
10名ほどの東大教授の対談集の本を読んでいた時に、凄く聡明なコメントを幾つもされていて、ぜひともお会いしたいと思っていたら、全くの偶然で別のお知り合いから、合田先生をご紹介いただけることになったのです。
願えば叶うもの。関係者の方々に御礼申し上げます。


実際に研究室の実験施設を見学させていただきましたが、実験装置は、取得したサンプル→分離測量→データ取得→AIを使った画像解析まで一気通貫の見事なシステムが多く、まさに理工の知の結晶でした。
僕も理系の研究者としては、分析機器の精度が変わることによってパラダイムシフトが起こる体験を幾つもしてきましたが、こうした新たな発想の分析機器を作ることが、科学を進化させてきたことは明らか。
この機器があればこんな検証もあんな検証も出来るとどんどんアイディアを思いつき、思わずニヤニヤしてしまう自分がいました。笑。
再生医療やエクソソームなどの分離の研究もされているので、今後の成果が楽しみです。
マーケティング技術の向上によりアカデミックな分野から離れてしまった感のある美容医療ですが、エビデンスのある科学に引き戻したいですね。
工学系学会誌、「光学」特集光学の美容皮膚科学への活用 の依頼原稿を書き終えて提出。
著作権譲渡同意書にサインしました。出版は来年です。
