TakahiroFujimoto.com

HOME MAIL
HOME PROFILE BOOKS MUSIC PAPERS CONFERENCES BLOG MAIL CLOSE

BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:EBMNEvidence Based Medical Devices・レーザー/光/RF/プラズマ他が適応する疾患・治療法など

光エネルギーの肌の影響について

今月号の米国皮膚科学会誌は、光エネルギーの肌の影響についての細かい総論が特集されていました。

僕の様な光治療を専門にしている医師にとってはお宝ですね。新たな研究のヒントももらいました。

以下、アブストラクトを訳したものです。

光生体調節(Photobiomodulation, PBM)は、以前は低出力レーザー光線療法として知られていた非侵襲的な光療法であり、可視光(VL, 400-700 nm)スペクトル内の赤色光(RL, 620-700 nm)および近赤外線(NIR, 700-1440 nm)スペクトルの波長を利用します。PBMは、さまざまな皮膚疾患および非皮膚疾患の治療において有望で、ますます広く使用されている治療法です。

RLおよびNIRの光子は、ミトコンドリアのシトクロムCオキシダーゼ(COX)を含む内因性の光受容体によって吸収されます。

COXの活性化は以下の変化を引き起こします:ミトコンドリアのアデノシン三リン酸(ATP)の調節、活性酸素種(ROS)の生成、および細胞内カルシウム濃度の変化。ATP、ROS、カルシウム濃度の調節に伴い、インスリン様成長因子やホスホイノシチド3キナーゼ経路(PI3K経路)などのさまざまなシグナル伝達経路が活性化され、これが細胞の増殖、移動、分化に対する下流効果をもたらします。

効果的なPBM療法には、照射量(fluence)、治療時間、出力パワーなどの治療パラメーターが重要です。PBMは一般的に耐容性が高く、安全性も高い治療法であり、最も一般的な副作用として一過性の紅斑が見られますが、これは自然に消失する傾向があります。

(J Am Acad Dermatol 2024;91:793-802.)


米国レーザー医学会誌

足を折ってしまうと全く外に動けないですね。涙。

会食も365日飲んでいたお酒も小休止。

ダイエットと休肝日の日々を送っています。

まあ時間が出来たおかげで読書や論文読みや、普段できないようなインプットに集中しています。

レーザー照射やその他のエネルギーデバイスの皮膚への刺激が、メッセンジャーRNA(mRNA)の発現を通じてコラーゲンやエラスチンを増やし、肌の若返りに寄与するという研究は、近年増加しています。

レーザー治療は、もともと工学に詳しいハーバード大学を中心とした技術者によって先行研究が進んできましたが、まさに今は時代の転換期。

生化学的なカスケードの研究がどんどん進み、エビデンスがついてきました。

メスやプチ整形で若い顔を作るのではなく、肌を若返えらせて若い頃の顔に時計を戻す事が可能になりつつあります。

レーザー照射とmRNAの関係

レーザーや光治療は、皮膚に微小な損傷を与えることで自己修復機能を刺激します。

この過程で、特定の遺伝子が活性化され、mRNAの発現が増加します。

mRNAは、皮膚の線維芽細胞や角化細胞においてコラーゲンやエラスチンといったタンパク質の合成を促進し、皮膚の弾力やハリを改善する役割を果たします。

主なメカニズムとしては

①損傷修復の促進: レーザーが引き起こす微小炎症がmRNA発現を誘導し、創傷治癒プロセスを活性化。

②コラーゲン産生の増加: mRNAがⅠ型およびⅢ型コラーゲンの産生に関与。

③エピジェネティクスの変化: レーザー照射による外的刺激が、遺伝子発現の制御に影響を与える可能性。

が考えられています。

今日も米国レーザー医学会誌を読んでいて見つけました。

クリニックFに新たに導入したBTL社のEMFACE(HIFES&RF)を強いエネルギーで腹部に使用した場合には脂肪組織のアポトーシスが起こすことをRTPCR法の遺伝子解析を行う事で立証したという論文。

エネルギーデバイスを肌に利用することで、新たな遺伝子発現が起こり、肌に変化を与えているという事を立証したとても良い論文です。

もちろん今まで通りの出力で顔に使用した場合は脂肪は保全されます。

興味深いですね。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/lsm.23854?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR0P_6W3_fIdfKarValkh6strZNbEihAaPkumI3DdODMSIQNhNeU2uzOvec_aem_OA51llRBwoJm0iSDEZtKRg

 


レーザー治療を専門

会食や、学会などで、レーザー治療を専門にしていますというと、ドクターも含めて多くの方は、シミ取りですか?という質問を受けます。

レーザーというと、組織をいったん傷つけて、再生を図ることで肌を改善する印象がある方が多いようですが、これは20年前のレーザーの治療です。

ただし、現在保険診療でできることはここまでですね。

実際にクリニックFでやっていることは、レーザー光を当てることで、皮下にコラーゲンやエラスチンを増殖させるためのmRNAを発現させることで、若かったころに発現していた遺伝子に近づけるというもの。

これらのエビデンスを得ることは、組織に発現したメッセンジャーRNAを測定することができるトランスクリプトーム解析というものを行うことで可能になりました。

僕も阪大との共同研究で、育毛のためのレーザー治療をするための機器を開発するためにトランスクリプトーム解析を行い、論文化(8)したこともあります。

手術やスレッド、フィラー、ボトックスなどでできるものは、プチ整形も含めて「若い顔を作る」技術。

でもレーザーをはじめとしたエネルギーベースの医療機器を使用すると、皮下の遺伝子を再活性化させることで、若い肌を取り戻し、文字通り「若返り」ができるのです。

最も違いが分かりやすいのは、動画が撮影されている時ですね。レーザー治療だけの人は、自然な表情で、自然な若返りができていると思います。

===============

レーザー技術の発展
1960年にTheodore Maimanがレーザーを発明して以来、医療やライフサイエンスの分野で多岐にわたる応用が開発され、現代医療に欠かせない技術となっている。

レーザー光の特性とその意義
高いコヒーレンス性や低スペクトル帯域幅、集中できる特性により、極めて短時間で精密なパルスを生成可能。波長、スペクトル範囲、パルス持続時間を調整できることで、組織や細胞に対して効果的な施術が可能。

細胞・組織との相互作用
レーザーのパルス持続時間やエネルギー密度が細胞に与える影響は多様。連続波では破壊的効果だけでなく、光機械的な反応が発生することもある。皮下にレーザーを照射した後に発生した活性酸素群を分離する研究で、藤本は工学博士号を取得しています。

診断用途
吸収・散乱を利用し、蛍光イメージングやラマン分光法によって、組織の状態や病理学的診断に利用。
光コヒーレンス断層計(OCT)では、非侵襲的に細胞や組織の詳細な3D画像を取得でき、眼科や皮膚科などで広く応用。

光線力学療法(PDT)
がん治療では、光感受性物質とレーザーを組み合わせることで、選択的にがん細胞を破壊する治療法として使用されている。
臨床においては、皮膚がんや早期の食道がん、非小細胞肺がんなどでの効果が確認されている。

手術治療における応用
マイクロ秒~ミリ秒単位のパルス照射では、主に熱反応が発生し、凝固・蒸発反応を活用して、組織の切断や凝固に応用。
眼科(網膜剥離治療など)、消化器外科、整形外科などでの手術補助としても活用されている。

最先端のレーザー応用
ナノ秒~フェムト秒パルスにより、従来の熱反応を抑えた光機械相互作用が発生。これにより、精密な組織アブレーションやマイクロダイセクションが可能。

ポレーション(細胞膜への穴開け)を用いた遺伝子導入や薬剤送達技術が、再生医療や遺伝子治療の分野で注目を集めている。
生体分子への直接的効果。藤本はレーザーアシストのドラッグデリバリーの論文で薬学博士号を取得しています。

低レベルレーザー療法(LLLT):痛みの軽減や創傷治癒の促進効果があり、理学療法や歯科治療などでも利用。LLLTは、非熱的な生物学的効果により、細胞の活性化やコラーゲン生成の促進が示唆されている。皮下の免疫細胞の司令塔であるマストセルの研究で藤本は医学博士号を取得しています。

今後の開発領域と課題
各分野での応用を進めるために、高精度なレーザー制御技術や、安全性の確保が求められる。ナノテクノロジーとの融合による新しい診断技術や、さらなる低侵襲治療技術の開発が期待されている。

============

この分野に関する僕のかかわった主要な論文です。(ほかの分野の論文はもっとありますが)

(1) T. Fujimoto, M. Ito, S. Ito, H. Kanazawa, Fractional laser-assisted percutaneous drug delivery via temperature-responsive liposomes, J. Biomater. Sci. Polym. Ed. 28 (7), Feb-2017, 679-689 (2017). [doi: 10.1080/09205063.2017.1296346.]
(2) T. Fujimoto, J. Wang, K. Baba, Y. Oki, Y. Hiruta, M. Ito, S. Ito, H. Kanazawa, Transcutaneous drug delivery by liposomes using fractional laser technology., Lasers Surg. Med. 49(5), Jul-2017, 525-532 (2017) [doi: 10.1002/lsm.22616.]
(3) T. Fujimoto, Metabolic syndrome treatment with the ACBODY low-frequency rotating stimulation device, Bio. Clinica. 29(4), Apl-2014, 76-83 (2014).
(4) T. Fujimoto, Imai Y, Tei Y, Ito S, Kanazawa H, Yamaguchi S High temperature heat source generation with 4-6W power level quasi-cw(continuous wave) semiconductor lasers for medical use. J Biomed Opt. 19(10), Aug-2014, 101502(2014). [doi: 10.1117/1.JBO.19.10.101502.]
(5) T. Fujimoto, Imai Y, Tei Y, Yamaguchi S Development of A Semiconductor Laser Based High Temperature Fine Thermal Energy Source in an Optical Fiber Tip for Clinical Applications. Jpn. J. Appl. Phys. 52, Apl-2013, 052501(2013)
(6) T. Fujimoto, Imai Y, Tei Y, Fujioka T, Yamaguchi S
High temperature heat source generation with a very low power level quasi-cw(continuous wave) semiconductor laser for medical use. SPIE2013- , Feb-2013, 856569(2013) [doi: 10.1117/12.2002723.]
(7) T. Fujimoto, Ito S, Ito M, Kanazawa H, Yamaguchi S Induction of different reactive oxygen species in the skin during various laser therapies and their inhibition by fullerene.Lasers Surg Med. 44(😎, Oct-2012, 685-94(2012). [doi: 10.1002/lsm.22065.]
(😎 K Hasegawa, T Fujimoto, C Mita , Furumoto H, Inoue M, Ikegami K, Kitayama T, Yamamoto Y, Shimbo T, Yamazaki T, Tamai K.
Single-cell transcriptome analysis of fractional CO(2) laser efficiency in treating a mouse model of alopecia.Lasers Surg Med. 2022 Oct;54(8):1167-1176. [doi: 10.1002/lsm.23590.] Epub 2022 Aug 2.
PMID: 35916125
(9)T. Fujimoto, Nishiyama T, Hanaoka K. Inhibitory effects of intravenous anesthetics on mast cell function. Anesth Analg. 101(4) Oct-2012, 1054-1059(2012). [doi:10.1213/01.ane.0000166955.97368.80.]
(10) T. Fujimoto, Sato Y, Sasaki N, Teshima R, Hanaoka K, Kitani S. The canine mast cell activation via CRP. Biochem Biophys Res Commun. 31;301(1), Jan-2003, 212-217(2003). PMID:12535664
(11) A Nishijima, T Fujimoto,T Hirata, J Nishijima; A New Energy Device for Skin Activation to Acute Wound Using Cold Atmospheric Pressure Plasma: A Randomized Controlled Clinical Trial, Biomed J Sci & Tech Res, Vol.21(1), 15494-15501, DOI:10.26717/BJSTR.2019.21.003532
(12) A Nishijima, T Fujimoto, T Hirata, J Nishijima: Effects of Cold Atmospheric Pressure Plasma on Accelerating Acute Wound Healing: A Comparative Study among 4 Different Treatment Groups. Modern Plastic Surgery, 9, 18-31, 2019. doi: 10.4236/mps.2019.91004.
(13) M Murakami, S Hyodo, Y Fujikawa, T Fujimoto, K Maeda: Photoprotective effects of inclusion complexes of fullerenes with polyvinylpyrrolidone: Photodermatol Photoimmunol Photomed; 29: (Jul-2013), 196–203(2013), [DOI: 10.1111/phpp.12050]


レーザー医療分野での博士論文作成指導

タイのMae Fah Luang 大学の博士課程で学ぶ、大学院生の医師2人のレーザー医療分野での博士論文作成の指導をする事になりました。

依頼受諾レターの作成です。


ニキビ跡治療

今月号の欧州皮膚科学会専門誌。

ニキビ跡治療についてでしたが、レーザーやRFなどのエネルギーデバイスを使用した総論がありました。

皮膚科学会誌にしては珍しい特集。

米国レーザー医学会では、「すでにニキビ痕治療は完成した」と言われて早10年。

いまだに古い治療を保険診療でされているドクターも多いですが、世界の常識は日本の非常識。

世界の治療法は大きく変わってきています。


カテゴリー