2013年に米国市場にピコ秒レーザーが導入されましたが、僕はピコ秒という技術にあまり新規性を感じなかったため、クリニックにはすぐに導入するという結論に至りませんでした。
工学的なレーザーではピコ秒の上のフェムト秒レーザーも存在しますし、あくまで、ピコ秒レーザーは皮膚医療レーザー技術の進化過程の改善であって、革命ではないと思ったのですよね。
ピコ秒レーザー自体は90年代に機器とともにいくつかの報告症例が論文化されています。
1996年 Kilmer 800nmのTi: Sapphire Laser 100フェムト秒 100ピコ秒 400ピコ秒 にて刺青除去検証(猫の皮膚)
1998年 Ross 1064nm Nd:YAG 35ピコ秒 10ナノ秒 との刺青比較 (ヒト)黒色の刺青のみピコに有意性あり
しかしながら、機器の安定性が低かったため、実用化には至りませんでした。
事実上のピコ秒レーザーの解禁となった2013年には、サイノシュア社、キュテラ社、キャンデラ社の米国3社のピコ秒レーザーが揃い、レーザー医学会や皮膚科学会でも大変大きな注目を浴びました。
当初ピコ秒レーザーが注目を上げた理由、つまりレーザー技術者たちの目論見は3点あります。
1)カラーブラインドで刺青の色素が取れるのでは?
2)肝斑に対して画期的な対処法になるのでは?
3)光熱作用ではなく、光音響作用が起こり、標的物の破壊理論が変わるのでは?
という点でした。
まず、
1)のカラーブラインドについては、2015年米国で、高額な機器を購入したのに、カラーブラインドで刺青が取れなかったと医師がサイノシュアを訴訟したという事件が起こりました。
実際にはあまり効果がないことがわかってきました。
その証拠に 1064 / 532nm 755nm以外の第三の波長を各社が模索しているという現状があります。
次に
2)の肝斑治療に関しては、実際のところ、キラーコンテンツにはなりえなかったというのが現状です。肝斑のメラニン粒子は、単に色素粒子が小さいわけではないのです。
ピコ秒レーザーを照射した場合、ナノ秒と比較して、表皮内には小さい空胞(LIOB Laser Induced Optical Breakdown)の出現をみますが、これは、分子乖離ではなくて、水が水蒸気になった際に起こった現象です。
3)に関しては少し専門的な話になりますので、次回まとめて書きますね。