人体の驚くべき数値
ちょうどコロナ前に子供向けのこんな本を監修した事があるのですが、数字で身体のことを表現すると色々楽しめるんですよね。もう一度書きたいネタだなあ。

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循環器系 – 体中を巡る血液の秘密
血管の長さ: 大人の体内にある全ての動脈・静脈・毛細血管を一直線に伸ばすと、その長さは約10万kmにもなります。これは地球を約2周半も回れる距離です!細い毛細血管だけで全長の80%を占めるほど、体の隅々まで張り巡らされています。
心臓の鼓動回数: 人間の心臓は1日に約10万回も鼓動します。これは生涯では26億回以上にもなり、まさに常に働き続ける驚異のポンプです。ちなみに、体格の小さい動物ほど心拍が速く、ヒトの安静時心拍数は1分間に60~100回程度ですが、トガリネズミでは1分間に約1000回にも達します。
心臓のポンプ力: 心臓は毎分約5.7リットル(1.5ガロン)の血液を全身に送り出しています。これは1日に換算すると約8000リットルにもなり、1年でオリンピックプールを軽く満たせるほどの量です。こんな強力なポンプが胸に収まっているなんて驚きですね。
神経系 – 脳と神経の超ハイスペック
電気信号の速さ: 神経細胞が伝える電気信号の速度はとても速く、最大で約120m/秒(時速430km)にもなります。これは新幹線やレーシングカー並みのスピードです。痛みを感じたり瞬時に手足が動いたりするのは、この高速通信網のおかげです。
脳内のニューロン数: 人間の脳にはおよそ860億個ものニューロン(神経細胞)が存在します。かつては1000億個と言われていましたが、最新の研究で訂正されました。それでも想像を超える数で、各ニューロンが情報をやりとりして私たちの思考や記憶を生み出しています。
シナプスの数: 脳内ではニューロン同士が100兆個ものシナプス(神経接続)でつながっています。このネットワークの密度はとてつもなく、各ニューロンは平均で数千もの他のニューロンと接続。この膨大な配線のおかげで、人の脳は非常に高度な情報処理ができるのです。
脳のエネルギー消費: 脳は体重のわずか2%しか占めませんが、体全体のエネルギーの20%前後を消費する大食漢です。安静にしていても大量の酸素とブドウ糖を血液から取り込み、約20ワットの電力を発生させています。これは小さな電球をともすのに十分なパワーで、まさに頭の中に“小さな明かり”が灯っているようですね。
消化器系 – 食べ物と体の意外な関係
消化にかかる時間: 食べ物が口から胃腸を経て排泄されるまで、平均で24~72時間ほどかかります。内容や個人差によって幅がありますが、約1~3日かけてゆっくり栄養を吸収しているのです。例えば、胃を出るまでに約2時間、小腸では5~6時間、大腸ではさらに数十時間かけて水分が吸収されます。
胃酸の強さ: 胃で分泌される胃酸のpHは1~2と非常に強酸性です。この酸性度はバッテリー液(pH0)に匹敵し、金属や骨さえ溶かすほど強力です。もちろん胃自体は粘液によって守られていますが、胃酸のパワーのおかげで私たちはお肉から野菜まで何でも消化できるのです。
腸の長さ: 小腸は約3~5メートル、太腸(大腸)は約1.5メートルの長さがあります。小腸は実は大腸より長いのに「小さい」と呼ばれますが、これは直径が細いからです。これらの長い消化管が体内に収まり、食べ物から栄養をしっかり吸収しています。人の身長の何倍もの長さの管が体の中に収まっているなんて不思議ですね。
唾液の量: 人は1日に最大1.5リットルもの唾液を分泌します。これはペットボトル約3本分で、生涯ではプール2つ分にもなる計算です 。唾液は食べ物の消化を助け、口内を潤し清潔に保つ大切な消化液ですが、こう聞くとちょっと驚きと少し笑いが出る量ですね。
骨格・筋肉系 – 身体を支える力と動き
赤ちゃんの骨の数: 赤ちゃんは約275~300個もの骨を持って生まれてきますが、成長とともに骨同士が癒合し、大人では骨の数は206個になります。赤ちゃんの柔軟な体は小さな骨がたくさん集まってできており、産道を通るためにもこの構造が重要です。大人になるとしっかりした大きな骨に変わりますが、私たちの体は成長につれて文字通り「再構成」されているのです。
骨の強度: 人の骨は重量あたりでは鋼鉄よりも強いと言われます。実際、マッチ箱サイズの小さな骨片でも最大約18,000ポンド(8トン)の重さを支えられるという報告があります。骨はコンクリートや花崗岩並みの強度を持ちながら非常に軽量で、まさに自然が生んだ高性能な材料です。
一歩に使う筋肉: 人が一歩踏み出すだけでも、実は約200の筋肉が協調して働いています。太ももやふくらはぎだけでなく、背中や腹部、足先の細かな筋まで全身の筋肉を総動員してバランスを取り、一歩を踏み出しているのです。無意識にやっている歩行が、実は全身運動と言えるほど多くの筋肉のチームワークで成り立っているのは驚きですね。
感覚器官 – 五感の驚異的な能力
目の色彩識別能力: 人間の目は約1000万色もの色の違いを見分けられると推定されています。通常は三原色(赤・緑・青)の錐体細胞であらゆる色を感じ分けていますが、その組み合わせで膨大な色合いを識別できるのです。美しい夕焼けやカラフルな絵画を堪能できるのも、この色覚性能のおかげです。
鼻の嗅ぎ分け能力: 人の嗅覚は昔考えられていたよりはるかに優れており、少なくとも1兆種類の臭いの違いを識別できる可能性があります。従来は1万種程度と言われていましたが、2014年の研究で桁違いに高い潜在能力が示されました。普段意識しませんが、我々の鼻は実は“匂いの達人”なのかもしれません。
味覚の新陳代謝: 味蕾(みらい)と呼ばれる味覚センサーは舌に約1万個あり、約10日ごとに生まれ変わっています。熱いものを食べて舌がヒリヒリしても、しばらくすれば味を感じる力が戻るのはこのためです。子どもの頃嫌いだった食べ物が大人になると食べられるようになるのも、味蕾の再生と味覚の変化のおかげかもしれませんね。
全身統計 – 体全体にまつわる大きな数
全身の細胞数: 人体を構成する細胞の数は約37兆個と見積もられています。数えきれないほど膨大ですが、これでも体内に共生する細菌の数(数十兆個)とほぼ同じかそれ以上です。こうした無数の細胞が集まって協働することで、ひとつの人の体が成り立っているのです。
肌の生まれ変わり: 人の皮膚は新陳代謝が活発で、毎時間2億個、1日に約50億個もの古い皮膚細胞が剥がれ落ちています。捨てられた皮膚は埃(ほこり)となり、実は家庭内のホコリの大半はこの肌のかけらです。大量に皮膚が剥がれてもバリア機能が保たれるのは、剥がれたそばから新しい細胞がどんどん補充されているからです。
DNAの長さ: DNA(デオキシリボ核酸)は人の設計図ですが、その長さは桁外れです。各細胞に収納されているDNAを伸ばすと約2メートルにもなります。さらに体中の全細胞のDNAを繋ぐと、その長さは約160億km(100億マイル)、地球から冥王星まで往復できるほどになります!私たち一人ひとりの中に、文字通り宇宙級の長さの情報が詰まっていると考えるとロマンがありますね。