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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:アジア タイ編

【新国際学会周遊記──黄金の国ジパングはどこだったのか】

新国際学会周遊記──黄金の国ジパングはどこだったのか

バンコクでの一泊の仕事を終えて空港のラウンジで帰国便を待っています。

バンコクを訪れると、いつもながら金色に輝く仏塔が青空に映えて、思わず息を呑みます。陽光を反射して眩しく光るその姿は、まさに「黄金の国」という表現がふさわしい。

ふと頭をよぎったのは、マルコ・ポーロの『東方見聞録』に記された「黄金の国ジパング」の一節でした。

◆マルコ・ポーロの描いたジパング

13世紀末、ヴェネツィアの商人マルコ・ポーロは『東方見聞録』の中で「Cipangu」という国を記しました。

そこは「黄金に満ちあふれ、宮殿の屋根も壁も金で飾られている」と語られています。

当時の中国語で日本を「ジーペン」と呼んでおり、それが転訛して「ジパング」となったとされるのが通説です。つまりジパング=日本、これが学術的には揺るぎない見解です。

ではなぜ「タイ=ジパング説」が語られるのか
それでも旅の現場に立つと、別の説にも頷かされる瞬間があります。

タイ北部からビルマにかけては古来より金の交易が盛んで、アユタヤ王国時代には「黄金の仏塔」と「富の都」として繁栄しました。

16世紀には世界中の商人がここに集い、まさに「金色に輝く国」と呼ぶにふさわしい光景があったのです。

さらに当時の地図や記録では、極東の島々と東南アジア大陸が混同されることも珍しくありませんでした。

こうした事情から「ジパングは日本ではなくタイだったのでは」というロマンあふれる説が生まれたのでしょう。

◆黄金が結ぶ二つの国

歴史学的には「ジパング=日本」説が有力ですが、バンコクの仏塔を見上げていると「黄金の国」とは日本だけでなく、タイを含むアジア全体に広がっていたイメージだったのでは、とも思えてきます。

京都の金閣寺、平泉の中尊寺と、バンコクの金色の王宮。

東アジアと東南アジア、それぞれの文化の中で「黄金」は信仰と繁栄の象徴として輝き続けてきました。

マルコ・ポーロの伝えた物語は、実は両国をつなぐ「黄金の糸」だったのかもしれません。

◆アユタヤに生きた日本人──山田長政の時代

17世紀、東南アジアの中心都市アユタヤには日本人町が存在しました。朱印船貿易でやってきた武士や商人たちが暮らし、山田長政はついにアユタヤ王朝の傭兵隊長にまで上り詰めます。

その姿は、江戸の町人にとって「南蛮渡りの冒険譚」であり、現代の私たちには、グローバル化以前の日本人の果敢な挑戦として映ります。

◆王室と皇室の交流──近代国家の友情

19世紀末、西洋列強の圧力に晒されながら独立を守ろうとしたシャム王国。ラーマ5世チュラーロンコーン大王は、同じく近代化を急ぐ明治日本に親近感を抱きました。

アジアでただ一国、植民地化を免れたタイと、日清・日露戦争を経て大国と伍した日本。両国は互いを「独立を守る同志」として見ていたのです。

◆モータリゼーションと工業の絆

戦後の交流は経済へと展開します。1970年代以降、日本の自動車メーカーは相次いでタイに進出し、今日の「アジアのデトロイト」を形作りました。工場労働者の生活から物流のインフラまで、日本企業の存在感はタイ経済の成長そのものと重なっていきます。

学会帰りのタクシーの窓から流れる街並みには、トヨタ、ホンダ、日産の看板が林立し、日本の技術が日常に溶け込んでいることを改めて実感させられます。

◆医療と文化の新しい橋

そして現代、僕の専門である医療・美容分野でも交流が進んでいます。タイの学会会場では、日本のレーザー機器やアンチエイジング治療について熱心に質問するドクターに出会います。

彼らは伝統医療を大切にしながらも、最先端の技術を柔軟に取り入れようとする姿勢を持っている。そこに僕は、日本とタイがこれから共に築く未来の医療の姿を見ます。

◆微笑みと和の心

タイを「微笑みの国」、日本を「和の国」と呼ぶならば、二つの国を結んできたのは、常に「調和を尊ぶ心」でした。

アユタヤの戦乱を超え、近代の独立を守り、現代の経済と文化交流を育んだ両国。

その背景に流れているのは、利害を超えた「心の親近感」なのです。

学会でタイのドクターたちと意見を交わした帰り道、夕陽に照らされる仏塔を振り返りながら思いました。

ジパングは日本であった。

しかしタイもまた、別の意味で「黄金の国」であり、今も微笑みと輝きで世界を惹きつけている。

両国を結ぶ物語は、これからも「黄金の交流史」として紡がれていくに違いありません。

 


1バーツ4.64円

バンコクでは学会会場にいて気づかなかったですが、1バーツ4.64円なんて。

以前は3倍して、それよりちょっと少ないぐらいだった印象です。

ショックですね。


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