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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:大学院~医学系

交番磁界による痛み治療機器「ait」

交番磁界による痛み治療機器「ait」 を試用体験しています。

友人の会社が投資している企業による製品で、難治性の線維筋痛症などに対しても効果が認められ先月より保険診療にも適応される様になったものなのですが、以前効能の機序についてアドバイスを求められたことがあるんですよね。

MBAの後輩がこの機器の営業をしているという、思いがけない偶然も。

さて「交番磁界」とは? 耳慣れない方もいるかもしれません。

交番磁界(こうばんじかい)は、時間と共に大きさと方向が変化を繰り返す磁界のことを言います。導体に電流を流すと、その周りには流れた電流の大きさに応じた強さの磁界が生じます。導体に流す電流が交流の場合には、交流電流は時間と共にその大きさと方向が変化するので、それによってできる磁界の大きさと方向も電流と歩調を合わせて変化するのですが、このような磁界を交番磁界というのです。

機器=エネルギーデバイスを用いた医療はまだまだ可能性が無限に広がる分野です。

古くは人工心肺機器、最近ではレーザー機器など、まさに医学と工学の接点が様々な形で見いだされるわけですが、さらに近年はこうしたエネルギーデバイスがサイトカインを放出して、傷を速く治すとか痛みを取ると言った様々な生体反応を持つ事がわかって来ました。

そんな中で磁界を用いた治療器も存在感を増してきています。

磁界を用いたものーー例えば「ピップエレキバン」などは馴染みがありますよね。

ピップエレキバンに見られる効果は、専門的に言うと「永久磁石を貼ったもの」ということが言えます。永久磁石では磁界の方向は変化しませんが、こちらの機器「ait」では先に書いた「交番磁界」を使用しています。

交番磁界とはつまり磁界の方向が一方向で、ベクトル(向きと強さ)だけが周期的に変わるもの。

さらに回転磁界というより複雑な、数極以上の電極が入れ替わることで磁界の方向が時間とともに変わるものもあります。

こうした生物学的、薬理学的以外の、工学的な刺激に対する生体の反応は、レセプターを介さないために、なかなか捉えることができません。

例えば、放射線が人体に与える影響も、明確に閾値があるわけではないですよね。

しかしながら、確実に体感や効能がある事も事実。

今後は次世代シークエンサーなどを利用して、事実が明らかになってくるのでしょうね。

工学と医学の融合。今後の研究が楽しみです。


どうすればエビデンスを立証できるのか?

外来中です。

場所を見つけてFBやブログ用に写真を撮っていると患者さんやスタッフに声をかけられることもしばしば。

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今日も僕なりに精一杯頑張っています(笑)。
さて、ヘルスケア系の企業から、「エビデンスが無い」と言われてしまうので何とか立証出来ないかと相談を受ける事が多いのですが、ではエビデンスと言うのは一体なんでしょうか?
僕も理系のコンサルティングファームとして、いわゆる理系の謎解きを生業としてきました。今まで、医学、工学、薬学つまり、生物学、物理学、化学の自然科学の博士号と、経営学の社会科学の修士号を取得してきましたが、これはそれぞれの学問での立証論理方法を学ぶために必要な過程でした。
医学の世界で言うと、統計学的に有意差が出るかという点を重視する論文が多いのですが、そもそも統計学をエビデンスの立証に選択する以上は5%は無視しています。

どんなに素晴らしい薬でも、5%の人には効かない可能性があるのです。
英文論文があると根拠にしている企業も多いですが、英文論文の採択率が50%を超える雑誌も沢山あります。

つまるところ現在の英文論文なんて、単なる仮説の一つに過ぎません。
もちろん、信頼度の高い論文誌に、マルチプルな検証総論が出ているものが、最も信憑性が高いといえますが、生物学にはそもそも100%例外がないという事象はありません。
ではどうすればエビデンスを立証できるのか?
誰もが納得できるためには、結局自然科学の立証方法を利用した上で、演繹法もしくは帰納法で理論構築するしかないのです。
自分は仮定理論の上に、さらに理論武装して解を解く、演繹法が得意ですので、その手法をとる事が多いのですが、こうなると文系と理系の再統合が必要になりますよね。
今後は統計学の時代は終わり、AIを用いたビックデータの直接比較検討ができる様になりますし、さらに量子コンピューターが数年で開発されると、演算機能が飛躍的に上がり、実験もしなくて良い状況になります。
我々医師は、まさに自然科学の立証法がパラダイムシフトをおこす、その岐路にいるのです。
さらに、せっかくエビデンスを立証しても、すぐに経営的にメリットとなるとは限りません。
エンゲル係数で有名な経済学者エンゲルは、新しいものが売れるためには、「奇跡的な効果」が実感できないとビジネスにはならないと言っています。

今は企業努力により、良い製品ができているのは当たり前、良い物を作れば売れる時代は終わりました。マーケティング自体がもう古い考えとも言えるのです。
やはり、市場の既存の価値観を変える様な、新たな価値を提供する知的財産ビジネスモデルの模索が、今後企業が行うべき方向性なのでしょうね。
僕も薬学博士を取ったのち、一年半が経過しましたので、そろそろ次のアカデミックな目標を決めたいと思っています。
ハーバードでビジネスの学位を取るか、音大で指揮者の勉強をするか、知的財産立証を求めて弁理士の資格を取るか。
どうしますかね。笑。


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