DBA(Doctor of Business Administration:経営管理学博士)って、ご存じでしょうか?
僕自身がMBA(経営管理学修士)を2006年に取得して約20年。
当時は医師でMBAを取得していた者はほとんどいませんでしたが、その上位学位となります。
長年のご縁がつながって、今回、DBA博士請求論文を提出しました。
順当に行けば、2025年2月にパリでDBAの授与式に参加できることになります。(もうフライトチケットは取ってしまいましたが…)
僕も最初の大学が慶應義塾大学の経済学部ですし、経営について考えることが好きですが、自身も株式上場にかかわったり、上場企業とのコンサル契約を何社もやったりと、この20年間に培った経営経験値を考えると、MBA取得のころのビジネス知識で書いた論文は、今思うと子供みたいですよね。(笑)
MBAの学位請求論文は、「医療機関の法人形態の転換―医療機関の株式会社化を含む病院経営の強化策について―」でしたが、
DBAの学位請求論文は、以前から興味があった、AI時代の教育問題のビジネス化について
「New Frontiers in Learning: Challenges and Opportunities for Higher Education in the AI Age(学びの新たなフロンティア:AI時代の高等教育が直面する課題と可能性)」
の題目にしました。
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以前もこのブログで、ここ30年で記憶することの価値の暴落が起こったので、大学の入試をiPhoneを持ち込んでやるべきではないか?と投稿したこともあります。
僕が中学生の時代、5.25インチフロッピーディスクは、容量が1.2Mバイトの2HD(両面高密度)で、金額は2万円ぐらいしました。
現在は2万円の記憶容量の機器を買うと、2Tバイトぐらいの情報量が買えるのではないでしょうか?
同じ容量の記憶の価値は、10億分の1になったということです。
それこそテレビのクイズ番組も、iPhone持ち込みにしたら世論も大きく変わるでしょうね。
AIが進化することで、今まではAI曝露率が低いと言われていたグラフィックデザインや動画編集といったクリエイティブ分野や、分析系の職種での人間の介入が減ることが考えられます。
今の子供たちの6割は、今ない職種に就くと言われていますが、記憶ではなく、思考し議論する教育に変えてゆかないと、日本は世界からあっという間に周回遅れにされてしまいます。
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DBA取得者とMBA取得者の主な違いは以下通りですが、本質的な違いはMBAは「実務者を育成」、DBAは「創造者を育成」するのが目的といえますね。
1. 目的
MBA: 実務中心で、経営スキルやリーダーシップを向上させるための実践的なプログラム。
DBA: 理論と実務の融合を目指し、課題解決や戦略策定を科学的に研究することが目的。
2. 対象者
MBA: 若手~中堅のビジネスプロフェッショナル。
DBA: 経営者、シニアマネジメント、または経営分野の研究者志望者。
3. 学習内容
MBA: 財務、マーケティング、組織論など、実務に直結する幅広いスキルを習得。
DBA: 実務課題を研究テーマとして掘り下げ、理論的分析や新知見の創出を重視。
4. アプローチ
MBA: ケーススタディやチームプロジェクトを通じて実践力を鍛える。
DBA: 独自研究を行い、論文を執筆する。
5. キャリアの方向性
MBA: 実務の即戦力として、マネージャーやリーダーとして活躍。
DBA: 経営コンサルタント、研究者、大学講師、または企業の変革リーダー。
6. 期間
MBA: 1~2年が一般的。
DBA: 3~5年を要する場合が多い。
DBAは経営管理博士を意味する学位です。
経営学の最高学位として定められ、学術的に高度な知識を身に付けるのはもちろん、現場でのマネジメントやリーダーシップに直結する実践的・応用的なスキルを習得する職業学位と捉えることができます。
従って、企業組織のリーダーや起業家を目指す方々が多く見られます。
同じ「Doctor」という表記が含まれることから、DBAとPh.D(Doctor of Philosophy)との関わりが気になるかもしれません。
Ph.Dは、特定の研究分野の高度な研究能力を証明するもので、研究や学界でのキャリアを積みたい人が主に取得する最高学位です。
まだまだ取得者が少ないDBAは、希少価値がありますし、ビジネススクールの教授になるのに、アカデミックなPhDとプラクティカルなDBAを取得した者を条件としている国もあります。
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日本の場合、医学会でさえも博士号のない人同士が討論している場合もありますが、それは単なるワークショップであり、議論も印象戦です。僕が博士号や、海外の学会発表にこだわるのは、やはりその場が一番、エビデンスに基づいた知的好奇心を満たしてくれるからなんですよね。
博士号取得にご興味がある方は、いろいろアドバイスできますので、ぜひ、ご相談くださいね。
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New Frontiers in Learning: Challenges and Opportunities for Higher Education in the AI Age”
Abstract
This thesis explores the integration of Artificial Intelligence (AI) in higher education, focusing on the challenges, opportunities and implications for teaching, learning and institutional transformation. As AI technologies such as machine learning, natural language processing and data analytics continue to advance, they offer significant potential to revolutionize educational practices, providing personalized learning experiences, improving administrative efficiency, and supporting student success. However, the adoption of AI in higher education also presents several challenges, including technological limitations, resistance to change, ethical concerns, and disparities in access. This study uses a qualitative research approach, employing thematic analysis to examine the perspectives of higher education administrators, faculty, and students on AI integration. The findings highlight both the transformative opportunities AI offers, such as enhancing learning experiences and enabling global collaboration and the barriers institutions face, including issues of equity, data privacy and faculty training. This thesis argues that the successful integration of AI requires strategic planning, policy development and a commitment to ethical considerations. The study contributes to the ongoing discourse on AI’s role in education, offering recommendations for universities, policymakers, and AI developers to navigate the evolving landscape of higher education in the AI age.
日本語訳「学びの新たなフロンティア:AI時代の高等教育が直面する課題と可能性」
要旨
本論文では、人工知能(AI)が高等教育にもたらす影響について、課題や可能性を中心に考察します。
AI技術の進化により、個別化された学習体験の提供や管理業務の効率化、学生の学びを支援する新たな手法が生まれる一方で、技術の限界や変化への抵抗、倫理的課題、そしてアクセスの格差といった問題も浮き彫りになっています。
本研究では、高等教育機関の管理者や教員、学生たちの意見をもとに、AI導入がどのような影響を与えるのかを質的に分析しました。
調査結果からは、AIが学びを豊かにし、国際的な連携を広げる可能性がある一方で、公平性やデータの安全性、教員のスキル向上など解決すべき課題が見えてきました。
本論文は、AIを活用するためには戦略的な計画や政策づくり、そして倫理的な配慮が欠かせないことを提案しています。
未来の教育環境を築くために、大学、政策立案者、AI開発者がそれぞれの役割を果たす道筋を示す一助となることを目指しています。