最近クリニックFの備品・資料用に購入した本の中で、ちょっとお気に入りの図鑑があります。
「The Elements (元素)」という本。
この本は「世界で一番美しい元素図鑑」です。
この通り、英語版と日本語版があります。
化学の時間で習った元素について、わかりやすい写真でまとめたものなのですが、綺麗でお勧めですよ。
なぜこの本を購入したかというと、レーザーに使用する鉱石について、患者さんから質問があるからなのです。
たとえば、研究用、医療用に最も使用されるYAGレーザー。
「YAG」は固体レーザーの発振用媒質として使用する結晶ですが、YAGのアルファベットはそれぞれ
■原子番号39のイットリウム
そして、
■原子番号13のアルミニウムの
複合酸化物を
■ガーネット(ザクロ石)構造の結晶にしたもの
で、自然界に存在しない人工物質です。
つまり、YAGとは、■イットリウム、■アルミニウム、■ガーネットの頭文字をとっているわけです。
また、YAG結晶を生じさせる過程で、イットリウムを他の希土類元素で置換した数々のYAGレーザーが存在します。
イットリウムに原子番号60のネオジウムを少量ドープ(添加)したものがNd:YAG(ネオジウムヤグ)レーザー。
1064nmの波長が出せる、工学の世界で最も利用されているYAGレーザーです。
医学の世界でも、刺青治療や肝斑治療などに使いますよね。
イットリウムに原子番号67のホルミウムを少量ドープ(添加)したものがHo:YAG(ホルミウムヤグ)レーザー。
ホルミウムヤグレーザーは、外科手術のメスに使われます。
イットリウムに原子番号68のエルビウムを少量ドープ(添加)したものがEr:YAG(エルビウムヤグ)レーザー。
特にエルビウムは、光ファイバーケーブルの中で光パルスを増幅できる効果があるので、このレーザー領域には欠かせない元素。
医療用では、米国サイトン社やパロマ社が得意な波長。
フラクショナルレーザーにして、ニキビ跡治療などに使われます。
イットリウムに原子番号69のツリウムを少量ドープ(添加)したものがTm:YAG(ツリウムヤグ)レーザー。
ツリウムは、今までは最も使い道のない元素と言われてきました(笑)。
ですが、1927nmの波長を使用できるツリウムは、ニキビ跡治療のソルタメディカル社、フラクセル3DUALでは欠かせない波長となっています。
汚名挽回ですね(笑)。
そうそう、キュテラのレーザー機器、Pearl(パール)で使用するYSGGは、イットリウム、スカンジウム、ガリウムをガーネット構造にしたもの。
このYSGGにエルビウムをドープしたもの。
ネオジウムとクロムをドープしたもの。
エルビウムとクロムをドープしたもの。
の3タイプがあるのです。
ちなみにパールは、エルビウムのみをドープしたEr:YSGGです。2790nmの波長が使えます。
こちらはチタニウムのページ。
チタニウムは、硬くてまったく錆びず、アレルギー反応もなく、人工関節などの医療目的でつかわれる物質ですが、眺めていると綺麗ですよね。