桜の季節になりましたね。
日本人なら誰でもそうかもしれませんが、毎年この季節になると僕もちょっと暇ができると用事を作って桜散策に行ってしまいます。
先週水曜日に、久しぶりに東大に行きました。竜岡門から病院に入る道の桜並木がこの季節、とてもきれいに咲くのです。楽しみにしていたのですが、満開まで数日早かったのか七分咲き。
用事が早めに終わったので、全国一の桜の名所ともいえる上野恩賜公園に立ち寄って帰ることにしました。東大のちょうど裏門にあたる池之端門から出ると、徒歩1分で上野公園「不忍池」に出るのです。
上野公園の並木は中はまさに満開。人出もものすごいです。
欧米人はパッと散ってしまう桜よりは梅のように長く咲く花が好みのようですが、日本人にとって桜は特別の感情がありますよね。
僕が桜の花で思い出す小説は、梶井基次郎の
「桜の樹の下には」
です。
彼はその小説で、
「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
のだと表現しました。
桜のあまりに浮世離れしたおそらくソメイヨシノの美しさに
「不安になり憂鬱になり、空虚な気持」
になったが、その感覚を桜の木の一本一本の下にそれぞれ屍体があると想像することで、
「俺を不安がらせた神秘から自由になった」
と表現しているのです。
この世のものとは思えない桜の美しさに対して、なんという感受性と文章表現力なのでしょう。
高校生の時、初めて読んだ時に鳥肌が立ったのを今でも鮮明に思い出します。
ちなみに「桜の樹の下には」は、青空文庫で全文が紹介されています。よろしかったらご覧ください。
その類まれなる表現力に、日本人なら誰でも感銘を受けるはずです。