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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

マクスウェルの方程式とアインシュタイン

おはようございます。6月14日もクリニックFの診療日です。

木曜日に工学部レーザー研究室で大きな実験をするのですが、朝からその準備をしています。

昨年10月より工学部大学院博士課程に入学して、20年ぶりですっかり忘れていた物理の数式や微積分をさらいなおしました。

光やレーザーを含めた電磁場の性質を理解するためには、これらを簡潔な式であらわしたマクスウェルの方程式を理解しなければならないのですが、この方程式の本当の意味での素晴らしさが徐々にわかるようになってきました。

この数式が意味することは、恐ろしいほど画期的なことなのです。

マクスウェルの方程式は上の四つの式によって構成されます。

Bは磁束密度

Eは電場の強度

D は電束密度

H は磁場の強度

を示します。

①一番の上の式は、

divB=0

とも表します。

「磁場には源がない」

ということを表しています。

②二番目の式は、

「磁場の時間変化(時間tによる偏微分)があるところには電場が生じる」

という電磁誘導の式を表します。

③三番目の式は、

divD=ρ

とも表します。

「電場の源は電荷である」

ということを表します。

最後の式は、

「電場の時間変化(変位電流という)と電流で、磁場が生じている」

ということを表しています。

このマクスウェルの方程式において、真空の誘電率・透磁率から導かれる定数 c が光速度とほとんど一致することから、マクスウェルは

「光は電磁波ではないか」

という予測をし、これが後年実験的にも実証され、光が電磁波であることがわかりました。

さらにこの当時、このマクスウェルの方程式は、光の速さが定数で表わされるとした点が、

「光速度がすべての観測者に対して不変である」

という意味を持ち、それまでの物理学の世界の常識だったニュートン力学の運動法則と全く矛盾した結果を示したため、多くの物理学者の理解を得ることができませんでした。

しかし、1905年にアインシュタインが特殊相対性理論を提出したことによって、マクスウェルの方程式の方が実際には正確で、ニュートン力学の方を修正すべきだったことが明確になりました。

物理学のパラダイムシフトが起こったのです。

事実、アインシュタインが、特殊相対性理論の根本はマクスウェルの方程式にあると述べています。

アインシュタインは、質量、長さ、同時性といった概念は、観測者のいる慣性系によって異なる相対的なものであり、唯一不変なものは光速度cのみであるとしたのです。

さらにアインシュタインは相対性理論と同じ1905年に発表された光量子仮説によって光電効果の理論的な説明付けを行うなど、初期量子論の確立に多大な貢献をしました。

「波長の短い電子の波を金属に当てると、エネルギーが強いために電子が飛び出すが、波長の長い波を照射してもエネルギーが弱いので電子が飛び出さない。」

というもの。

この光電効果はレーザー光という単指向性の光を作り出せる予言となるもので、アインシュタインは有名な「相対性理論」ではなく、この「光量子仮説の理論」でノーベル賞を受賞することになります。

アインシュタインがスイスのベルンの特許局の一職員であった、この1905年に

「相対性理論」

「光量子仮説の理論」

「ブラウン運動の理論」

という三つの論文を提出したので、科学史上、この年は奇跡の年と言われているそうですが、この1905年は日露戦争の日本海海戦で、日本連合軍がバルチック艦隊を撃破して日本の歴史を大きく変えた年でもあります。

考えてみると、われわれは大学に入学するときに、理系の学生でさえ、物理はニュートンの時代の約300年前。化学は約200年前。

生物は20世紀中ごろに発見されたDNAの説明が必要なので比較的新しいとはいえ、それでも約60年前の知識を学んでいるだけなのです。

このマクスウェルの方程式は、偏微分の知識が必要なので、数Ⅲをやった人でなければ理解でないはずで、大学教養のレベルの学問になりますが、光の特性を、こんなシンプルな数式で表現してしまう人間の叡智は素晴らしいですね。

 


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