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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

糖尿病とタンパク質について

著名な女性誌から過剰なタンパク質の摂取について取材を受けました。

プロテインバーやプロテインドリンクなどが主食になっている人が多いのかもしれません。

こちらはまた別途リリースのタイミングでご案内しますが、今日はそこから少しスピンアウトして、糖尿病とタンパク質について書いておこうと思います。

糖尿病の際には、タンパク質の摂取を控えるように言われます。

糖尿病の三大合併症は、腎症、神経障害、網膜症ですが、特に糖尿病腎症のリスクがある方や、すでに発症してしまった患者さんに関しては、タンパク質の摂取制限を指導されるのが一般的です。

前のブログにも書きましたが、タンパク質は、他の三大栄養素である脂質や炭水化物と大きく違う点があるのですが、それは構成している元素です。

脂質や炭水化物はC(炭素)とH(水素)とO(酸素)の三つの元素で主に構成されているのに対して、タンパク質はアミノ基を含む構造上、CとHとOに加えてN(窒素)が必要となるのです。

CとHとOだけなら、CO2(二酸化炭素)とH2O(水)に分解できるので、呼気と尿で体外排出できるのですが、Nを身体から排出するのは少し複雑です。

タンパク質が分解されて生ずるアンモニアを、肝臓の“尿素回路”で代謝することで、体外排出できる尿素を作ることで、Nを排出するのです。

タンパク質が体内で合成されるときにはアミノ酸が使われるのですが、そのうち余分なタンパク質は尿素などの老廃物に分解され、腎臓でろ過されますので、糖尿病腎症の進行を早めてしまします。

つまり、構造上Nが多ければ多いほど、排出時に肝臓にも腎臓にも負担がかかるというわけです。

さらに、血糖コントロールができていない糖尿病患者さんの場合、インスリンがタンパク質合成のサポートを上手くできなくなり、摂取したタンパク質の栄養素を十分に活用することが難しくなるのです。

タンパク質は身体をつくるために重要な栄養素のひとつですが、糖尿病治療を開始している方の場合には、過剰摂取に注意が必要です。

過ぎたるは及ばざるがごとし。良薬口に苦し。たんぱく質の重要性もわかりますが、健康に関しては、必ず身体によい反応と悪い反応の功罪の両面がありますので、とにかく、自分の身体の反応に常に耳をすませ、バランスを重要視するのが大事ですね。

 

 

そしてもう一点、プロテインドリンクやプロテインバーが主食になってしまってはいけない理由。

それは食物繊維がとれなくなることだと思います。食物繊維は人間には消化ができないという事で、そもそもの栄養素から外されてしまった経緯がありますが、実際には、食物繊維を主食とする腸内細菌は多いのです。

人間の体内の細胞は60兆個、これに対して腸内細菌は100兆個も存在し、細胞の数だけ考えれば腸内細菌の方が多く、言ってみればその集合体が人体です。

腸内細菌フローラが人体にとって免疫防御や、必須栄養素の生成など、人間の持っている細胞では出来ない、有益な多くの役割を果たしていることは最近の研究でよくわかってきました。

腸内細菌のなかでも、善玉菌として知られるクロストリジウムが食べる食物繊維が豊富にあれば、制御性T細胞(Treg細胞)という細胞が発生してしやすくなるという研究成果もあります。

Tレグ細胞は、免疫応答を抑える機能を持ち、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー疾患などを引き起こす過剰な免疫応答を抑制することができるのです。

僕が医師免許を取ったのはもう30年近く前、免疫学で医学博士号を取ったのも20年前になってしまいましたが、その時に習っていた生理学、免疫学、さらには解剖学でさえ、現在では大きく変化しています。

脂肪細胞や、筋細胞などが、多くのメッセージ物質(ペプチド)を放出して細胞間でやりとりをしているなんて、待ったくわかっていませんでした。マクロな目で見て、まったく役割を果たしていないと思われていた盲腸(虫垂)や、脾臓を摘出するなんてことをやっていましたが、これらは免疫細胞を成熟させるうえで大きな役割を果たしていたこともわかってきましたよね。

医学はいまだに完成しておらず、研究も日々進歩している学問です。常日頃、多くの情報にふれて、アップデートしないといけませんね。

 

※図は、以前に出版した著書「ディフェンシブ栄養学」で生体を維持するのに必要な50要素をあげたときのものです。


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