この日もロシアのナノカーボン(フラーレン)学会に顔を出した後、夜はムソルグスキー記念オペラ・バレエ劇場に向かいました。
このホールは1833年に建てられた旧ミハイロフ・オペラ劇場。
ロシア芸術広場に面した場所にあります。
芸術広場の中央にあるアレクサンドル・プーシキンの記念像が見えますよね。
この広場の後ろに見える建物が2年前に訪れたロシア美術館。
この広場の右手には、いつか訪れたいと思っているショスタコーヴィチ記念フィルハーモニー・大ホールがあります。このホールはチャイコフスキー交響曲第六番「悲愴」の初演がなされたホールとして知られています。
このホールを主に活動するサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団(旧レニングラード・フィル)は、エフゲニー・ムラヴィンスキーが指揮していた時代には、世界有数の実力を誇るオーケストラと名前が知られていました。
そして、今回訪れたムソルグスキー記念オペラ・バレエ劇場が左手にあります。
この日の題目はチャイコフスキーの「眠れる森の美女」でした。
「Спящата красавица」
つまり、「The sleeping Beauty」
ロシア語ですが、何とか演題は解読(というか想像?)できます。
ムソルグスキー記念オペラ・バレエ劇場は、サンクトぺテルブルグではマリインスキー劇場と並ぶ由緒ある劇場です。
「眠れる森の美女」はちょうど二年前はマリインスキ―劇場でも観たのですが、何度でもチャンスがあれば観たい演目の1つです。
この劇場は、
天井画も
シャンデリアもこの通り、美しく見惚れてしまいました。
訪れていない劇場がヨーロッパにはまだまだ多くあり、新しい劇場には毎回新鮮な感動があります。
最近よく思うのですが、ヨーロッパの著名なシアターは、想像よりもはるかに小さいんですよね。
「日本でクラシックバレエを観たのだけれど、退屈で眠ってしまった。」
なんてご意見を聞きますが、(何を隠そう、実は僕もそうでした)日本のホールはそもそも観劇用にできていないので、ものすごく遠くで豆粒のようにダンサーが踊っているのが見えるだけですものね(苦笑)。
クラシック音楽や西洋絵画を観るのは昔から好きだったのですが、文学、絵画、舞踊、音楽と、4つの西洋芸術が結実した、世界最高級の芸術と言われるバレエやオペラを観るようになったのは、海外の小さな劇場で観てからです。
このように客席から近い劇場で、バレリーナやオペラ歌手の息遣いがわかるぐらい近くで本物のオペラやバレエを観たら、誰でも眠っている暇はなく、心が動くと思いますよ。
「眠れる森の美女」は、魔女に呪いをかけられて100年の眠りについたオーロラ姫が、デジレ王子のキスで目覚める有名なストーリーを軸にして、チャイコフスキーが美しい旋律を作曲しました。
そして、この作品を世界的に知らしめたのは、ロシア帝室バレエのバレエマスターであったマリウス・プティパの振付けと演出。
どのシーンも素晴らしいと思うのですが特に僕が好きなシーンは、第三幕。
オーロラ姫がデジレ王子と結婚式を挙げる際に、招待されたおとぎ話から出てきたお客が順番にダンスを披露するところです。
金、銀、ダイヤモンド、サファイアの4人の精のパ・ド・カトル
2匹の猫のダンス
青い鳥とフロリナ王女のパ・ド・ドゥ
赤ずきんちゃんとおおかみの踊り
シンデレラ姫とフォルチュネ王子のダンス
などなど、次々にシーンが入れ替わり観ていてとても楽しいのです。
きっと西洋の著名な劇場でこのシーンを任されたダンサーは、それこそ一年中集中して練習に励むのでしょう。
今回も素晴らしく鍛錬された肉体によってつくられたパフォーマンスには、本当に感動しました。
「眠れる森の美女」は上演時間が3時間余り。
バレエの演目にしては長いので、終わった時には夜の11時近くになっていました。
しかしながら劇場を出てみると、この通り
白夜の季節であたりは明るいのです。
劇場に入った7時ごろとあまり明るさが変わりませんね。
特にこの日は曇り空だったので、入った時と印象は変わらず。
毎度のことながら不思議な感じがしましたね。