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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

サイモン・シンの「宇宙創成」 立花隆の「宇宙からの帰還」

今回アメリカ出張に持って行った本をご紹介しますね。

サイモン・シンの「宇宙創成」 そして、立花隆の「宇宙からの帰還」でした。

どちらも宇宙を題した名著として知られている本ですが、まとまった時間に合わせて読みたかったのです。

「宇宙からの帰還」は、何人もの宇宙飛行士に取材を重ね、宇宙滞在がその後の宇宙飛行士の人格にもたらした影響を述べた、古き良き時代の立花隆の著作。

「宇宙創成」を著したサイモン・シンは、このブログでも時々紹介する、僕の好きな科学論の作者の一人。

ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号を取得し、ジュネーブの研究センターに勤務後、英テレビ局BBCに転職した経歴を持つ人です。

数多くの著作の中でも「代替医療のトリック」や、「フェルマーの最終定理」は名著ですよね。

宇宙創成は、ビッグバン(Big Bang)理論が世の中に認められるまで、どのような学者が、どのような理論を想定し、さらに実証されてきたかを、詳細にしかも解りやすく書いた本です。

この著書の冒頭にある様に、ビッグバンモデルは

「夜空に見えるものすべての起原をエレガントに説明する点で、人間の知性と精神が成し遂げた最も偉大な成果の一つ」

です。

しかも、「10代で学校で習うような物理学の知識ですべてが明確に説明納得できる」点で素晴らしい。

この宇宙には

「光よりも速いスピードで地球より遠ざかり、地球では観測できない銀河が沢山ある」

のです。

科学の発展の歴史という原点に帰れば、計測したデータを既存の新たな理論と比較することによって新しい理論が組み上げられてきましたが、この本ではコペルニクス、ガリレオ、ニュートン、アインシュタイン、フリードマン、ルメートルと言った科学者達が、いかにビッグバンモデルにたどり着いたのかを詳細に記しています。

非常に面白い本なのでお勧めしますね。

この本を読んで、科学の進化には、それを正確に観測することが出来る工学(もしくは光学)機器の技術発展が必ず必要であるということを再度認識させられました。

ガリレオは60倍もの倍率を持つ望遠鏡を作り上げたことで、木星の衛星を発見するという偉業を達成します。この発見はもし地球が動くなら、月は取り残されてしまうだろうという地動説への反論を否定するものでした。さらに金星の満ち欠けを詳細に観察し、地球と金星の距離が変化していることを示し、地動説の理論を補強しました。太陽の黒点を観察し、太陽が自転していることを突き止めたのもガリレオです。

測定機器の精度が上がると、確実だと思われていた理論に齟齬が発見される。その齟齬を正すために新たな理論が構築されてゆき、科学は進化するのです。

反対に、これから科学を研究する人間にとって、最も有利な研究対象のひとつは、新たな測定機器が開発された分野であるということですよね。

これについてはまた次の機会に述べたいと思います。

 


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