しばらく歩いた後、珈琲が無性に飲みたくなり、来た道を引き返すことにしました。
向かった先は「イノダコーヒ」。先日ブログにも書きましたが、僕の好きだった谷崎潤一郎や、池波正太郎が常連だったことでも知られる、老舗の珈琲店です。
「細雪」完結に向けて執筆の最中、やってきた谷崎潤一郎はどんな時間を店で過ごしていたのでしょうか。
若い頃からの神経症に始まり、高血圧、右手麻痺、狭心症、最後は腎不全と心不全の併発で亡くなった彼ですが、この店の甘くてミルクたっぷりの珈琲は、病を患っていても止められないほど旨かったのでしょうか。
イノダコーヒは、本店含め京都市内に何店舗かあると聞いています。
僕が好きなのは、三条支店。珈琲を店で飲む場合、味はもちろん大事ですが、空間の占める要素も大きいと思っています。店が広すぎても狭すぎても落ち着かないし、人が沢山いても逆に少なすぎても落ち着かない。豪奢すぎても質素すぎてもダメ。そうであれば、家や宿に帰って飲む方がよっぽどいいのです。
そういう意味で、この支店の奥にあるテラスに面した円形のカウンターが、僕はほどよく落ち着くんですよね。
ちなみに僕はミルクも砂糖も入れない「ブラック」にしてもらいました。
今回初めて知ったのですが、聞けばこの三条店が出来たのは1970年のことなのだとか。
いつにも増して美味い珈琲を頂きました。