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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」

1495年から1497年にかけて描かれた「最後の晩餐」は、当時主流であったフレスコ画の画法でなく、テンペラ画の画法で描かれています。

テンペラ画法は、絵具が乾けばすぐに塗り重ねる事ができて、修正がしやすいので描き手にとっては有利な反面、当然傷みやすい。

この作品は、レオナルド・ダ・ヴィンチ生存中からすでに彼の作品の中で最も優れたものに違いないと評判でした。

けれど作成から20年も経たない内に早くも劣化を始めたと当時の記録にあるそうです。

これまでも、この絵に対し修繕作業は大きなもので5回も行われているそうです。1977年から1999年には、大規模な洗浄修復作業が行われました。

そう、絵画「最後の晩餐」を見るのに事前予約が必要なのも、すべてはこの「痛みやすさ」に由来しているのです。

絵の保存状態を保つため、という理由で会場は入場制限がかけられています。

「室内の二酸化炭素を減らすために」

という理由で、1回1組最大25人、15分の入替制で絵を公開しているのです。

それならば、単に換気をすれば良いのでは?とも思いましたが、まあ、それはさておき(笑)。

1時間に100人。これが長い日だと1日9時間公開されますので、1日900人がこの絵を見ることができる、ということになります。

その限られた枠に対して世界中から観光客が来るわけですから、当然プレミアムもつきますし、最低でも予約が必要というわけですね。

世界的ベストセラーになったダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」によってこの「最後の晩餐」は知名度がさらに上がり、世界中から人が殺到する状態に。

実際会場に入るときは、こんな自動扉の前で、カメラ付きで監視されながらグループで順番を待ちます。

最後の晩餐、本物を前にすると、近くから見るときと、遠くから見るときとでは、印象ががらっと変わるのです。

近くから見るときはそれぞれの人物の細かい描写が気になりますが、遠くから見ると、視点が変わるんですよ。

遠近法により、絵に描かれたすべての直線がイエスの頭部に集約し、

「この中に一人、私を裏切るものがいる。」

とイエスが発言したその瞬間に、描かれているすべての人物の意識がイエスに向かった

その瞬間のシーンが、まるでその場にいたかのようにわかるのです。

考えてみれば、横一直線に並ぶテーブルで食事をするのは不自然ですし、この構図も含めてすべてダ・ヴィンチがその頭脳で構築していったということになりますよね。

僕は、正直ダ・ヴィンチの作品の中では最後の晩餐よりも好きなものが個人的にはありますし、日本から現地の何倍もの価格でチケットを購入してしまっている人がいることを見聞きしたり、入場制限の意味についてなど、科学者としても一個人としてもこの仕組みには首を傾げたくなる部分もあるのですが(笑)、この構図については実際に見て

うーん、すごい

と感動しましたよ。

 


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