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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

創傷治癒におけるサイトカイン、ケモカイン、グロースファクターについて

おはようございます。

今日7月4日もクリニックFの診療日です。

今日届いた郵便物に、ヨーロッパ皮膚科学会(EADV)の学会誌が入っていました。

毎月ヨーロッパからクリニックFに送られる学会誌の一つ。

今回興味深いと思った記事は、創傷治癒におけるサイトカイン、ケモカイン、グロースファクターについての記事です。

僕が医師免許を取るために勉強したのはもう20年近く前ですので、それ以降、傷がどのように治るのかというメカニズムの理論が、マクロでもミクロでも大きく変化しました。

マクロの変化では、傷の湿潤療法が一般化しつつある点が挙げられますね。

僕が研修医だったころは、手術傷を消毒剤を使って毎朝消毒するのが朝一番の仕事でした。

しかしながら、この消毒剤が傷が治るのに必要な細胞も殺してしまっていたことがわかってきました。

今では傷は水で洗い流し、汚れを排除した後は、ワセリンを塗った後に創傷被覆材(専用のものもありますが時にはサランラップなど)を使って密封してしまった方が痛みもなく、綺麗に治ることがわかってきました。

最初は、研修医の時から慣れ親しんできた方法を変えるのは勇気が必要でしたが、とても大きな変化でしたよね。

反対にこの記事は創傷治癒におけるミクロの話。

傷が治る過程は、

出血凝固期 → 炎症期 → 増殖(肉芽)期 → 再構築期

と大きく分けることができますが、この間に、サイトカイン、ケモカイン、グロースファクターなどの多くの物質が関わります。

この記事は、創傷内部の各種細胞の遊走、増殖、細胞外マトリックスの形成、血管新生、再構築などに関わる細胞増殖因子およびネットワーク、いわゆる「ミクロ」の創傷治癒についての最新情報を解説したものでした。

創傷治癒は、特にフラクショナルレーザー機器においては治療過程に大きく影響してきます。

ほんの数年前の教科書を見ても全く違った話が書いてある時がありますので、時々こうした最新情報のレジュメを読めるとありがたいのですよね。

ちょっとご紹介すると、こちら急性のヒーリングプロセス。

創面の低酸素状態によって発生した酸化物質(ROS)を抑制するために線維芽細胞からFGF-7が誘導され、Peroxiredoxin-6とNrf2(NF-E2関連因子)を活性化し、組織の抗酸化を抑えることで病理学的な急性炎症期はスタートします。

さらに線維芽細胞から生成されたFGF-2,7,10などのが伝達物質となって組織内での血管新生と再上皮化に関わるのです。

対してこちらは慢性のヒーリングプロセスです。

主役を演じるのは、線維芽細胞、マクロファージ、血管内皮細胞、け拉致のサイトなどから放出されるインターロイキン6(IL-6)です。

IL-6は、複雑なカスケードで創傷治癒に関わってゆきます。傷の治り方一つとっても生命の神秘を感じますよ。

特にグロースファクターについては、いくつかの因子との新たな相関関係が発見される場合も多いので、効果があるだろうからと言って、副作用を考えずに安易に注入してしまうのは熟慮しないといけませんね。

 

 


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