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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:経営学

最高の医者とは

今日は表参道で皮膚科・形成外科の開業医に向けたセミナーがありました。僕は講師の一人として呼んで頂き、自分の専門のレーザーとはすこし違った「メソセラピー」という学問の話をしてきたのですが、自分の出番がないときは他のドクターのお話を聞くことができてとても有意義な一日を過ごすことができました。中でも最後の演者 駒澤大学大学院 経営学研究科の山田勝教授のお話には非常に感銘を受けました。

山田先生がおっしゃったことの中でも特に心に残ったお話があります。それは、

「患者さんは世界一のお医者さんに診てもらいたいわけではない。自分のことを一番良く知るドクター、そして自分が一番良く知るドクターに診てもらいたいのです。」

という言葉です。

我々医師は、とかく医学と言う学問や、医療技術をとことん追求してしまうものです。つまりその分野を追求することが自分にとっても患者さんにとっても一番のことである、という「幻想」があり、世界一「優秀な」医者になることが立派なことである、と思いがちです。優秀な医師であることが患者さんにとって一番のメリットだと考えてしまうのです。

医療従事者にとっての「医療」の定義は、「患者さんに対する最新医療技術の応用」と言うことになるのだと思います。

でも、一人ひとりの患者さんにとっては、優秀であることが必ずしもその患者さんにとって最高の医師ではない、全く違うことがあるのだということを山田先生はおっしゃったわけです。もっと、人的な、感情のつながりや信頼関係を大切に考えて、この人だったら任せられるといったところから医師の選択が、そして診療がスタートするのである、と。

僕はこの話を聞いて、最近こういった人的なつながりがないがしろにされてしまうところから、医療に対する不信感が生まれてしまったのだろうなぁ・・・と思いました。

クリニックFのコンセプトは、アカデミズムに基いた、美容皮膚科領域における「最高のホスピタリティの提供」です。医療現場におけるホスピタリティとは突き詰めて考えると、豪奢な設備でもなければ、かしこまりすぎた接客でもないと僕自身は思っています。一歩足を踏み入れた瞬間「ウェルカム」という空気が流れ、適度にリラックスでき、親しみの湧くような誂(あつら)えがある。顧客の方一人ひとりのニーズに対して、適切な情報に基き最も合致した、世界最新施術を出来ること。山田先生のお話を聞いて、この軸をぶらさず、人とのつながりを大切にしながら、自分自身の専門であるレーザーという分野を追求していきたいと決意を新たにしました。


医者が苦手なお金の話

たしかに、お医者さんは経営が苦手です。事業計画書やキャッシュフローを作るなんてもってのほか。これは医学の世界にどっぷり漬かった人であればそういう人であるほど、そういった傾向があります。最近立て続けに友人の医者から、独立したいので経営を見てくれないかという依頼が来ました。

知的好奇心を満たすということは、人間の本能だと思いますが、人間の好奇心は最終的には宇宙か、自然か、人体に向かうものではないかと思っています。好奇心の旺盛な人間にとっては、医学の勉強は学生のときに寝ずに教科書を読んでしまったりするほど、本当に面白いのです。なぜ風邪を引くの?とか、どうやって骨折の骨が治ってゆくのか?どうして人は老化するのか?

そういった答を見つけるためのヒントが教科書に書いてあります。こういった疑問を答えるために、いわば医学の共通言語を学び、将来の研究に役立てるのが医学の道です。

でも、すばらしい医療技術を持っている人が、経営が上手いとは限りません。保険診療費が今年も下がり、7割の病院や診療所が赤字であるという現状で、落ち着いて仕事に打ち込める状態を作るのは、非常に難しいことだと思います。病院の維持さえ難しいのですから。

現在の保険診療のクリニックを救う1つのアイテムが、自費診療で行える、アンチエイジング医療だと思っています。この医療が学問になり、さらに市場になるのは少し時間がかかるかもしれませんが、本物の医療としての確立を目指して、我々医者が日々努力しなければならないモノだと思います。


第7回トータルアンチエイジングセミナー NO,1

第7回トータルアンチエイジングセミナーが新宿の京王プラザホテルで行われました。この学会は日本で最も大きなレーザー輸入業者であるJMECの主催で毎年行われるものです。昨年の8月に行われた、第六回トータルアンチエイジングセミナーに引き続き、今年も招待講演を依頼されました。毎年行われるこのセミナーで僕は今年が四回目の招待講演になります。こういったチャンスを与えて頂いていることは、大変ありがたいことだと思います。

今年は、会場には350名の医者が集まったそうで、毎年の成長に驚くとともに、アンチエイジング医療への関心の深さに驚きます。会場の後から見ると、実は大きなスライドがこんなに小さく見えます。

今年のこのセミナーで面白いと思ったのは、三部構成からなるこの学会の真ん中に、「クリニックマネジメントの実際」という部が新設されたことです。駒澤大学大学院経営学研究科の山田勝教授が座長をされました。

今までこうした学会で、クリニックマネジメントについての講演の場があったことはありませんでした。数日前のブログにも書きましたが、ちょっと前には、医療の分野では、「金儲け」を連想させてしまうために、「経営」という言葉を使うことは考えられませんでした。しかしながら、今の医療機関には、CTやMRI、SPECTに多種多様にわたるレーザー機器といった数千万から数億の高額機器を導入しなければ、最先端の医療技術を患者さんに提供できなくなりました。医療の世界でも、経営の重要性が増してきたといえるのです。

僕はこの部で発表した5人の先生の最後に「戦略的アンチエイジング医療経営」の講演をしたのです。

僕は今まで、4つのクリニックの開設と経営に関わってきました。経営に関わるうちに、経営学をきちんと学ばなくてはと思い、経営大学院に行ったのですが、ここで得た経営学の知識は貴重でした。

医学も科学ですが、経営も科学なのです。

現在、Anti Aging Doctors 株式会社という会社の”医師免許を持った医療経営コンサルタント”業をやっているわけですが、そうした活動の場を与えてもらっているもの、経営学を学んだ実績のおかげです。

そのままを医療の分野に適応するわけにはいきませんが、経営学の知識を持ったことにより、多くの経営分析の道具を持ったことは重要な体験でした。

何よもためになったのは、コーポレートファイナンスの知識です。純資産法やDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法などの計算法により、クリニックの現在価値を把握することが出来るのです。経営をする上では、クリニックの現在価値を上げてゆく努力をしていく作業が極めて大切なのです。

ですから、今回の講演では、MBAホルダーとして、経営学という学問が、どんな経営ツールを学ぶのか、限られた時間の中で、説明してみました。経営戦略の部分では、マイケルポーターの3つの基本戦略について述べました。

差別化戦略 (立地、豊富なレーザの種類と知識、ホスピタリティで競争相手よりも優位に立つ)

コスト・リーダーシップ戦略 (業界全体の広い市場をターゲットにどこよりも安いコストで評判をとり、競争に勝つ)

集中戦略 (特定市場に的を絞り、ヒト、モノ、カネなどの資源を集中的に投入して競争優位に立つ)

この基本戦略にそって、経営をしてゆくことは大切ですが、中でもコストリーダーシップ戦略については、”価格破壊”をしてはいけないと主張したつもりです。価格破壊をスローガンにした流通業界がどのような結末をおくったかは記憶に新しいですが、今私達はアンチエイジングというブルーオーションの新たな市場を作り上げているところなのです。この分野できちんとしたレベルの医療が提供できるまで、価格破壊をしてはいけないと思います。確かな市場が作られる前に、市場が崩壊してしまうこととなり、最終的に消費者である患者さんに、新しいサービスが提供できなくなります。


第7回トータルアンチエイジングセミナー NO,2

そして、次にはマーケティングの話しをしました。

何かが満たされない状態を Needs といい
それを満たす特定のものを Wants というわけですが、
マーケティングとは、Wantsを満たす活動なのです。

古きよき時代は、いわば「作れば売れる」時代でしたので、「作ったものを売る」ことに専念すればよかったのですが、

現在は、どの様な産業にも競争激化、売上げ減少、成長鈍化が起こっています。こういった市場の中では、”マーケティング”が必要だというわけです。

この次のスライドでは、フィリップコトラーの著作から、マーケティングの基本的概念の説明をしました。つまり、環境の分析からセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、マーケティングミックスのいわば定石の説明です。これも普通の医師にはなじみのうすいものなのです。

次の論点は、保険と自費の両立です。

保険診療はいわば、エコノミークラス。美容やアンチエイジング診療と行う自費診療はビジネスクラスの対応が必要なのです。

ビジネスクラスでは、

保険よりも 1ランク上のおもてなしムードで
待合スペースを分けてそちらへ通す
お待たせしない (スタッフがつなぐ)
レーザーや光治療だけでなく、スキンケア・プログラムを施術に加える
(枠いっぱい時間を使う)
先生やスタッフが出来るだけ話をする
携帯にメールを送る
常にビジネスクラスの笑顔で

の対応が必要です。

そして、ビジネスクラスのサービスを提供するためには、Treatment と Hospitalityを学ぶことが必要となります。これは、我々がレストランや、美容院を選ぶときと全く同じだと思います。

最新治療技術を学ぶために

学会、セミナー、教科書
メーカーの臨床担当者
大学等の教育機関
お知り合いの先生

ホスピタリティを学ぶために

教科書
お知り合いのクリニック見学
レストランやホテル
コンサル会社のセミナー

などを使うのがよいと思います。

集客のノウハウについては、WEB戦略とBLOG戦略について話しました。

美容皮膚科の分野では、デザイン性や院内の設備、そのクリニック及び院長の哲学、イメージ・・・というものが重視される。

ネット全盛の時代にあっても、美容皮膚科の場合は雑誌やTVでの露出に人気が左右される場合も依然多い。 雑誌やTVでそのクリニックを知った患者さん、あるいはそのクリニックは知らなくともレーザー機器や有効な施術法を知った患者さんが、そのキーワードを元に検索をかける。

いわば美容皮膚科の場合、WEBがまずありきではなく、口コミやマスメディアによる情報がまず先にあって、そこからWEBに検索をかける方が多いのです。

もう1つ、アカウンティングの話しをしました。

クリニックを経営するためには、外部報告向けの正確な実績を示すための財務会計(賃貸対照表 (B/S) 損益計算書 (P/L))と、将来の経営活動に活かす内部活用向けの管理会計(財務分析 損益分岐点分析 予算管理)があるわけです。

財務会計は、会計士さんや、税理士さんがやってくれますが、実は本当に大切なのは管理会計なのです。

そして、管理会計を把握するのに最も大切なのは、キャッシュフロー計算書です。

フリーキャッシュフロー=営業利益×(1-法人税率) + 減価償却費

と表わすことが出来ますが、フリーキャッシュフローは実物資産の増減に主観性が入る余地がなく、BS、PLと違って利益操作できないのです。

クレジットカードの売掛けや、保険診療の入金が遅れることを考慮する。さらに、減価償却費は、二年目以降の見えない利益であることが、意外と経営の基本であるのに関わらず、忘れられていることなのです。

新しい事業を始めるときに、こうしたフリーキャッシュフローをエクセルで数年分、計算してみればいいのです。紙の上ではいくらでも失敗してよいのですから。

ともあれ、今年のトータルアンチエイジングセミナーは、一味違ったよいものを提供できたのではないでしょうか。


クリニック経営のWEB戦略

このブログやクリニックのホームページを見て下さる方が最近多くなってきたようで、お問い合わせを良く頂くようになりました。

自分の今まで書いた論文や、講演内容、ブログなどを一箇所に集めたほうが見やすいのでは? というご意見も頂いて、では、プライベートホームページを作ってみようかと思い付き、久しぶりにホームページ作成ソフトを買ってみました。

僕はもう1981年に販売された、PC8801という国産のパソコン(当時はマイコンと言っていましたが)を親父が仕事用に買ってからのPCユーザーでした。あの頃はBASICという言語を使ったり、マシン語を覚えてみたり、マイクロソフトのウインドウズの原型のMS-DOSというOSを使っていたことを思い出します。

その昔ホームページを初めて作ったときは、ワードを使ってHTMLをべた打ちするしか方法を知らなかったのですが、今回ホームページビルダーVOL10を購入してみると、フラッシュ(動画)は作れるし、画像は多く含まれているし、この世界は本当に進化著しいですね。

ところで、よく混合される「美容整形外科」と「美容皮膚科」では、WEB戦略が微妙に異なることをご存知ですか?

なぜ違うのか? と言えば、単純に客層が違うのです。

美容整形外科というのは、患者さんが人知れず自分の容姿についてずっと悩んでいる場合が多いのです。家族や友達にも相談できず、インターネットで検索するしかない患者さんにとって、各医院のHPは手術内容や金額、その効果が詳しく書かれていればいるほど良い、とされます。そして、予約もすべてHPから申し込みが出来、問い合わせもすべてメール対応で、受付や医師など現場スタッフとの会話によるコミュニケーションを必要最低限に留めたい患者さんが多いのです。HPに求められるものが、デザイン性や院内の設備といった視覚的情報やエンタテイメント性よりも、堅実な文字情報によるメニュー内容とアクセスの簡易性であるということですね。

反対に美容皮膚科の場合は、デザイン性や院内の設備、そのクリニック及び院長の哲学、イメージ・・・というものが重視されます。ネット全盛の時代にあっても、美容皮膚科の場合は雑誌やTVでの露出に人気が左右される場合も依然多く、WEB検索の仕方もちょっと違うのですね。

また、美容皮膚科の場合一番の集客は口コミです。「あのクリニックに行ったら肌のシミが全部取れてよかったわよ」「あの人もあそこに通ってるんだって」「あのクリニックではスタッフが親切」・・・など、美容皮膚科は美容整形外科と違って、友人知人で情報交換をしあう患者さんが多く、口コミに勝るPRはありません。

雑誌やTVでそのクリニックを知った患者さん、あるいはそのクリニックは知らなくともレーザー機器や有効な施術法を知った患者さんが、そのキーワードを元に検索をかけます。いわば美容皮膚科の場合、WEBがまずありきではなく、口コミやマスメディアによる情報がまず先にあって、そこからWEBに検索をかける方が多いのです。

こうしたことを踏まえた上でHPを作成していくわけですが、新しいクリニックでは従来の美容皮膚科におけるHP作成テクニックに、美容整形外科的HPテクニックと、もうひとつ別のテクニックを合わせて構築しています。ブログも実は自分なりにいろいろ日々試行錯誤しているのです。

HPやブログを見てくださる方が増えるのは、こうした地道な苦労(?)が報われているようで嬉しいですね(笑)。


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