TakahiroFujimoto.com

HOME MAIL
HOME PROFILE BOOKS MUSIC PAPERS CONFERENCES BLOG MAIL CLOSE

BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:ニキビ跡

韓国第2位のレーザーメーカージェイシス社訪問

金浦空港についてから、3時間余りをかけて車でやってきたのは、韓国第2位のレーザーメーカーであるJeisys社。

会社に着いたのは午後8時過ぎでした。

ジェイシス社は2000年に韓国で設立されたレーザー会社です。

同じ頃に設立され、QスイッチヤグレーザーのSPECTRA VRM(マックスピール)を主力商品にして株式上場路線を取ったルートロニック社に次ぐ、韓国第2位のレーザー/光治療器の売り上げを誇る会社。

会社立ち上げ時にルートロニック社がレーザーを主体に製品のラインアップを作り上げたのに対して、ジェイシス社はIPL(光治療器)を主力として市場に投入しました。二つの会社は高い技術開発力を基にしていますが、興味深いことにジェイシス社は逆に非上場主義を貫き、社長も表に出ないという、ルートロニックと正反対の社風を持つ会社です。ジェイシス社の社長の顔を知るユーザー医師は韓国でも少ないのです。面白いですね。

このジェイシス社は、フラクショナルRF機器のイントラセルという独特の技術を持った機器を開発したので、こちらの最新版を見学に行ってきました。

これは工場の中にあったアップグレードを控えている最新機器。特別に見せていただきました。もちろん本邦初公開。

イントラセルについては以前のブログでもご紹介しましたが、この機器は7段階の出力レベルと4段階の針の深さを調節することで、皮下に熱刺激を与えるフラクショナルRF機器。

先行してクリニックFでも導入しているシネロン社のe-matrix(e2)と同じような効果を、実際にマイクロニードルを使用することで行っています。

絶縁針をさすことに対して抵抗はありますが、確かに肌の深いところに針を刺し、その部位で熱刺激を出せば、最も熱に弱い表皮に対して熱を加えにくいのは理にかなっています。

さらに、治療器にレーザーを使用すると肌の色(メラニンの量)に対してパラメーター調整をしなければならないので、色の黒い肌を持つ患者さんに対して、強い出力の治療が難しかった。

しかし、この機種はRFを使用することでこの問題を解決しています。つまり日に焼けた男性のニキビ痕など、今までの機器で治療しにくかった部位が治療が可能になります。

ただし、前からこのブログでも触れているように、特にレーザー機器治療の場合、同じ機械があるからといって、同じ治療が出来るとは思わない方が良いと思います。レーザー治療器は所詮道具の1つですから、要は使い方の工夫がいかになされているかです。

もしかしたらこちらも本邦初公開のカン・ドンファン社長。年齢を聞いたらまだ38歳なのだそうです。技術者然とした雰囲気は好感が持てましたよ。

ちなみに僕たちの間にある機器は、ジェイシスの発表する新しいフラクショナルCO2レーザーです。クリニックFでもテストを頼まれましたので、使ってみようと思います。

カン社長とさまざまなディスカッションをしましたが、技術開発力はありそうですね。

こちらも新たに開発しているファイバー式のレーザーメス。

このほか、写真を撮れないと言われた技術や商品もいくつかありました。

年末に向けて新たな機器を販売する予定なのだそうですよ。


「ニキビ跡の治療法は、もはや完成した」

アメリカ・サンディエゴで開催されたレーザー皮膚科専門医の年に一度の“同窓会”コントロバーシーズ&コンバセーションズ。学会開催期間中、演題の1つの柱となったのは、2007年の技術ではありますが、アブレイティブ・フラクショナルレーザー治療法でした。

アブレイティブな波長としてまず挙げられるのは、CO2の10600nmの波長です。ただ、同じCO2の波長でつくられたフラクショナルレーザー機器でも

「この機器とあの機器が同じ波長の機械とは・・・!!」

・・・と時に驚いてしまうほど、世界各国数十社からリリースされている同一波長の機器は、その性能が機器によって全然違うのです。

まあ、カメラや車、パソコンなどを考えても性能にピンキリありますので、技術の差があるのは良く理解できますが、それでも通常の炭酸ガスレーザーに、光軸を移動させるスキャナ機能をつけただけで

「我が社でもフラクショナルレーザーを開発した」

・・・と主張する会社もあったりするので、“フラクショナルレーザー”と一言でいっても色々ある、というのは覚えておいて欲しいですね。

米国レーザー学会専門医として僕がコメントするならば、特にアブレイティブなCO2レーザー機器で性能に違いが出るのは、

○レーザー機器のパワーユニット(ワットで換算されるもの)の出力

○レーザーのビームの集光度

に集約されると思います。

この二点にこだわり完成度を高めるには高度な技術が必要となります。

数あるフラクショナルレーザーの中でこの二点において優れた機種を具体的に挙げると、日本でまだ手に入りませんが、ソルタメディカル社の「フラクセル:リペア」がこの分野の機種の中で頭ひとつリードしていて、その後にクリニックFでも採用しているルートロニック社の「eCO2」や、ルミナス社の「アンコア」が続くといった感じでしょうか。

ただし、「フラクセル:リペア」を購入するためには「eCO2」と「アンコア」を合わせたぐらいの金額が必要というのが、玉にキズですね。高い技術をどの企業や研究所よりも先に開発するのにコストがかかるのは良く理解できますが、今回のフラクセル:リペアの治療効果にその価格差ほどの差異が果たしてあるのか・・・? これを考えると悩ましい、というのが僕の本音です。

さて、学会に話を戻しますと

今回学会期間中に話題になったのが、CO2フラクショナルレーザー機器をメインで使用することで

「ニキビ跡の治療法は、もはや完成した」

と発言する医師が増えてきたこと。

上記の3機種や、よりダウンタイムが短く、より進化したフラクショナル機器の「フラクセル3DUAL」や「e-matrix(e2)」がこの発言の根拠となる機器として挙げられます。

日本国内にもほとんどの機種はリリースされていますので、きちんとしたニキビ痕の分類に分けた診断が出来る医師で、レーザーのパラメータ設定も出来るドクターであれば、ニキビ痕の治療は国内でも可能になった、といえますね。

次のフラクショナルレーザー機器による治療目標は、ニキビ痕よりも深い疾患である肉割れや妊娠線の治療となるでしょう。

近日中にそうした機器が開発されると良いのですが、今回のコントロバーシーズではまだ発表はありませんでした。

ちなみに、僕は毎年3月の米国皮膚科学会AADから8月のコントロバーシーズにかけて、学会を渡り歩き(笑)9月にその年に購入するレーザーを決定するのですが、現段階では、今年発表された中にクリニックFで購入すべきレーザーは無かった、というのが結論です。

数年前にデビューしたレーザーの中からクリニックFに購入するべきものをピックアップすると

個人輸入で国内に導入されていない「フラクセル:リペア」を購入するか、超音波リフティング機器の「ウルセラ」にいくか。

クリニックFは開院当初から、話題になったフラクショナル・レーザー機器をほぼ全て購入し、肌の入れ換えとニキビ跡、毛穴治療についての差別化と専門性を高めてきたクリニックです。

その方向性がぶれないためにも、ここは高額ではありますが、治療の幅を大きく広げるために、「フラクセル:リペア」の購入に踏み切ろうかなと、今は考えています。

「もう新しい機械を置く場所がありません!」

と、スタッフから猛反対に合いそうですが・・・(苦笑)。


e2  (e-matrix) によるにきび跡治療の将来性

ブリッジセラピーやeCO2(エコツー)といったフラクショナルレーザー機器を超える、毛穴やにきび痕の治療器として、イスラエルシネロン社で開発されてきた

サブレイティブRF機器 e-matrix

を昨年9月よりクリニックFでもテスト使用してきましたが、いよいよこの機器の米国での正式デビューが決まったようです。

この機種はフロリダのAAD2010でも話題になっていましたよ。

名前も心機一転して「 e2 (イーツー) 」に決定されたようです。

“マトリックス”という名前は、この機器の機能からすれば納得できるのですが、同じくシネロン社のレーザーの照射方法の名前であるトリニティを行うときに使用する、マトリックスIRと名前が似ていて混乱してしまうので、これですっきりしましたよ。

そういえば、e2の名前は、英国の伝説のロックバンドU2から取ったんだとシネロン社のワールド・マーケティングスタッフが言っていましたが、効果のありそうないい名前をつけたと思います。

e2は、今までのフラクショナルレーザーで効果の出にくかったボックスカー型のにきび跡や、こめかみの浅いにきび跡などには、より効果的だと思います。

すでに、クリニックFでもファンの多いe2。また随時ご報告していきますね。


ニキビ跡治療についてのご質問にお答えします

コメント欄にニキビ跡治療についてのご質問を頂きました。お答えは書かせていただきましたが、同じようなことでお悩みの方もおいでになるかと思いますので、ここでも公開しておきますね。

Q ニキビ痕についてなんですが、エコツーだけより、他の機器との併用がいいんでしょうか?

いろんなクリニックのホームページをみてるとエコツーかブリッジセラピーのどちらかしかないかのように感じます。

先生のブログを読んで、それぞれのレーザーに得意不得意があるのはわかりました。

エコツーにも不得意分野はあるんでしょうか?

A エコツーとブリッジセラピーはほぼ同じコンセプトのもと作られた機器です。

ですからできる事も、不得意な事もほぼ同じだと思っていいですよ。

これらの2機種はたまたま日本に導入されているだけの話で日本語のサイトでは話題に上がるのでしょうが、実は海外ですとニキビ肌についてはもっと評価の高い機器は沢山あります。

ちなみにエコツーやブリッジセラピーが苦手とされるアイスピック型のニキビ肌や、こめかみのニキビ痕だと、国内ではクリニックFにのみ導入されているイーマトリックス(e-matrix)は非常に有効だと発表されています。

e-matrixは、鼻の毛穴には照射できないのが弱点ですが、クリニックFでの照射後の患者さんに評判も極めて良くて、来年に向けてニキビ肌の主力の機種になるのは明らかです。

また、フラクセル:リペアという、国内に導入されていないCO2フラクショナルレーザーは、エコツーやブリッジセラピーが手本にした、上位機種です。これは機器の価格が非常に高いのもあり、国内には導入がありません。

現状のフラクセル:リストア(フラクセル2)の後継機種なるフラクセル:リストアデュアル(フラクセル3)も海外では販売されていて、ニキビ痕や、色素沈着には非常に効果を上げています。クリニックFでは来年販売されるこの機種のデモ機が導入されていますが、効果は非常に期待できますね。

Q 返信ありがとうございます。

もっとほかに効果の高い機種があるのに、日本に入ってこないのは、日本人の肌質の問題でしょうか?

A 肌質の問題ではないと思います。アジア人で似た肌を持つ、韓国や台湾には導入されているものも多いですから。

単に採算ベースの問題で国内の輸入代理店が手を出せないのだと想像します。一定数以上のレーザーを輸入しないと、利益は出ないでしょうから難しいのでしょう。

残念ですが、日本はレーザー治療に関しては、あまり先進国とは言えないのです。

僕が毎月のように海外の学会に出張して勉強するのは、そういった理由もあるのです。


Classification of Acne Scar

このところ、ニキビ跡(痕)を治療するレーザーについての質問が多くなってきました。

「ニキビ跡」とひと言で言っても、その状態は千差万別で、状態によって適応されるレーザーも異なってくるのです。

そのため、実際お会いしてその状態を見せて頂かないと、どういった治療法を選択するかはお答えがしづらく、メールやお電話での質問だと正確なお答えが出せないという現状があります。

ニキビ跡の大まかな分類について、少し難しくなりますが、今日は一度まとめておこうと思います。

ニキビ跡とは、ひと言でわかりやすく言うと、ニキビの炎症が治まった後に残ってしまう皮膚の変形と変色のことです。

まず大きくは、肥厚(ひこう)性のものと、萎縮(いしゅく)性のニキビ跡に分かれます。

そのうち萎縮性のニキビ跡を形態的に4種類(ヨーロッパでは3種類)に分類するのが一般的です。

それらは

①Rolling ローリング型

②Ice-pick アイスピック型

③Shallow box-car 浅いボックスカー型

④Deep box-car Type 深いボックスカー型

と、呼ばれています。

①ローリング型とは、丘のようにうねって平らな部位が少ないニキビ跡(Rolling scars are gently undulating, appearing like hills and valleys without sharp borders.)のことを指し

②アイスピック型とは、表面が広く深くなるに従って細くなる円錐状のニキビ跡(Ice-pick scars, also known as pitted scars, appear as round, deep depressions culminating in a pinpoint base; in cross-section, they are shaped like a “v”.)

③浅いボックスカー(箱形の車)型(Box-car scars have a flat, “u-shaped” base. Broader than ice-pick scars, they are round, polygonal, or linear at the skin surface)と、

④深いボックスカー型(Shallow box-car scars terminate in the shallow-to mid-dermis, and deep box-car scars penetrate to the reticular dermis.)

ヨーロピアン・アクネ・グループ(The European acne group (ECCA) )では、

◎ローリング型を「W-shaped」

◎アイスピック型を「V-Shaped 」

◎ボックスカー型を「U-shaped」

と分類しています。

感性があっていいですよね。

それぞれどのレーザー機器を使用するかということになりますが、肌の「基礎工事」が終わっている、と仮定した場合、2010年現在の、クリニックFのレーザー選択では

■ローリング型なら「パール」+「フラクセル リストアデュアル」

■アイスピック型なら「エコツー」or「eMATRIX」+「フラクセル リストアデュアル」

■浅いボックスカー型なら「アファームマルチプレックス」+「フラクセル リストアデュアル」

■深いボックスカー型なら「eMATRIX」+「エコツー」

・・・といった選択になります。

しかしながら難しいのは、通常の人のニキビ肌にはここに紹介した4種の型が何種類か、または場合によってはすべて、混在している場合がほとんどなのです。顔の部位によっても、ニキビ跡の状態は異なります。

そのため、クリニックFでは部位と状態に応じて、数段階に分けてスケジュールを立て、数種類のフラクショナルレーザー/治療方法を組み合わせて、ニキビ跡を治療していきます。


カテゴリー