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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:シミ

ルミナス社M22~射手座の中に見える星団の名がついたレーザー

ルミナス社M22のセミナーに参加してきました。

連休中にもかかわらず、立ち見が出るほど満席。

復活された松井潔先生ともお会いできました。

演者の川添剛先生は、ルミナス社フォトフェイシャルのスピーカーとして名高い先生ですが、実はよく学会の講師室でもお会いする同い年の先生です。

今日もとても良い情報交換ができました。

来年は、フラクショナルレーザーのリサーFXや、血管専用のIPLフィルターを販売するなど、新たな企業情報もありました。

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M22の名前はご存知のとおり、いて座の中に見える星団の名前です。

いて座にはメシエ天体の球状星団が数多くありますが、その中で一番見応えのあるのがこのM22です。


四季とレーザー

クリニックのHPを日々更新しています。更新作業を行う上で、過去のブログ記事や写真を見直す必要が出てくること多々あるのですが、ブログ記事を読み返してみるとクリニックF開院当初から自分の治療方針自体、そして考え方の方向性に関してはあまりブレがないことに改めて感じるものがあります。

患者さんに伝えていきたい事に関しても、それほど変わっていないようです。

2008年2月のブログに「四季とレーザー」というタイトルのものがありました。今も同じように考えているので、こちらに改めてご紹介しますね。

***

2007-2

レーザー/光治療器を扱う医者は、ひとりひとりの患者さんが、四季の中でどの季節に自分のクリニックに初めて来たのか、そしてそれに対し今の季節はどう違うのか、常に念頭に置き対応できるよう準備しなければならないと思っています。

レーザーの先進国はアメリカである、とは皆共通の認識ですが、レーザーの打ち方に関しては、アメリカの打ち方をただ真似ても日本でそのまま応用は効かないのです。これは皮膚の色が違う、表皮と真皮の厚さが違う、ということだけが理由ではありません。

なぜなら、日本には四季があるから。

日本では、春先に来た患者さんの肌は、梅雨→盛夏→初秋→初冬→厳冬・・・と季節を通して劇的に変化します。気温と湿度が一年を通して大きく変化することが一番の理由でしょう。

医者はこの季節の変化に応じて、レーザー/光治療器のパワー設定を変えたり、使う機種を変えたりしなければならないのです。

たとえば春に来た患者さんにオーロラSRを照射するとします。

梅雨から夏にかけて、この患者さんへの適応照射パワーは少しずつ上がっていきます。気温と湿度が上昇カーブを描くからです。

秋頃には、SRをSRAに変えられるくらいに肌は調子を上げていきます。

しかし年を越し、厳冬の1月2月を迎える頃には、一度パワーを弱くするか機種を弱いものに一度戻す・・・といった選択が必要になるのです。

そしてここで様子を見て、改めて適正機器の選択をもう一度再検討する方が良い。

また、追記すると毎年3~4月、9~10月という時期には同じ機種で照射をするにもパワーの設定や打ち方などを工夫して保守的に攻める必要が出てきます。

季節の変わり目で皮膚がとりわけ弱っている場合が多いからです。

これはアメリカの医師やレーザー会社からは学ぶことができない、日本独自の環境と市場を念頭に置いたテクニックです。皮膚とその皮膚を取り巻く環境がアメリカと日本では全く違うのです。

結果をなかなか出せなかったり、患者さんの満足度が低かったり、また火傷や事故を起こすクリニックというのは、もちろん機器の選択や技術自体が未成熟な場合もありますが、こうした

「日本でレーザーを扱うときには四季を意識せねばならない」

という、日本独自の視点を持っていない医師が担当している事も、その原因のひとつにあるかもしれません。

地域によってもパワー設定・レーザーの選択は異なってくることでしょう。

気温と湿度を考えただけでも、北海道と九州で同じでいいわけはないですもんね。

これまでは講演に呼んでいただく場合、医療経営について話をすることが多かったのですが、今後はこうした話もドクター向けにしていく機会があったら、と思っています。


特集 「プロビタミンCの機能と応用」

執筆にかかわった、FRAGRANCE JOURNAL 2015/9月号が届きました。

特集 「プロビタミンCの機能と応用」です。僕もこの分野の研究開発にかかわって15年以上。レーザー治療との相性もとても良いです。

下記抜粋して載せておきます。

是非機会がありましたらご一読ください。

〇百花斉放,プロビタミンCの時代…アイ・ティー・オー 伊東 忍

 
〇レーザー施術後のケアとプロビタミンC…クリニックF 藤本幸弘

 
〇新規ビタミンC誘導体のにきびへの効果…明和病院皮膚科・にきびセンター 黒川一郎


〇L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルの臨床効果及び脂腺細胞でのNF-κBシグナル伝達減衰作用…池野皮膚科形成外科クリニック 池野 宏


〇新規両親媒性ビタミンC誘導体GO-VCの臨床効果…アイ・ティー・オー 永田 武・吉井 唯,おさめスキンクリニック 納 さつき,かおるクリニック 佐藤 薫,クリニックモリ 森 文子


〇 新規ビタミンC誘導体“3- グリセリルアスコルビン酸(VC-3G)”の有用性…成和化成 研究部 佐々裕介・勝山雄志・中村清香・吉岡正人


〇親油性を付与した水溶性ビタミンC誘導体:パルミチン酸アスコルビルリン酸(APPS)…昭和電工 事業開発センター応用化学品研究所 加藤詠子・井口里紗・佐伯夕子


〇新規高浸透性アスコルビン酸誘導体テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP)のトータルアンチエイジング素材としての展開…ニッコールグループ コスモステクニカルセンター 横田真理子・矢作彰一


〇アスコルビン酸リン酸エステルナトリウムの香粧品への幅広い有用性…DSMニュートリションジャパン パーソナルケア部 淵端三枝


フォト治療・光治療・IPL治療を行ってもシミが取れない理由 熱緩和時間の関わり

今日はちょっと難しい理論の話です。

近年多くの光治療機器が発売されてきましたが、理論上は光治療を行っても皮下のメラニンは破壊できないというのをご存知ですか?

反対に光治療機器で脱毛は可能ですが、これはなぜでしょうか?

その理論は一つの工学論文を読み解くことでわかります。

その論文とは1983年にサイエンスに採択されたPrecise microsurgery by selective absorption of pulsed radiationという論文です。

selective(Anderson & Parrish, Selective Photothermolysis, Science, vol.220, page 524-7)

ページにしてわずか3ページ強。

とても短いこの論文(選択的光融解理論)が業界に与えた影響は数知れず。

この論文が無ければ、脱毛レーザー機器も発売されなかったでしょう。

この理論は、「(レーザー光の)波長、光の照射継続時間(パルス幅)、単位面積あたりに照射する光エネルギー量の適切な組み合わせによって、生体の限定された領域に光熱分解を生じさせることができる」 というものでした。

➀光の波長(Wavelength)

②照射持続時間(Pulse dilation)

③単位面積当たりのエネルギー量(Fluence)

3つの要素を調節して照射すると

特定の色素、細胞、そして細胞内構築物を選んで、

融解する、もしくは組織の急速な温度上昇に起因するショックウェーブの機械的な力で特定組織のみを破壊することができるという理論です。

今日は、

➀光の波長(Wavelength) ③単位面積当たりのエネルギー量(Fluence)

が適切に選ばれたと仮定して話を進めてみたいと思います。

②照射持続時間(Pulse dilation)を変化させることで、どういった治療効果の変化がみられるでしょうか?

こちらで特に考慮しなければならないのが熱緩和時間(Thermal Relaxation Time)です。

レーザーエネルギーを与え続けると、生体内の構造物は、ある一定時間までは蓄熱します。

一定時間を超えて照射し続けると、構造物が周囲の組織に熱を放出 し、構造物自体の温度が低下します。

熱緩和時間とは、「レーザーを照射し始めてから、放熱によって温度が下がり元の温度に戻るまでにかかる時間の半分の時間」 を指します。

この緩和時間は、生体の物質によって、下表のように変わります。

■Melanin 50 nsec

■Red Blood Cell 100 μsec

■Normal Capillary 1 msec

■Epidermal Cell 1 msec

■Telangiectasia 1 ~ 50 msec

■Hair Follicle 40 ~100 msec

熱緩和時間内にレーザー照射が終わるとその構造物は破壊粉砕され、熱緩和時間以上のパルス幅で照射すると、構造物は壊れずに周囲組織に放熱されます。

ここで思い出して頂きたいのは、レーザー機器と光治療機器の②照射持続時間(Pulse dilation)です。

一般的なQスイッチYAGレーザーが5ns-10nsで照射することができますが、光治療機器ですと平均で20ms。さらに最短で4msぐらいのハルス幅でしか照射しかできません。

つまり、先ほどの表を考えると

★QスイッチYAGレーザー照射時間 5ns-10ns

■Melanin 50 nsec

■Red Blood Cell 100 μsec

■Normal Capillary 1 msec

■Epidermal Cell 1 msec

★光治療機器の照射時間 20ms

■Telangiectasia 1 ~ 50 msec

■Hair Follicle 40 ~100 msec

となります。

二つのパルス幅の間にあるメラニンなどの組織は、レーザーの短い照射時間では破壊できるけれど、光の長い照射時間では破壊できない。

と言えるのです。

フォト治療によって肌からシミが無くなるように見えるのは、光治療による熱刺激によって皮膚基底細胞のターンオーバーが上がるからであって、Qスイッチレーザーのようにメラニンを破壊できるものではないのです。

反対に、毛根などの組織は熱刺激によって永久脱毛効果を持ちますので、パルス幅の影響は受けにくいと言えますので、レーザー脱毛機器も、光脱毛機器も存在できるのです。

以上は、選択的光融解理論がすべて正しいと仮定しての説明ですが、実際には生体を相手にしている医学なので、もちろん例外はあります。

医師の臨床経験と技術が生きてくるところが、またシミ取りの深いところでもあり、やりがいのあるところです。


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