今週、若い経営者たちとの会食がありました。
どういう人が事業に成功するのかなあと考えてみましたが、一つにはテストステロン値の高さがあると思いました。
自分自身を思い返してみても、20代の時は常に自分に自信があり、万能感に満たされていました。たとえうまくいっていなくても、まさに自分は無敵状態。笑。今思えばこれこそ、テストステロンの高さだったんだなあと思い出します。
経営者は40歳代の厄年に気をつけろと言いますが、これはテストステロンの低下、つまり緩やかな男性更年期が起こり、意思決定のスピードが低下する事から起こると自分の体験でもわかります。
もちろん男性ばかりではなくて、女性にもテストステロンは存在します。
女性は更年期以降で万能感を持つと言われていますが、これは相対的にテストステロン値が上がるからとも考えられています。
今回は「若年期にテストステロン値が高いと性格面にどのような影響があるのか?」というテーマを考えてみたいと思います。
テストステロンというと、多くの方は筋肉質な身体や男性的な特徴を思い浮かべるでしょう。しかし近年の研究では、心理や性格といった「内面的な影響」も非常に注目されております。
具体的には若い頃のテストステロン値が高いと以下のような傾向が見られます。
○競争心や野心が強まり、他者と積極的に競い合う性格が形成されやすい。
○攻撃性や衝動性がやや高くなり、感情表現や行動が時に激しくなる傾向がある。
○リスクを積極的に取る傾向が強まり、いわゆる冒険心が旺盛になる。
○自己主張が強く、自信に満ちており、リーダーとしての役割を果たすことが多い。
こうした傾向については多くの研究が報告しており、特に競争行動やリスクテイキングに関してはエビデンスも豊富です。スポーツや投資、あるいはビジネスといった場面で「自分ならできる!」という自信から大胆な行動を取る人物が典型的でしょう。
また、社会心理学分野で興味深いのが、異性へのアピール行動との関係です。ある研究によると、若い男性が魅力的な女性と対面した際、テストステロンが顕著に上昇し、その結果、普段より大胆な言動を取ることが明らかになっています(Ronay & von Hippel, Social Psychological and Personality Science, 2010, pp.57–64)。
しかしながら、「テストステロンが高い=攻撃的」と単純化するのは危険であり、最近の研究では、むしろ適切にコントロールされたテストステロンは自己効力感や社会的地位の向上、ポジティブなモチベーションの源泉にもなり得るとされています(Eisenegger et al., Trends in Cognitive Sciences, 2011, pp.263–271)。
つまり、テストステロンを「正しく活用」できれば、人間的な魅力や信頼感をさらに高めることができるというわけです。
反対に、若いうちにテストステロンが低下する主な要因としては、次のようなケースが考えられます。
慢性的なストレスや睡眠不足
コルチゾールが増加し、テストステロンの産生が抑制されます。
(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2010, pp. 2638-2645)
肥満(特に内臓脂肪型肥満)
脂肪組織でテストステロンがエストロゲンに変換され、テストステロン濃度が低下します。
(Obesity Reviews, 2015, pp. 1037-1053)
過度な飲酒や薬物使用
アルコールや薬物が性腺機能を抑制し、テストステロン値が著しく低下します。
(Alcohol Health & Research World, 1998, pp. 285-290)
過度な運動やカロリー制限ダイエット
極端なダイエットや長時間の有酸素運動は、視床下部-下垂体-性腺軸を抑制します。
(Sports Medicine, 2017, pp. 2439-2447)
内分泌疾患や薬剤の影響
糖尿病、甲状腺疾患、ステロイド薬の長期使用もテストステロンを低下させる要因です。
(Endocrine Reviews, 2018, pp. 220-249)
心理的要因(抑うつや不安障害)
心理的ストレスが性腺機能に影響を与え、ホルモン産生を低下させます。
(Psychoneuroendocrinology, 2012, pp. 176-182)
こうした原因により、若い男性でもテストステロンが低下し、慢性疲労感や意欲低下、筋力低下、性機能障害などを経験する可能性があります。
では、50代にテストステロン値を上げるためにはどうしたら良いか?
1)筋力トレーニング(特にスクワットやデッドリフトなど下半身の運動)
筋肉に強い負荷をかけるトレーニングはテストステロンの分泌を刺激することが証明されている。特に大きな筋群を使うスクワットやデッドリフトは有効性が高い。
Kraemerら(1990)『Journal of Applied Physiology』, Vol. 69, pp.1442-1450.
2)十分な睡眠(最低7時間)
睡眠不足はテストステロンの分泌を大幅に低下させる。毎日7~8時間の質の高い睡眠を確保することが望ましい。
Leproultら(2011)『JAMA』, Vol. 305, No. 21, pp.2173-2174.
3)食生活の改善(タンパク質・脂質を重視、亜鉛・ビタミンDを摂取)
テストステロン合成には良質なタンパク質、脂質(特にオメガ3脂肪酸)、亜鉛、ビタミンDなどが重要となる。卵、赤身肉、魚介類、ナッツ類を積極的に摂ることが推奨される。
Pilzら(2011)『Hormone and Metabolic Research』, Vol. 43, pp.223-225.(ビタミンD)
Prasad(1996)『Nutrition』, Vol. 12, No. 5, pp.344-348.(亜鉛)
4)体脂肪率を下げる(特に腹部脂肪)
体脂肪率(特に内臓脂肪)が高いと、アロマターゼ活性が上がり、テストステロンがエストロゲンに変換されるため、結果的にテストステロンが低下する。BMIを適正化(25未満)することが推奨される。
Cohenら(2013)『Asian Journal of Andrology』, Vol. 15, pp.492-496.
5)ストレス軽減とコルチゾール低下
慢性的なストレスはコルチゾールを増加させ、テストステロンを低下させるため、マインドフルネス、ヨガ、瞑想、深呼吸などでのストレスコントロールが効果的である。
Cummingら(1983)『Psychosomatic Medicine』, Vol. 45, pp.479-489.
6)医療的な介入(テストステロン補充療法:TRT)
上記の生活習慣改善でも十分に上昇しない場合には、医療機関でのテストステロン補充療法(TRT)が選択肢となる。ジェル剤、筋肉内注射、貼付薬などがあり、定期的な医師によるフォローアップを必要とする。
Snyderら(2016)『New England Journal of Medicine』, Vol. 374, No. 7, pp.611-624.
僕も自力で出来るところまでは頑張りたいとは思いますが、6番目。
一旦補充療法を始めてしまったら、やめられないんだろうなあ。あの万能感が懐かしい。笑
