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フラクセル3デュアル 国内正式デビュー

クリニックFでは、ソルタメディカル社の「フラクセル3デュアル」を2009年12月にデモ機として日本で初導入しています。僕自身もカルフォルニア本社のスタッフに臨床経験やパラメーターを報告するなど、製品開発にも関わってきました。

その最新鋭の機器「フラクセル3デュアル」が、2010年4月にいよいよ国内で正式デビューを果たしました。

ここで「フラクセル3デュアル」の特徴を改めてまとめておきたいと思います。

開発元であるソルタメディカル社は

■顔の皮膚全面を1度に治療するのではなく、あえて「正常な皮膚」を残すことによって、治療部位の皮膚再生を加速し、しかも安全に治療を行うことができる。

・・・という、治療効果と安全性を両立させた画期的な理論を

「Fractionated Laser Resurfacing」

と名付け、ひとつの新しい治療法として初めて確立させた会社です。

この「フラクショナル・レーザー・リサーフェシング」とは、もうすこしわかりやすく説明すると

■レーザー機器を利用して、正常な肌を残しながら、断続的かつ、円柱状もしくは円錐状(フラクショナル)に皮膚を入れ替える治療法。この治療法により、にきび痕や加齢により開いてしまった毛穴に改善をもたらし、皮膚全体の若返りを図る=「リサーフェシング」を行うことを可能とする。

・・・とでも定義したら良いでしょうか。

2004年のアメリカ テキサス州ダラスで開催された米国レーザー医学会(ASLMS)で、初代フラクセルの理論が発表されました。

偶然にも僕はダラスでの発表の現場に居合わせました。

発表を聞き、この機械は、特にアジア人の肌のレーザー治療に革命を起こすと思いましたよ。

ソルタメディカル社(元リライアント社)はさらにフラクショナルレーザー機器の研究を続け、2007年以降 改良型の「フラクセル2(リストア)」「フラクセルリファイン」「フラクセルリペア」・・・と多くの機種を発売してきましたが、2009年8月その集大成ともいえる機種を発表しました。

それがこの「フラクセル3デュアル」です。

フラクセル3デュアルは、2009年8月にカナダのウィスラーで開催された「コントロバーシーズ&カンバセーションズ」という、ハーバード大学医学部附属光医学研究所の卒業生が主体となって主催するカンファレンスで、初めて発表が成されました。

この会は毎年8月の真夏に3日間、北米大陸のさまざまな都市で開催されます。

それこそ、世界中からレーザー皮膚関連の専門医師が集まってくる会なのですが、面白いのはレーザー治療器について、メーカーサイドの発表ではなく

「医師の本音を言い合う」

会であるということ。

最新鋭の機器については、実際に使用している医師から感想を聞くのが一番です。非常に役立つ知識が多く、僕も毎年出席を楽しみにしているのです。

フラクセル3デュアルのデビューについては、フラクセルとサーマクールの新機種デビューのブログでも報告しましたよね。

このレーザー機器の最も大きな特徴は、今までの1550nmの波長に比べて1927nmのレーザー波長を加えて照射できるようになったこと。

これらの赤外線の波長特性は、水に対する吸収率で性質が変わります。

単純比較した場合、1927nmの波長は、従来の波長に比べて10倍、水に対する吸収率が高いのです。

つまり肌に照射したときに、真皮の水分に吸収されるため、エネルギーが真皮の深くには入らないのです。

この特性によって何が起こるのか?

ちなみにこちらは1550nmと1927nmのふたつの波長を、まったく同じパワーである20mJ(ミリジュール)で照射したものです。左の1550nmの方が深く入ることがわかりますよね。

さらにこちらは同じ1927nmの波長で、パワーを上げていったもの。パワーがあがるごとに照射野が広がりますが、深さがあまり変わらないのがわかりますか?

つまり、色素斑や、浅いタイプのにきび痕、毛穴といった、表面の入れ替えを主体に治療したいときは1927nmの波長をメインに使用するわけです。

一方で、今までの既存のフラクセル2の1550nmの波長を使用すると、

このとおり、パワーを上昇させればさせるほど、浸達度が上がります。

経験的にも、真皮において新しいコラーゲンやエラスチンを生成する作用も大きいですので、ある程度の深さのある疾患に対して、入れ替えを主体に治療したいときは、1550nmを選択したほうがよいのがわかります。

しわや傷跡のように深い疾患と、さらにはスキントーンの改善や老人性色素斑などの浅い疾患に対し、

この図のように、二つの波長のパワーと照射密度を、何対何の比率で照射すればよいのかを考えることによって、患者さんの肌の症状に合わせて、より細かい使い分けができるのです。

このあたりのパラメーターの比率については、今月末に開催されるシンガポールでの皮膚科学会の招待講演で発表させていただこうと思っています。

クリニックFでの場合、フラクセル2の経験者で、フラクセル3デュアルを照射すると、ほぼ100%の方が次もフラクセル3デュアルでの施術を希望されます。

特に薄いしみや、小さな毛穴などに対する肌の入れ替えには圧倒的な優位差がありますね。

ちなみに3月にマイアミビーチで開催された米国皮膚科学会(AAD)では

フラクセル3デュアルとサーマクールCPTのブログである通り、相当大きな扱いでした。

このフラクセル3デュアルの施術は、安全のため、クリニックFでの「フラクセル2」の治療経験者に限り施術を行ってきましたが、先月国内で正式にデビューしたことにより、初めてフラクセルを受ける方でもフラクセル3デュアルを選択できるようにしました。

クリニックFでの施術価格は、全顔照射で「フラクセル2」と同価格。126,000円です。

今までの施術に比較して、「肌の入れ替わり感」がより大きく実感できます。

今後の世界の主流な治療になっていくのは明らかですね。


FedEx Kinko’sにて

来週11日からクロアチアのCAVTATで開催される、ヨーロッパ皮膚科学会(EADV)の春季会に行く予定です。ポスターでの演題発表が予定されており、昨日今日と四ツ谷のFedEx Kinko’sに通って、A1の大きさでポスターを作ってきました。

光沢紙にして、印刷代は7,120円なり。仕事が終わってちょっと一安心です(笑)。

EADVでの参加発表を過去振り返ると

2005年 本会 イギリス ロンドン

2006年 春季 フィンランド サーリセルカ

2006年 本会 ギリシャ ロードス島

2007年 本会 オーストリア ウィーン

2008年 本会 フランス パリ

2009年 春季 ルーマニア ブカレスト

2009年 本会 ドイツ ベルリン

・・・となります。今年のクロアチアで、もう8回目。今回は、ここ数年とりくんでいるメドライトC6による肝斑治療について発表を予定しています。

肝斑治療は、「レーザートーニング」という手法によって治療が可能になってきましたが、レーザー機器の個体差や、患者さんの治療経過によって照射のパワーを変化させるなど、治療者の医師の技術と経験が生きてくる施術です。

この演題は先月の米国レーザー医学会(ASLMS)でも発表をしていますが、レーザー治療関連の学会の場合

■米国皮膚科学会(AAD)や米国レーザー医学会(ASLMS)などの米国系学会で演題を通す場合は、とにかく「新しい機器を使用した」発表が演題に通過しやすく

■欧州皮膚科学会(EADV)や欧州レーザー学会(ESLD)、そしてIMCASなどの欧州系学会で演題を通す場合は、「古い機器をどのように使用したか」という、使用法について論点を持ってくると演題が通過しやすいのです。

同じホヤコンバイオ社のメドライトC6を使用した発表ですが、それぞれの学会の志向に合わせて研究のプロトコールを変化させたつもりでしたので、双方から演題通過。つまり合格の知らせを受けて、とてもうれしかったですよ。

演題をポスターにして発表するか口演にして発表にするかは、昨年のベルリンEADV2009の発表のブログでも触れさせていただきましたが、どちらにもメリットとデメリットがあります。今回は、それらを踏まえた上でポスターでの発表にしました。

また、改めてここでご報告しますね。


横浜 キャノン キャッツシアター

GWも終わり今日から診療再開です。またどうぞよろしくお願いいたします。

お天気に恵まれた今年のゴールデンウィーク。みなさんは連休中、どう過ごされましたか?

僕は前から行きたかった横浜のキャッツシアターで、ミュージカル「CATS」を観てきましたよ。

横浜のキャッツシアターは昨年の11月11日よりスタートしました。僕の出身地である神奈川県で初めてのキャッツシアター。とても行きたかったのですが、これまではなかなか時間が合わなかったのです。

キャッツは天才アンドリュー・ロイド・ウェバーが作り上げた、世界で最も興行的に成功したミュージカルの一つと言われています。

アンドリュー・ロイド・ウェバーについては2008年のニューヨークの出張の時の、オペラ座の怪人のブログでもふれましたよね。

このミュージカル「キャッツ」ですが、ロンドンのウエストエンドで1981年に、ニューヨークのブロードウェイで1982年に開催され、爆発的なヒットとなりました。

日本にミュージカルキャッツが上陸したのは1983年のこと。

なんと、もう26年も前なのです。

新宿西口の高層ビルの一角に、ねこの目を付けた不思議なテントが張られたのは僕も記憶にあります。

そういえば、現在の新宿南口の高島屋タイムズスクエアの場所にキャッツのテントが張られたこともありましたね。

僕は日本の劇団四季版を今回初めて観たのですが、イギリス版とは演出が似ているようで細かいところが違い、とても楽しめました。

ラム・タム・タガーやミストフェリーズの演技が控えめだったなあと思いましたが、それはそれで味がありますね。

ちなみに劇中の天才マジシャンのミストフェリーズの動画をYouTubeでみつけました。宜しかったらご覧ください。絵的にも視覚を楽しませてくれますよね。

個人的には、グリザベラが第1幕の最後、幕間の手前で歌う日本語の「メモリー」のプレビューは、本場と違う新鮮味がありました。

演出は色々と違いますが、日本語は、他の言語に比べて表現方法が多彩かつ複雑です。

この劇団四季版キャッツですが、もしかしたら私たちの日本人の文化には、この日本語版の方が評判が良いのではと思うほど優れていましたよ。

劇団四季の方たちが研究に研究を重ねたのだと思います。

そして、こちらの動画は第2幕のクライマックス。グリザベラが自分の人生を振り返って「メモリー」を歌う時のものです。

舞台のねこ達は、このグリザベラの「メモリー」の歌詞と歌唱力に共感し、長い間、老いた娼婦ねことして忌み嫌っていたグリザベラを、満場一致で今年のジェリクルキャッツに選ぶのです。

劇中、涙が出るほど感動するシーンです。

購入したこのパンフレットには、製作演出の浅利慶太氏が、こんな内容の文章を寄せられていました。

ミュージカルとオペラの違うところ。

オペラには、ミラノのスカラ座や、ウィーンの国立歌劇場で公演される超一流のものから、二流、三流の上演までが共存し得る。

しかしながら、ミュージカルの原則は「オール・オア・ナッシング」。

世界のどの都市で上演されようと、世界一流のレベルでなければ観客は納得しない。

ロンドンの成功も、ニューヨークの成功も、同じレベルに達した舞台表現が初めてもたらすものなのだ・・・・。

これには、観る観客側の文化度や、知的好奇心なども一緒に成長しなければなりませんよね。

僕はオペラもミュージカルも大好きですが、この言葉に、ものすごい納得してしまいました。

これからも観続けていくのだろうなあ。


フェニックスからの帰国

さて、翌日はフェニックスからの帰国の日。出発は朝便でした。

フェニックスからサンフランシスコに向かう途中は、快晴。とてもきれいな景色を見ることができましたよ。

サンフランシスコベイにはベイブリッジがよく見えました。

そして、上空からのサンフランシスコの街です。

ゴールデンゲートブリッジが綺麗に見えます。

こうしてみると、サンフランシスコは規則正しく計画的に造られた都市ですよね。

今回は、5泊6日のちょっと慌しい旅でしたが、思いがけずグランドキャニオンまで足が伸ばせたのはうれしい誤算でした。

また、今回の米国レーザー医学会(ASLMS)での発表で、僕の英語でのレーザー関連の招待講演/学会発表数は、56回目になりました。

実り多い旅となったアリゾナ州フェニックスへの出張。新国際学会周遊記 北米アリゾナ編はこれで終わりです。

現在クリニックはGWのお休みを頂戴しています。診療は、5月6日(木)からになりますので、またよろしくお願いいたします。


カテドラルロックとベックリンの「死の島」

幸運なことに、予定していなかったグランドキャニオンまで足を延ばすことができましたが、セドナに帰ったころには夕暮れになってしまいました。

通常は、何日もセドナに滞在してさまざまな観光をするのでしょうが、夜7時半の会食に間にあわせるためには、残念ながらもう帰らなければなりません。

帰路の途中で、セドナの代表的な写真にある、カテドラルロックだけでも正面から見てみようとそちらに車を回してみました。

見えてきたカテドラルロック。正面に向かう場所に着くことができました。

ここからはハイキングコースが伸びていますが、さすがに歩く時間はありません。

しかし、威力を感じさせる岩ですね。

セドナがパワースポットとされ、世界各地から人を集めるのもわかる気がします。

僕はこの岩のファサードを見て、なぜでしょう、一枚の絵を思い出していました。

その絵とは、スイス出身の19世紀の画家である、アルノルト・ベックリンの「死の島」という絵。

「死の島」は、暗い空のもと墓地のある島に、小さな棺をのせた船が進んでゆく神秘的な絵です。ベックリンにより、同じモチーフで全部で5点の作品が描かれています。

第一次大戦後のドイツでは非常に人気が高く、一般家庭の多くの家にこの複製画が飾られていたのだそうですが、中でもあのアドルフ・ヒトラーがこの作品をとても好み、2番目に製作された作品を実際に自身で所有していたのだそうです。

ナチスドイツの作戦本部に飾っていたということを聞いたことがありますよ。

現在は、完成した順番に、バーゼル美術館、ベルリン美術館(ヒトラーが所有していたもの)、NYメトロポリタン美術館、ライプツィヒ美術館に作品が残っていますが、3番目の作品のみ、1945年以降所在が分からないのだそうです。

ちなみに、この絵に影響を受けたロシアの作曲家ラフマニノフも、1909年に交響詩を作曲しています。

それにしても、この神秘的な島に向かう構図は、なぜこんなにも共感を呼ぶのでしょう。

何か巨大な障害物に挑戦する、心理的な要因を現しているのでしょうか?

もしかしたら、人類が共通して持っているデジャブ(既視感)なのでしょうか?

僕にはわかりませんが、なぜか、この構図には惹きつけられますよね。

しばらく思い出すことのなかったスイスの画家が描いた絵について、アメリカで考えることになるなんて、なんだか不思議な一日となりました。


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