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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:医療

2022年年末のご挨拶

東京では12月31日の太陽が沈み、いよいよ2022年があと数時間で終わります。もう数名の患者さんを診察施術して今年の外来が終了となります。


*写真は鎌倉は由比ヶ浜での日の入りです。

引き続き難しい状況が続いた1年でしたが、そんな中でもクリニックにお越しくださった方々に感謝いたします。ありがとうございました。
マスクの常用による顔の違和感にもすっかり慣れてしまった感があります。紫外線や埃といった刺激物もある程度カットしますから、皮膚の質感自体は上がって良さそうなものですが、これがどうしてどうして。コロナ禍による外出の減少やマスクの常用により肌が綺麗になった!という方は残念ながらあまりお見掛けしませんでしたね。

何より指摘したいのは、僕が「マスク肝斑」と呼んでいる症状。マスクを一日中していると、頬の同じところが何度も擦れてしまうので、これが三年ともなると!まさに肝斑様のシミを持って来院する人がとても多いのです。対策はもちろんレーザーもありますが、まずは原因を根絶するために、なるべくマスクを外す。さらに着けなければいけない場合も形状の違うマスクを一日に数回変えていただくのが良いと思います。

くすみや緩み、弛みが進んでしまった方も多かったように思います。きっとこれは「マスクがあるから」「どうせマスクで見えないのだから」という気持ちの欠片が心のどこかにあり、洗顔やスキンケアが疎かになったり、メイクによって保護されていた皮膚が露出してしまったことにあるのでしょう。
もちろんですが、そのほか社会情勢により過緊張やストレスが続き、心がなかなか晴れず自律神経調整機能が落ち、ホルモン活性も下がる、という要因もあるでしょう。

もう一点、海外では、コロナワクチン接種により、高確率で白斑が発生するという事例がこのところ報告されています。日本人は白斑には気づきにくいと言われていますが、皮膚科的にはシミよりもはるかに治療が難しいとされています。おそらくmRNAのコロナワクチンがメラノサイトの突起に過誤反応してしまい、自己免疫疾患を引き起こすのではとの議論がありますが、こちらも引き続き要注目ですね。

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今年お会いした患者さんには、クリニックFにお越しくださることが「久しぶりのお出かけなんです!」という方も何人かいらっしゃいました。僕たちとしては大変光栄なことで、「久しぶりのお出かけ」を出来るだけ楽しく有意義なものにするにはどうしたらよいか 細かなことをスタッフと話し合ったり実行に移した年でもありました。

皮膚にとって「お出かけ」は大切です。天気を感じ、自然の色を観て、音を聴いて、足を動かし手を動かす。登ったり降りたりして、手を延ばし気になるものに触れてみる。人と目を合わせ、会話をし、頷いたり笑ったりする。時に怒り泣くことも良いでしょう。五感の刺激を豊かに感じること。そのすべてが皮膚を磨いていきます。

僕たちにできることは変わらず最新知見を以て適切な機器と照射方法を選択し、その皮膚にあるDNAを再び起こす刺激を与え、目を覚まし開いてもらうことになります。

今年お会いできた方も、逆にお会い出来なかった方も どうか佳いお年をお迎えください。また2023年にお目にかかります。

クリニックF 院長  
医学博士 工学博士 薬学博士 MBA
藤本 幸弘
2022年12月31日クリニックF院長室にて


糖尿病とタンパク質について

著名な女性誌から過剰なタンパク質の摂取について取材を受けました。

プロテインバーやプロテインドリンクなどが主食になっている人が多いのかもしれません。

こちらはまた別途リリースのタイミングでご案内しますが、今日はそこから少しスピンアウトして、糖尿病とタンパク質について書いておこうと思います。

糖尿病の際には、タンパク質の摂取を控えるように言われます。

糖尿病の三大合併症は、腎症、神経障害、網膜症ですが、特に糖尿病腎症のリスクがある方や、すでに発症してしまった患者さんに関しては、タンパク質の摂取制限を指導されるのが一般的です。

前のブログにも書きましたが、タンパク質は、他の三大栄養素である脂質や炭水化物と大きく違う点があるのですが、それは構成している元素です。

脂質や炭水化物はC(炭素)とH(水素)とO(酸素)の三つの元素で主に構成されているのに対して、タンパク質はアミノ基を含む構造上、CとHとOに加えてN(窒素)が必要となるのです。

CとHとOだけなら、CO2(二酸化炭素)とH2O(水)に分解できるので、呼気と尿で体外排出できるのですが、Nを身体から排出するのは少し複雑です。

タンパク質が分解されて生ずるアンモニアを、肝臓の“尿素回路”で代謝することで、体外排出できる尿素を作ることで、Nを排出するのです。

タンパク質が体内で合成されるときにはアミノ酸が使われるのですが、そのうち余分なタンパク質は尿素などの老廃物に分解され、腎臓でろ過されますので、糖尿病腎症の進行を早めてしまします。

つまり、構造上Nが多ければ多いほど、排出時に肝臓にも腎臓にも負担がかかるというわけです。

さらに、血糖コントロールができていない糖尿病患者さんの場合、インスリンがタンパク質合成のサポートを上手くできなくなり、摂取したタンパク質の栄養素を十分に活用することが難しくなるのです。

タンパク質は身体をつくるために重要な栄養素のひとつですが、糖尿病治療を開始している方の場合には、過剰摂取に注意が必要です。

過ぎたるは及ばざるがごとし。良薬口に苦し。たんぱく質の重要性もわかりますが、健康に関しては、必ず身体によい反応と悪い反応の功罪の両面がありますので、とにかく、自分の身体の反応に常に耳をすませ、バランスを重要視するのが大事ですね。

 

 

そしてもう一点、プロテインドリンクやプロテインバーが主食になってしまってはいけない理由。

それは食物繊維がとれなくなることだと思います。食物繊維は人間には消化ができないという事で、そもそもの栄養素から外されてしまった経緯がありますが、実際には、食物繊維を主食とする腸内細菌は多いのです。

人間の体内の細胞は60兆個、これに対して腸内細菌は100兆個も存在し、細胞の数だけ考えれば腸内細菌の方が多く、言ってみればその集合体が人体です。

腸内細菌フローラが人体にとって免疫防御や、必須栄養素の生成など、人間の持っている細胞では出来ない、有益な多くの役割を果たしていることは最近の研究でよくわかってきました。

腸内細菌のなかでも、善玉菌として知られるクロストリジウムが食べる食物繊維が豊富にあれば、制御性T細胞(Treg細胞)という細胞が発生してしやすくなるという研究成果もあります。

Tレグ細胞は、免疫応答を抑える機能を持ち、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー疾患などを引き起こす過剰な免疫応答を抑制することができるのです。

僕が医師免許を取ったのはもう30年近く前、免疫学で医学博士号を取ったのも20年前になってしまいましたが、その時に習っていた生理学、免疫学、さらには解剖学でさえ、現在では大きく変化しています。

脂肪細胞や、筋細胞などが、多くのメッセージ物質(ペプチド)を放出して細胞間でやりとりをしているなんて、待ったくわかっていませんでした。マクロな目で見て、まったく役割を果たしていないと思われていた盲腸(虫垂)や、脾臓を摘出するなんてことをやっていましたが、これらは免疫細胞を成熟させるうえで大きな役割を果たしていたこともわかってきましたよね。

医学はいまだに完成しておらず、研究も日々進歩している学問です。常日頃、多くの情報にふれて、アップデートしないといけませんね。

 

※図は、以前に出版した著書「ディフェンシブ栄養学」で生体を維持するのに必要な50要素をあげたときのものです。


日本医師会雑誌「頭痛診療」について

今月号の日本医師会雑誌は「頭痛診療」についてでした。

祖父が昭和の時代に静岡県三島市で医院を開業していたのですが、ペインクリニックの先駆けの様な治療をやっていて、患者さんに非常に感謝されていたと母に伝え聞いていました。

僕も医師になった初期は痛み治療を研究対象にしたいと決めて、ペインクリニック認定医も取得して自律神経の英文論文まで書きましたが、痛みの治療研究は客観的に判断基準が無いためにちょっと難しいなあと感じていたところ、痛みを取るレーザーに出会い、それからは一路、レーザー光学とエネルギーデバイスを中心に治療研究してきました。

僕が痛み治療についてキャッチアップしていたのは、東京大学医科学研究所附属病院の助手だった2005年ごろまでしたが、現在は多くの頭痛に対する機序解明とCGRP関連抗体薬が国内認可され、さらに海外ではジタン系薬剤やゲパント系薬剤などの新しいクラスの薬が臨床利用される様になりました。

進歩を見守っていきたいですね。


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