NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)について、研究を続けているため、ご質問が増えました。
先日も友人の先生から、体内のNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を増やすことがNMNの目的であるなら、安価なニコンチンアミドやナイアシンでもよいのではないかと指摘を受けました。
英文論文が出ているからと言ってその薬剤が効果があると考えるのは短絡すぎです。実験の方法や結果が、動物実験が根拠であったり、統計処理をうまく行うことで、何らかの意図が入り込むことが良くあるからです。僕も英文論文をよく書きますので、こうした裏事情についてもよくわかっているつもりで、まあこういう説もあるなかな?ぐらいの認識しかありません。
結局、自分の体験と、医学を中心とした科学知識による推敲が最も役に立つ理論体系なのではないかと思っています。
NMNを僕が飲み始めて、最初は一日250mg、その後500mgに増量し、最も変化に気づいた点は、自律神経の安定化。特に、眠りの深さです。途中覚醒もなく、8時間近く眠りこけることができるのは、脳もリラックスできるし、やっぱりありがたいですね。

この図は、NMNがATPと結合することでNAD+が生成される過程の化学式で、nmn.comというサイトからお借りしました。
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NMNは、エネルギー代謝や細胞修復に関与する重要な分子であり、主にNAD+という補酵素の前駆体として働きます。NAD+は、細胞の健康を維持し、エネルギー生産やDNA修復、細胞の老化を遅らせるために不可欠です。
1)NMNが効果的とされる理由
NAD+レベルの増加: 加齢とともに体内のNAD+のレベルは低下しますが、NMNを摂取することでNAD+のレベルを回復させることができます。これが、エネルギーレベルの向上や老化に関連する問題の軽減に繋がるとされています。
①ミトコンドリア機能の改善: NAD+はミトコンドリア(細胞のエネルギー生産工場)の機能に深く関与しており、NMNがミトコンドリアの健康を維持することで、エネルギー代謝が改善され、疲労感の軽減や体全体のパフォーマンス向上が期待されています。
②サーチュイン活性化: NAD+はサーチュインという酵素群を活性化します。これらの酵素は、細胞の寿命や老化プロセス、さらにはDNA修復に関与しています。NMNによってNAD+が増えることで、サーチュインの活動が活発化し、老化に伴う細胞損傷を防ぎ、長寿命を促進する可能性があります。
③血管機能の改善: いくつかの研究では、NMNが血管の健康を改善し、血流を増加させる可能性が示されています。これにより、心血管系の健康がサポートされ、全身の健康状態が向上する可能性があります。
2)NAD+を増やすために重要な他の物質
①NR(ニコチンアミドリボシド)
NRは、NMNと同様にNAD+の前駆体です。体内でNRがNAD+に変換されることで、NAD+レベルを向上させることができます。NRもエイジングケアやエネルギー代謝の改善に関心が高まっている物質です。
②ニコチンアミド(ビタミンB3)
ニコチンアミド(ナイアシンアミド)は、ビタミンB3の一種で、NAD+の生成に必要な成分です。食品やサプリメントとして摂取することで、体内のNAD+合成をサポートします。ニコチンアミドはNAD+に変換されやすく、副作用が少ないため、日常的な摂取に適しています。
③トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸の一つで、体内でニコチンアミド(ナイアシン)に変換され、最終的にNAD+を生成するための原料となります。トリプトファンは食事から摂取でき、ナッツ類、種子、卵、乳製品などに豊富に含まれています。
④ナイアシン(ニコチン酸)
ナイアシンもビタミンB3の一種で、体内でNAD+の生成に使われます。ナイアシンは広く使用されているビタミンですが、高用量では一部の人に「ナイアシンフラッシュ」(皮膚の赤みやかゆみ)を引き起こすことがあります。
3)NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)がニコチンアミドやナイアシン(ビタミンB3の形態)と比較して優位とされる点はいくつかありますが、これは主にNMNのNAD+生成への効率性と直接的な影響に基づいています。以下にNMNの特性と他の前駆体との比較を説明します。
NMNの優位点
①NAD+生成の効率性: NMNは、体内で直接NAD+に変換される前駆体の中でも、非常にスムーズにNAD+合成プロセスに入ります。ニコチンアミドやナイアシンもNAD+に変換されますが、NMNは既にNAD+の生成の途中段階にあるため、変換プロセスが短く、NAD+レベルの向上がより効率的であると考えられています。
②ナイアシンやニコチンアミドは、まず他の中間段階(例えば、ナイアシンがNAD+に変換されるためにはニコチンアミドに変換される必要があります)を経てNAD+に合成されるため、NMNに比べて変換のプロセスが長いです。
③副作用の少なさ: NMNは、一般的に高用量でも良好に耐えられ、副作用が少ないとされています。一方、ナイアシン(ニコチン酸)は、高用量摂取時に「ナイアシンフラッシュ」(顔や体の皮膚が赤くなる現象)を引き起こす可能性があり、これが不快であるため長期使用が難しい場合があります。
④サーチュイン活性の促進: NMNは、NAD+の生成を促進し、サーチュインという酵素の活性を高めることが知られています。サーチュインは、細胞の老化やストレス耐性に関与し、DNA修復や抗酸化作用を担っています。これにより、NMNは老化防止や細胞の修復、寿命延長に関連する効果が期待されています。
☆ニコチンアミドは、サーチュインの活性を抑制することがあり、長期的な摂取はNAD+レベルを上げてもサーチュインの活動に悪影響を与える可能性があります。この点では、NMNの方がサーチュイン関連の抗老化効果において優位とされています。
⑤体内吸収と分布の違い: NMNは経口摂取後、血流に乗って細胞に取り込まれ、速やかにNAD+に変換されます。また、NMNは血管内皮細胞を通過しやすく、体内のさまざまな組織に効率的に分布するとされています。これは、ニコチンアミドやナイアシンと比較して、特にミトコンドリア機能の改善やエネルギー代謝向上に役立つ可能性があります。
⑥脳内のNAD+レベルへの影響: 研究によると、NMNは血液脳関門を超えて脳内に入り、NAD+レベルを高めることができるという報告があります。これは、神経変性疾患の予防や認知機能の改善に寄与する可能性があります。ニコチンアミドやナイアシンも脳内NAD+レベルに影響を与える可能性がありますが、NMNの方が効率的であると示唆する研究がいくつかあります。
☆ナイアシンやニコチンアミドの利点
ただし、ナイアシンやニコチンアミドにも利点があります。これらはNMNよりも安価で広く入手可能であり、長期的な安全性も確立されています。軽度なNAD+レベルの低下にはこれらの物質が十分であり、NMNほどの高コストのサプリメントが必ずしも必要ない場合もあります。
結論
NMNは、NAD+の迅速で効率的な生成において他の前駆体よりも優れているとされており、特にサーチュイン活性の促進や脳機能改善といった点で注目されています。ただし、コスト面ではナイアシンやニコチンアミドが有利であり、症状や目的に応じて適切な選択をすることが重要です。
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