「時間は一方向にしか流れない」
人類史上 最重要方程式ベスト10 その9
熱力学第2法則はエントロピー増大を通して不可逆性を示す。
熱力学第2法則とは?
「エネルギーは使えば使うほど“使いにくくなる”法則」
1. そもそも「エントロピー(S)」ってなに?
エントロピーとは、「エネルギーの散らばり具合」や「無秩序さ」のこと。
整っている状態 → エントロピーが低い
ごちゃごちゃした状態 → エントロピーが高い
たとえば、インクを水にたらしたときを思い出してみてください。
最初は、インクは一点に集中(エントロピーが小さい)
時間が経つと、全体に広がっていく(エントロピーが大きくなる)このように、エネルギーや物質は、自然に“広がる方向”に向かうんです。
2. 第二法則の代表的な式
ΔS ≥ 0
これは閉じた系(=外部とやりとりのない世界)で、
エントロピーは減らない(増えるか、同じか)
という意味です。
さらにもう一歩進むと、カルノーサイクルなどから導かれる、次のような表現もあります。
dS = δQ / T
dS:エントロピーの微小変化量
δQ:吸収した熱量
T:絶対温度(ケルビン)
これは可逆過程(理想的な熱のやりとり)に限った式ですが、ポイントは:
同じ熱量でも、温度が低い場所に熱を与える方が、エントロピーはより増える
3. 何がそんなにすごいの?
(1)時間に「向き」があると証明した
ニュートン力学や量子力学の多くの方程式は時間に対して対称(時間を逆にしても式が成り立つ)なのに対し、
熱力学第二法則だけは、「時間は必ず未来に進む」という非対称性を持ちます。
これは「時間の矢(Arrow of Time)」と呼ばれ、物理学において特別な位置を占めています。
(2)すべてのエネルギー変換に“限界”を与える
たとえば、100℃のお湯の熱エネルギーをすべて電気に変えることはできません。
その理由は、
熱エネルギーの一部は、必ずエントロピーを増やす形で失われるから。
これにより、永久機関の存在は不可能だと論理的にわかります。
(3)宇宙の未来とつながる
エントロピーが増え続けると、宇宙全体は最終的に
熱が均一に広がりきった、変化のない「死んだ状態」
に至ると予想されています。これがいわゆる「熱的死(heat death)」です。
つまり、この法則はコーヒーが冷めることから宇宙の終焉までを支配しているんです。
まとめ:第二法則の「深さ」
視点 影響
日常 部屋が散らかる、アイスが溶ける
科学技術 エンジン効率の限界、冷蔵庫の設計
哲学 時間はなぜ戻らないのか?
宇宙論 宇宙はどう終わるのか?
この「当たり前のような変化」に隠された法則が、式一つ(ΔS ≥ 0)で貫かれていることに、自然科学の美しさがあります。















