【レーザー機器の“ジェネリック化”と、オリジナルを選ぶ理由】
僕が医療レーザーの世界に入って25年以上が経つ。
当初は、どの機器も唯一無二の存在感を放っていた。しかし近年、“ジェネリック機器”と呼ぶべき製品が急増しており、日本の場合は機器の認可が遅いために、新しい技術が開発されるたび、オリジナルの機器がデビューすると一年もしないうちにコピー機器が個人輸入され、同じ様に扱われる事が多い。僕は工学博士なので、開発者の気持ちがわかります。ぶっちゃけ、たまったものじゃないですよね。笑
たとえばフラクショナルレーザー。
世界で初めてフラクショナル技術を概念化し、特許化したのはReliant Technologies社(後のSolta Medical)である。2004年に発表されたFraxel(Er:glass 1550nm)は、非アブレイティブフラクショナルレーザーという新しい治療概念を打ち立てた(Dermatol Surg. 2004 Sep;30(9):1179-88)。
このFraxelの登場によって、皮膚若返り治療は“全層アブレージョン”から“部分的ミクロアブレーションによる再構築”へとパラダイムシフトが起きた。
しかしその後、市場には無数の類似機が現れた。特許回避のため波長やパルス幅を微妙に変えた製品や、OEMで供給されるジェネリック機器たちだ。

■ 特許と論文が示す“思想”の違い
重要なのは、オリジナルメーカーとジェネリックメーカーの間には、特許数・論文数という圧倒的な差があるという事実だ。
例えばフラクショナルCO₂レーザーの分野。
Lumenis UltraPulse ActiveFX/DeepFX
特許: 米国特許 US6849078B2 他多数
論文: PubMedで100報以上(例: J Biomed Opt. 2007 Jan-Feb;12(1):014003.)
DEKA SmartXide DOT
特許: CO₂フラクショナルスキャニング関連欧州特許複数
論文: DEKA CO₂シリーズ関連で70報以上(例: Dermatol Surg. 1998 May;24(5):315-20.)
一方、OEMジェネリック機器にはほとんど論文が存在しない。仮にあったとしてもメーカー主導の社内評価程度である。
この特許と論文の数は、そのメーカーが「生み出してきた技術の蓄積」そのものである。
■ パルス幅とビームプロファイルの決定的差
では、オリジナルとジェネリックで何が違うのか。
パルス幅とピークパワー
μs単位の超短パルスを安定供給できるために、熱拡散を最小化し、精密なアブレーションが可能となる。
一方でジェネリック機器は1-4msecが主流で、結果として熱変性層が広がり、瘢痕化やダウンタイム延長につながる。
ビームプロファイルの均一性
ガルバノスキャナと光学系の精度により、スポット形状が完全円形か楕円かが決まる。これが治療ムラやホットスポットによる熱傷の発生頻度を大きく左右する。
冷却効率
ジェネリック機器では冷却プレートの熱伝導率が低く、実際にはほとんど冷えないこともある。
■ 僕がオリジナルを選ぶ理由
これらの違いは、決してスペック表だけでは見えてこない。パルス波形、熱変性層の深度分布、冷却プレート表面温度など、微細工学的データを解析して初めて浮かび上がる性能差である。
さらに医療機器を選択する際、僕が必ず重視するのは安定性と安全性である。
特にレーザー機器やエネルギーデバイスは、出力の微細な変動が治療結果に直結するため、安定性が低い製品では照射ムラや予期せぬ熱損傷を招くことがある。
このことは例えば、Hruzaらが報告したレーザー照射後の熱障害リスク(Dermatol Surg. 1996;22(5):445-450)にも示唆されている。
また、安全性に関しては、単なるデバイス設計だけでなく、
・長期使用データ
・多施設共同試験
・有害事象報告数の少なさ
が重要である。
実際、最近のシステマティックレビューでは、FDA承認機器と未承認機器を比較した場合、未承認機器では有害事象報告率が約2.8倍高いことが報告されている。
特許数や論文数が多いメーカーは、その裏付けとして臨床試験数も多く、安定性試験も重ねられているため、必然的に安定性と安全性が担保されやすい。
これこそが、僕がジェネリック的機器ではなくオリジナルメーカーを選び続ける理由の一つだ。
そして何より、
オリジナルメーカーは「生み出す思想」で動いている。
ジェネリックメーカーは「真似る思想」で動いている。
この思想の差は、臨床結果の差に直結する。
患者さんに対して“結果で応える医療”を志す以上、
僕はこれからも、特許と論文で裏付けられたオリジナル機器を選ぶ。
それが、医療者としての矜持であり、
未来に責任を持つということだ。