TakahiroFujimoto.com

HOME MAIL
HOME PROFILE BOOKS MUSIC PAPERS CONFERENCES BLOG MAIL CLOSE

BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

BLOG|ブログ

映画『国宝』──“文化の鎮魂と昇華”

東京32度。休診日の今日は鷹の台でゴルフの予定だったのですが、1人が体調不良のため昨日キャンセルに。まあ暑すぎますから命拾いしたかもですね。

そんな僕は見たかった国宝を観にいきました。友人もこぞって絶賛するこの作品。

【映画『国宝』──“文化の鎮魂と昇華”】

歌舞伎という世界は、観る者にとって常に“遠くて近い存在”である。その美と型、血筋と修練、そしてそこに宿る無常観。今回の『国宝』は、そんな歌舞伎の世界を、一本の映画として極めて誠実に、そして壮大に映し出していた。

吉沢亮が演じる主人公は、ヤクザの息子として生まれながらも、歌舞伎役者として頂点に立つまでの人生を歩む。幼少期の貧しさ、血の宿命、芸に命を賭ける覚悟。そこには、人間が“国宝”と呼ばれるに至る過程の苦しみと美しさが凝縮されていた。

圧巻は、舞台稽古から本舞台へ至る演技の連続性。

カメラの前で芝居をするのではなく、舞台上の演技をそのまま映画に封じ込めたような、圧倒的な“現場感”があった。

そして何より、歌舞伎の型が単なる伝統芸能ではなく、“人間存在の究極の表現形態”であることを、理屈ではなく感覚で理解させる力があった。

ただ一方で、映画というメディアの限界も感じた。

舞台の空気感を封じ込めるがゆえに、映画ならではの演出美やカットの妙がやや犠牲になっていた感も否めない。

しかし、それを補って余りある熱量と誠実さがあった。

文化とは何か。

人間国宝とは何か。

その問いの答えは、国家の制度ではなく、観る者の胸に湧き上がるこの感情そのものだと、改めて感じさせられた。

“国宝”という言葉は、本来、ただの称号ではない。

そこには、滅びゆくものへの鎮魂と、永遠を願う祈りがある。

この映画は、まさにその祈りを現代に伝える作品だった。


【レーザー機器の“ジェネリック化”と、オリジナルを選ぶ理由】

【レーザー機器の“ジェネリック化”と、オリジナルを選ぶ理由】

僕が医療レーザーの世界に入って25年以上が経つ。

当初は、どの機器も唯一無二の存在感を放っていた。しかし近年、“ジェネリック機器”と呼ぶべき製品が急増しており、日本の場合は機器の認可が遅いために、新しい技術が開発されるたび、オリジナルの機器がデビューすると一年もしないうちにコピー機器が個人輸入され、同じ様に扱われる事が多い。僕は工学博士なので、開発者の気持ちがわかります。ぶっちゃけ、たまったものじゃないですよね。笑

たとえばフラクショナルレーザー。

世界で初めてフラクショナル技術を概念化し、特許化したのはReliant Technologies社(後のSolta Medical)である。2004年に発表されたFraxel(Er:glass 1550nm)は、非アブレイティブフラクショナルレーザーという新しい治療概念を打ち立てた(Dermatol Surg. 2004 Sep;30(9):1179-88)。

このFraxelの登場によって、皮膚若返り治療は“全層アブレージョン”から“部分的ミクロアブレーションによる再構築”へとパラダイムシフトが起きた。

しかしその後、市場には無数の類似機が現れた。特許回避のため波長やパルス幅を微妙に変えた製品や、OEMで供給されるジェネリック機器たちだ。

■ 特許と論文が示す“思想”の違い

重要なのは、オリジナルメーカーとジェネリックメーカーの間には、特許数・論文数という圧倒的な差があるという事実だ。

例えばフラクショナルCO₂レーザーの分野。

Lumenis UltraPulse ActiveFX/DeepFX
特許: 米国特許 US6849078B2 他多数
論文: PubMedで100報以上(例: J Biomed Opt. 2007 Jan-Feb;12(1):014003.)

DEKA SmartXide DOT
特許: CO₂フラクショナルスキャニング関連欧州特許複数
論文: DEKA CO₂シリーズ関連で70報以上(例: Dermatol Surg. 1998 May;24(5):315-20.)

一方、OEMジェネリック機器にはほとんど論文が存在しない。仮にあったとしてもメーカー主導の社内評価程度である。
この特許と論文の数は、そのメーカーが「生み出してきた技術の蓄積」そのものである。

■ パルス幅とビームプロファイルの決定的差

では、オリジナルとジェネリックで何が違うのか。
パルス幅とピークパワー
μs単位の超短パルスを安定供給できるために、熱拡散を最小化し、精密なアブレーションが可能となる。

一方でジェネリック機器は1-4msecが主流で、結果として熱変性層が広がり、瘢痕化やダウンタイム延長につながる。
ビームプロファイルの均一性
ガルバノスキャナと光学系の精度により、スポット形状が完全円形か楕円かが決まる。これが治療ムラやホットスポットによる熱傷の発生頻度を大きく左右する。
冷却効率
ジェネリック機器では冷却プレートの熱伝導率が低く、実際にはほとんど冷えないこともある。

■ 僕がオリジナルを選ぶ理由

これらの違いは、決してスペック表だけでは見えてこない。パルス波形、熱変性層の深度分布、冷却プレート表面温度など、微細工学的データを解析して初めて浮かび上がる性能差である。
さらに医療機器を選択する際、僕が必ず重視するのは安定性と安全性である。
特にレーザー機器やエネルギーデバイスは、出力の微細な変動が治療結果に直結するため、安定性が低い製品では照射ムラや予期せぬ熱損傷を招くことがある。
このことは例えば、Hruzaらが報告したレーザー照射後の熱障害リスク(Dermatol Surg. 1996;22(5):445-450)にも示唆されている。

また、安全性に関しては、単なるデバイス設計だけでなく、
・長期使用データ
・多施設共同試験
・有害事象報告数の少なさ
が重要である。

実際、最近のシステマティックレビューでは、FDA承認機器と未承認機器を比較した場合、未承認機器では有害事象報告率が約2.8倍高いことが報告されている。

特許数や論文数が多いメーカーは、その裏付けとして臨床試験数も多く、安定性試験も重ねられているため、必然的に安定性と安全性が担保されやすい。

これこそが、僕がジェネリック的機器ではなくオリジナルメーカーを選び続ける理由の一つだ。

そして何より、
オリジナルメーカーは「生み出す思想」で動いている。
ジェネリックメーカーは「真似る思想」で動いている。

この思想の差は、臨床結果の差に直結する。

患者さんに対して“結果で応える医療”を志す以上、
僕はこれからも、特許と論文で裏付けられたオリジナル機器を選ぶ。

それが、医療者としての矜持であり、
未来に責任を持つということだ。


購入した数冊の本

世の中で交渉はどの様に教えられているのか、数冊読んでみようと買ってみました。

どれもざっくり読んでみましたが、もうちょっと上を目指したいなあ。考えてみます。


曼荼羅

曼荼羅についての古本も買ってみました。

【曼荼羅──宇宙の縮図】

曼荼羅(mandala)。

この言葉を聞くだけで、僕はいつも静かな畏敬を覚える。

サンスクリット語で「マンダラ」(maṇḍala)とは、
「円」「本質を有するもの」「中心と周辺の秩序」を意味する。

曼荼羅とは何か

曼荼羅は、単なる仏教図像ではない。
それは、意識構造のマッピングであり、
外宇宙と内宇宙が相似であることを示すモデルだ。
真言密教で日本に伝わった2つの曼荼羅。
胎蔵界曼荼羅は、慈悲と生成の世界を。
金剛界曼荼羅は、智慧と空性の世界を。
そして、その二つを統合することで、全体性が現れる。
僕も真言宗で得度した際に学んだつもりではあるけれど、仏教の最終系である密教が完成するまでおそらく800年近い年月が流れていて、当然の様に変化はあった。空海が日本に持ち帰ったものは前期密教のみ。
得度した年に行ったインドの仏教生誕の地であるブッダガヤで購入した曼荼羅は、絵柄も内容も異なるものだった。

◆ 起源と意味

曼荼羅はもともと、インド密教における宇宙観を視覚化した図像であった。世界は無数の要素から成り立っているが、そこには中心があり、秩序がある。
密教はこれを、仏たちの住む世界として描いた。

◆ 曼荼羅の本質

曼荼羅とは単なる宗教画ではない。
それは宇宙の縮図であり、叡智の地図であり、自己の内なる構造を可視化したものだ。
外に広がる宇宙と、内に広がる心。
その両者が、曼荼羅の円の中で響き合う。

◆ 思索

曼荼羅を前にするとき、人は思う。
世界は無秩序のようでいて、実は調和しているのではないか。
自分自身もまた、無数の思考や感情に引き裂かれつつ、
中心に静けさを宿しているのではないか。
曼荼羅は語る。
「すべては一であり、一はすべてである」と。

◆ 密教誕生

インド。
炎天と土埃の大地で、釈迦が涅槃して数百年。
大乗仏教が花開いた後、その奥深くから、さらに秘奥の教えが芽生えた。
それが密教(タントラ仏教、ヴァジュラヤーナ=金剛乗)である。
マントラ(真言)、ムドラー(印契)、曼荼羅(宇宙図)、
これらを用いて「即身成仏」を実現するという革命的思想。
学びと思索、儀礼と哲学、身体と宇宙──
すべてを統合する世界観がそこにはあった。

◆ 前期密教の東漸

この思想は、中央アジアの砂漠を越え、敦煌、長安へと伝わり、そして日本に届く。
空海、最澄。
彼らが唐より持ち帰ったのは、胎蔵界と金剛界の曼荼羅。
それは宇宙と人間が不可分であることを示す壮大な地図だった。

◆ 後期密教とチベット

その後、インド密教はさらなる深化を遂げる。
無上瑜伽タントラ。
性瑜伽、大楽智慧、チャクラ覚醒、マハームドラー、ゾクチェン──
人体と宇宙をダイレクトに接続する体系が成立する。
これがネパールを経てチベットへ。
そしてラマ教(チベット仏教)として、政治、医学、芸術、瞑想、哲学の総合文化となった。

◆ 日本密教の歩み

日本には後期密教は伝わらなかった。
空海が中国で学んだのは前期密教であり、後期無上瑜伽タントラは、彼が帰国した後にインドで成立し、チベットへと伝わったからだ。
しかし日本密教もまた、曼荼羅を基に国家鎮護の教えとして根付き、武家、僧侶、庶民に至るまで神仏習合的叡智として広がった。

◆ 近代以降

チベット密教は20世紀、中国侵攻によって diaspora(離散)化し、ダライ・ラマ14世らの活動で世界に広まった。
一方、日本密教は廃仏毀釈、GHQ宗教教育改革を経て影を潜めながらも、今なお即身成仏と灌頂の技法を受け継いでいる。

◆ 思索

曼荼羅に描かれる宇宙。
そこにはただ静かな円があるわけではない。
無数の仏、菩薩、明王、天部。
それは人間精神と宇宙構造の完全なる相似を示す図譜であり、
「汝即ち仏なり」という根源的メッセージでもある。


カテゴリー