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【宇宙にブラックホールが増えるように、体内にがん細胞が増える】

【宇宙にブラックホールが増えるように、体内にがん細胞が増える】

ブラックホールとは、
強大な重力であらゆる物質や光を捕らえ、
その中心にある特異点に向かって収縮させる天体だ。

もともとは恒星だったものが、超新星爆発を経て、自身の重力に耐えきれず、無限に近い密度へと押し潰されることで誕生する。

NASAのX線天文衛星で観測される超大質量ブラックホールの周囲では、星間物質が渦を巻き、あたかも宇宙の中心を支配する暗黒帝王のように君臨している。

このブラックホールが周囲の星やガスを吸い込み、時空を歪ませ、その影響を遠くの銀河にまで及ぼす姿を想像するとき、僕はいつも、がん細胞の増殖を思い出す。

細胞分裂には厳密な制御機構がある。
DNAの複製、チェックポイント、アポトーシス(自然死)。
しかし、その監視網をかいくぐる一つの変異が、がん化の第一歩となる。

がん細胞は分裂のブレーキを失い、増殖シグナルのスイッチが入りっぱなしになる。
血管新生因子を放出して自らに酸素と栄養を引き寄せ、免疫逃避メカニズムを獲得し、全てを取り込み、取り込んだものを二度と外に出さない。

周囲の細胞を巻き込みながら組織構造を破壊し、血管やリンパを通じて遠隔臓器へと転移していく様は、まるでブラックホールが光さえも脱出できない事象の地平線の向こうへ全てを飲み込む姿に重なる。

興味深いのは、
宇宙にブラックホールが増えるということは、恒星が寿命を終えた結果であり、銀河形成や質量分布を支配するという、宇宙にとって不可欠な役割を果たすということ。

しかし、
体内に増えるブラックホール──がん細胞──は、
この小宇宙である身体に、秩序ではなく破壊と死をもたらす存在でしかない。

同じ「ブラックホール」という比喩を使いながらも、
宇宙では秩序形成の一端を担い、
身体では秩序を破壊する。

このパラドックスが、
僕にはいつも、人生の無常を思い出させる。

だからこそ、
物理学者がブラックホールを理解するように、
僕たちはがん細胞という暗黒星を理解し、
制御する方法を見つけなければならない。

それが、命を救う最前線に立つ医師としての使命だ。


大河ドラマべらぼう

大河ドラマべらぼう。最近の大河ドラマにしては格段に面白いですね。

昨日は終了後に千代田区紀尾井町の映像が。現在ではニューオータニや元赤坂プリンスホテル(紀尾井町ガーデンテラス)などがある地域です。

紀尾井町というのは、

紀州徳川家(紀州藩)

尾張徳川家(尾張藩)

井伊家(彦根藩井伊家)

この三家の上屋敷が隣接していたことから、それぞれの頭文字を取り「紀・尾・井」となったと伝えられているのです。

映像を観ていると、クリニックFに向かう道の見慣れた石垣が。

ハッとしました。そうか。紀州徳川家の敷地の北の石垣が残っていたんだ!

今朝早速写真撮影。良く見れば見るほど精密な素晴らしい石垣ではないですか!

南縁は赤坂見附のお堀沿いなので石垣が残っているのですが、この石垣は後から造られたものだと、勝手に思い込んでいました。

いつもの通勤路が急にありがたく思えてきました。


L’HIVER AU RITZ

クリニックFの外来で、患者さんにお土産いただきました。L’HIVER AU RITZ 。

ヴァンドーム広場にある1898年創業の老舗ホテル「Ritz Paris(リッツパリ)」のオリジナルグッズで、
シンガポールで創業したラグジュアリーティーブランド「TWG」と「Ritz Paris (リッツパリ)」とのコラボ商品です。

熟したベリーモルトとバニラ甘さ、濃厚なスパイスの香りをアクセントにした紅茶。

嬉しい!

The Ritz Paris and TWG Tea weave the fashion of the seasons into 4 different exclusive tea blends inspired by this very special hotel and reflecting an alliance forged throughout the Ritz Paris, where TWG Tea is served across its restaurants and rooms.
Ripe berries lend their malty sweetness to this blend of black tea accented by notes of rich vanilla and warm spice. A winter’s delight.


【量子力学と“引き寄せ”の誤解──なぜこうなったのか】

【量子力学と“引き寄せ”の誤解──なぜこうなったのか】

ここ数年で飲みの席などで、量子力学について勉強したことがあると言う人に会って話を聞くことが続いた。

僕も物理系の博士号(工学)を持ってるので量子力学についてはそれなりの知識はあるけど、そう言う人に話を聞くと、スピリチュアルなエネルギーが引き寄せるとかなんだか不思議な話をされて、全く話が噛み合わない。

僕はスピリチュアルな力の存在を信じるし、そこを否定する気は一切ないけれど、量子力学の名前を使うのはどうなのかなあと思うんですよね。

◆量子力学の本質

1920年代、ボーアたちは「観測するまで粒子は波のように広がっていて、観測した瞬間に一つに決まる」というコペンハーゲン解釈を提唱した。この「観測によって決まる」という部分が一人歩きし、
→「観測」=「人間の意識」
→「人間の意識」=「現実を決める」
という誤解が生まれた。
しかし実際には、量子力学が扱うのは電子や光子などミクロ世界の振る舞いであり、そこに「人間の意識」が直接作用するわけではない。

◆なぜ誤解が広がったのか

1970年代以降、ニューエイジ思想やスピリチュアルブーム、そして2000年代の『ザ・シークレット』などの引き寄せ本が登場した。
量子力学は誰も直感的に理解できないほど難しい。そのため「解釈の余地」が生まれる。難解さゆえに権威を感じやすく、そこに「願望実現理論」を投影すれば、心地よい万能感を得られる。

つまり
「難解さ」
「権威」
「解釈の自由度」
「人間の万能感を満たす構造」

これらが揃っていたから、量子力学はスピリチュアルに利用されやすかった。

◆“観測問題”とデコヒーレンス

1927年のソルヴェイ会議で、ボーアとアインシュタインは観測問題について議論した。ボーアは「観測によって波動関数が収縮する」としたが、現在では「デコヒーレンス理論」により、外界との相互作用でコヒーレンス(干渉性)が失われる過程で決まると考えられている。ここに「人間の意識」は介在しない。

◆多世界解釈という視座

また、「パラレルワールドがある」という多世界解釈(Everett解釈)は、ポピュラーサイエンスでは“夢のある物語”として語られるが、物理学的には“観測結果を分岐として扱う理論的整合性のための仮説”にすぎない。

◆心理学的背景

人間は「自分がこの世界をコントロールしている」という感覚を持つと安心する。だから量子力学という難解で権威ある理論を、「意識で宇宙を動かす」という自己啓発に紐づけたがるのだ。

◆ちなみに量子力学は、

粒子と波の二重性
知り得る限界(不確定性)
存在確率を支配する数式(シュレディンガー方程式)
そして現実が決まる仕組み(観測問題)
という4つの柱で成り立つ。
この不思議で美しい理論が、半導体から生命現象の分子動態、さらには宇宙論にまで応用される。

【1. 波動粒子二重性(wave-particle duality)】

1924年、ルイ・ド・ブロイが提唱した概念。
「電子も光も、粒子として振る舞うと同時に波としても振る舞う」というもの。光はヤングの二重スリット実験で干渉縞を示す「波」の性質を見せながらも、光電効果では「光子」という粒子として働く。同様に電子も、二重スリット実験で干渉縞を作るが、スクリーンには一点一点の粒子として当たる。つまり観測されると粒子、存在としては波。
この二重性が、古典力学では説明できない量子世界の本質。

【2. 不確定性原理(uncertainty principle)】

1927年、ハイゼンベルクが発表。
「位置と運動量を同時に無限精度で知ることはできない」という原理。例えば電子の位置を正確に決めようとすると、運動量(速度や運動の方向)の情報は失われる。逆も然り。これは測定機器の限界ではなく、自然界の根本的制約。このおかげで電子は核に落ちずに軌道上に存在できる(ボーア模型の安定性を量子力学的に保証する)。

【3. シュレディンガー方程式(Schrödinger equation)】

1926年、エルヴィン・シュレディンガーが発表。
量子力学の基本方程式であり、粒子の運動を記述する波動関数(ψ)の時間発展式。古典力学におけるニュートンの運動方程式に相当。波動関数の絶対値二乗(|ψ|²)が粒子の存在確率を与える。この方程式によって、電子軌道や量子井戸、トンネル効果などが理論的に説明可能となった。

【4. 観測問題(observation problem)】

量子力学における最も哲学的問題。
「観測するまで粒子は確率的に存在し、観測した瞬間に一つに決まる」という解釈(コペンハーゲン解釈)。
しかし、
何が観測を引き起こすのか
観測者の意識が必要なのか
環境との相互作用(デコヒーレンス)で決まるのか
これらは現在も議論されている。

シュレディンガーの猫の思考実験は、この観測問題を日常スケールに拡張し、我々の直感との矛盾を示したもの。

◆結論

量子力学とは、あくまで自然界の「計算ルール」を示す数学的フレームワークだ。
そしてこの誤解が世界中で広がる理由。それは我々人間が、“観測者”という立場に酔いたい生き物だからなのかもしれない。


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