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【新国際学会周遊記──キラキラ星、その音楽的魔法の源泉】

【新国際学会周遊記──キラキラ星、その音楽的魔法の源泉】

週末のN響の番組は、藤田真央とN響、至高の共演と題して2025年5月30-31日、第2038回NHK交響楽団定期公演(NHKホール)にて、指揮シュレキーテ、ピアノは藤田真央氏。披露されたのは、エルンスト・フォン・ドホナーニの作品、《童謡(きらきら星)の主題による変奏曲》Op. 25でした。

あの“キラキラ星”を題材とした変奏曲──まさに珠玉のひとときでした。
レビューも軒並み絶賛。
「冒頭、ティンパニと共に響いた透明感のあるピアノの音色が、幻想的な世界を描いた」との声も聞かれ。
今や世界的なピアニストになった角野隼人さんもThe Ftist Takeでご自身のキラキラ星変奏曲を演奏していますね。

https://www.youtube.com/shorts/SW_hiHCTly4?si=BRdT-ybe2i8iON3f&fbclid=IwY2xjawLmucBleHRuA2FlbQIxMQABHugsDXOkTvQCBdJzrGH4aJXRTJ5Tm-KeIXZIKJ5fTVlBdFGPQbsmspO7dPo1_aem_giPBjUDslmZD9FSreenIJA

──そういえば、と思い出しました。

僕がピアノを習い始めて半年、小学校一年生の時、人生初のピアノ発表会で弾いたのがモーツァルトのキラキラ星変奏曲の1番、2番、そして5番だったのです。
まさに音楽の原体験。いま思い返しても胸が熱くなります。
子どものころから親しんできた旋律。しかしこの“キラキラ星”、単なる童謡と侮るなかれ。実は何世紀にもわたり作曲家たちの“腕試し”として輝き続けてきた、深遠なる音楽遺産なのです。

○歴史の旅──“Ah! vous dirai-je, maman”から“キラキラ星”へ

その起源は18世紀、フランスのシャンソン《Ah! vous dirai-je, maman》(1774年)に遡ります。
このシンプルな旋律が音楽史の表舞台に登場したのは、1781年頃。モーツァルトが12の変奏曲(K.265)に仕立てたときでした。
19世紀にはイギリスの詩人ジェーン・テイラーの詩《Twinkle, Twinkle, Little Star》(1806年)と結びつき、英語圏の童謡として定着。
さらに明治期、文部省の《幼年唱歌集》(1901年)を通じて日本に渡来し、あの誰もが知る“キラキラひかる”という詩と共に国民的童謡となったのです。
たかが童謡、されど童謡──その航路は音楽文化のグローバルジャーニーそのものでした。

○旋律美の秘密──音楽理論と脳科学が教える“心地よさ”の正体

なぜこれほど記憶に残る旋律なのか?
それは実にシンプルな音楽的要素に支えられています。
完全五度と完全四度を中心とした心地よいハーモニー
AABA型の親しみやすい反復形式
ドレミファソラシド(Cメジャースケール)のみの音使い
脳内報酬物質(ドーパミン)を誘発する期待と充足のパターン
僕も自分の本の「音楽は名医」にも書きましたが、予測できるから心地よい」の法則を地で行く楽曲です。思えば代表がそれがキラキラ星なのですね。
子どもも大人も、素朴に心を揺さぶられる理由が、しっかり科学的にも裏打ちされているというわけです。

○クラシック音楽の“遊び心”──変奏曲は作曲家の腕試し

そしてこの旋律は、古今東西の作曲家たちの“創造力のキャンバス”として愛され続けてきました。
たとえば──
冒頭にも話した、モーツァルト《12の変奏曲》K.265:軽妙洒脱、古典派変奏曲の真骨頂。
これは聴けばすぐにわかります。サン=サーンス《動物の謝肉祭》第12曲「化石」:アイロニーを込めた一瞬の登場。
リスト《ユースフル・レパートリー》:ピアノ教育用ながら超絶技巧も潜む隠れ名曲。
フンメル《幻想曲と変奏曲》1804年:ウィーン風の洒落たサロン音楽として。
“子どものための童謡”でありつつ、“プロの腕試し”の楽曲でもある──これほど幅広い層を虜にする旋律は、他に類を見ません。

キラキラ星は“普遍的美”の音楽的縮図

古今東西、子どもからマエストロまで心を奪う旋律。そこに宿るのは、“シンプルの中に潜む知的遺産”です。
音楽史、脳科学、音楽理論の三位一体で成り立つ、美しさの原型。
次にキラキラ星を耳にするときは──ぜひ心の奥底で、この旋律が秘める深淵な美の力に思いを馳せてみてください。


今日の映画『細雪』

クリニックFの受付では、気分によって僕が好きな映画を流したり、「音楽は名医」の僕のラフマニノフのピアノ協奏曲の指揮の映像を流したりしています。

今日は『細雪』(1983;監督:市川崑)。

高校時代に好きだった文士、谷崎潤一郎の名作の映画化。

日本美と姉妹の情感が織りなす映像の旅。

蒔岡家の四姉妹が桜咲く嵯峨野で花見に興じるところから映画は始まりますが、四季折々の光と色彩を市川崑監督が巧みに捉え、映像詩のよう。

吉永小百合を筆頭に、岸惠子、佐久間良子、古手川祐子と、当時のトップスターがまさに勢揃いしていますが、本当に気品があって美しい4人。今の時代の女優さんなら、それぞれが誰になるのでしょう。

まさに日本の美ですね。


「テキーラ」で“本物”の感動

最近は、自分で買って飲むお酒はテキーラばかり。

先程も2種類届きましたが、テキーラは各社瓶の形が違うので、面白いですね。

中でも、アガベ100%テキーラは、単なる「お酒」ではなく、メキシコ文化の結晶です。植物が7〜10年かけて育ち、手作業で収穫、伝統製法で仕上げた一滴には、土地・時間・人の魂が込められています。しかもアルコールが均一で結構飲んでも、頭痛もなく、翌日お酒が残りにくい。

“甘味・酸味・塩味・苦味・旨味”は、味覚の5大要素として知られ、嗜好品の美味しさを分解する最強フレームワークです。

赤ワインの味の三要素が、「酸味、苦味、甘味」なので味の複雑さを楽しむ事ができるのだと思いますが、テキーラは「甘味・辛味・苦味」の要素を持つ、極めて複雑なスピリッツ。ちなみに医学的には辛味は味覚ではなくて、痛覚神経への刺激です。

テキーラは“ショット&ライム&塩”と言われていますが、上記三要素にない酸味と塩味を加える事でより複雑な味わいになるのです。

さらに「テキーラ」という呼称も、実は「シャンパン」や「スコッチ」と同様の「原産地名称保護(Denominación de Origen)」で国際的に守られているのです。単なる蒸留酒以上の“文化資産”の価値があります。

次回の乾杯は、ぜひアガベ100%のテキーラをライム&岩塩で──“本物”の感動が待っています。


【新国際学会周遊記──5.7兆円の医療資材赤字、国産化は夢か現実か?】

【新国際学会周遊記──5.7兆円の医療資材赤字、国産化は夢か現実か?】

最新の貿易統計を見ると、日本の医薬品と医療機器の貿易赤字は合わせて約5兆7,000億円──防衛費に匹敵する規模です。この巨額赤字に対して「国産化すればいいじゃないか」という議論が必ず起こりますが、現場目線で言えば、話はそう単純ではありません。

■ 「国産化」の壁とは?

◎バイオ医薬の現実
バイオ医薬品や希少疾患薬は、開発から製造まで極めてハイテク化・国際化しており、特に抗体医薬や細胞治療薬は原料も技術も国内で簡単には賄えません。加えてグローバル臨床試験が必要で、製造を日本に戻すには長期的な投資と仕組みづくりが不可欠です。

◎医療機器の構造問題
MRIやCT、心臓デバイスなどの高額機器は、海外勢の特許とブランドが市場を独占。日本国内では特に部品供給や周辺機器にとどまり、製品丸ごとの国産化は簡単ではありません。さらに厚労省の認可の問題。無失点が大切な官僚にとって、何も認可をしない事が最も出世に繋がりますので、今の体制が続く限りは、余程の大義がない限り、難しいのでしょう。

■ どこからなら可能か?

◎まずは中価格帯から
・超音波診断、レーザー美容機器、一般医薬品などは国内回帰しやすい領域
・ジェネリックやOTCは特に短中期で国産シフトが可能

◎安全保障の観点も忘れずに
感染症など有事の際に「国内で作れるか」は国家のレジリエンスにも直結します。

◎雇用・地域経済効果
医療産業は高度な雇用を生み、地域の経済基盤にも貢献可能です。特に地方の医療クラスターの育成がカギ。

■ 国産化の「落とし穴」

◎コスト高リスク
日本は賃金も電気代も高いため、薬価制度次第では「国産高止まり」で国民負担が増す危険も。

◎技術空洞化の懸念
ただ作るだけの産業になれば、逆に高付加価値の開発力が失われていくリスクもあります。

■ 現実解としての処方箋

【優先順位の明確化】
・「命を守る薬」「外貨が一番流出している領域」「比較的転換しやすい汎用品」
この3段階で明確にターゲットを絞り、段階的に国産化を進める。

【原料から製品まで】
ただの組立ではなく、原料、中間製品含めた一気通貫のサプライチェーンづくり。半導体産業と同じ発想。

【内需だけでなく外需も】
日本の人口は減少中。ASEANやインド向け輸出も最初からセットで戦略を立てること。

■ 参考になる日本の成功体験もある

・内視鏡や光学医療分野で世界シェアを取った成功モデル
・タミフルのような感染症対策医薬の国産化事例
・美容医療機器など自費診療領域でのアジア展開

■ 結論──「国産化」だけでは不十分

短期はジェネリックと汎用医療機器の強化、中期は高付加価値分野の国内一貫供給化、そして長期は革新的な医療産業を育てるイノベーション強化。この三段階で進めないと、赤字削減どころか逆に保険財政の悪化を招きかねません。
単なる製造業の議論ではなく、医療安全保障、産業育成、財政健全化の三位一体としての国家戦略が必要──これが医療資材赤字への“現実的”な解答だと考えます。

 


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