新国際学会周遊記──エクソソームやアインプロス・幹細胞培養上清は本当に安全か?
最近SNSや動画広告などでよく耳にする言葉があります。
「幹細胞培養上清は細胞を含まないから安全です。がん化の心配はありません。」
このフレーズ、本当にそうでしょうか?
日本で最新医療の広告が認められていない理由は、医師と患者との間に情報の非対称性があり、一方的な方向でのジャッジができないからなのです。
◆エクソソームの二面性
幹細胞培養上清に含まれるのは、サイトカインや成長因子、そしてエクソソーム。
近年、このエクソソームが再生や炎症抑制に役立つと期待されています。
ところが、がん細胞もまた大量のエクソソームを分泌しており、がんの遠隔転移にもエクソソームが使われているのは医師の常識です。
グリオブラストーマのエクソソームは血管新生を促し、腫瘍の浸潤を助ける (Skog J, Nat Cell Biol, 2008;10:1470-1476)。
乳がん由来のエクソソームは免疫抑制に働き、転移の土台を作る (Peinado H, Nat Med, 2012;18:883-891)。
つまり「エクソソーム=良いもの」ではなく、「エクソソーム=文脈次第」。
正常幹細胞からのものは有益に働きうるが、がんの例を見ればわかるように、逆の作用もあり得るのです。
現在は、エクソソームの分離を行う研究なども行われており、良いものだけを分離する技術が完成するのを待つべきじゃないでしょうか?
◆見えないリスク
では市販されている「幹細胞培養上清」はどうか?
本当に細胞が完全に取り除かれているかは、製造工程の質に依存します。
培養環境が不適切なら、がん化傾向を持つ細胞が混じる可能性も否定できません。
長期的な安全性に関するデータは、まだ十分に蓄積されていません。
世界的にも、FDAやEMAは幹細胞上清を「安全な再生医療」とは認定していません。多くは「研究段階」もしくは「未承認医療」とされているのが実情です。
私の結論
学会場で、ある欧州の教授はこう言いました。
「幹細胞上清は、がん化リスクが低いかもしれない。しかし“低い”と“ゼロ”は全く違う。われわれ臨床家は、ゼロでないものを安易に患者へ投与してはならない。」
まったく同感です。
幹細胞培養上清は「安全」と謳われることが多いが、がん細胞も同じようにエクソソームを放出している以上、リスクを完全には否定できない。
現時点では、美容目的で安易に使用するべきではない。
華やかな宣伝文句に惑わされる前に、立ち止まって考える必要があるのです。
まだ長期的な医学エビデンスが無いものを、他人に勧めてしまう行為は、善意の加害者になる可能性もあります。薬剤管理の問題もあるとは思いますが、点滴だけの死亡症例も出ている現状では、相当慎重にというのが自分の考えですね。
アンチエイジング医療は、新しい施術にすぐ飛びつくのではなくて、安全性やエビデンスの確立を確認しながら、できるだけ遅く施術に入った方が良いと思いますよ。





















