TakahiroFujimoto.com

HOME MAIL
HOME PROFILE BOOKS MUSIC PAPERS CONFERENCES BLOG MAIL CLOSE

BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

BLOG|ブログ

「ワインとバッハ+α」

今週火曜日 2025年10月7日 19時から

「ワインとバッハ+α」

が半蔵門、麹町のゴルフ医科学研究所で開催されます。チェリスト金子鈴太郎さんを迎えて続けてきた会ですが、金子さんが地方の交響楽団に就職が決まるために、いよいよ今回23回目と次回24回目で最後になります。

23回目は、すでに4周目となったバッハ無伴奏チェロ組曲第六番とブリテン無伴奏チェロ組曲第二番。どちらもニ長調です。

https://www.facebook.com/1486146253/videos/pcb.10240227481733166/777173078533267

バッハ無伴奏チェロ組曲第6番の素晴らしさを端的にまとめると──

1. 楽器の限界を超える構造美
本来5弦チェロ(現在は4弦で演奏)を想定して書かれており、高音域の伸びやかな旋律と低音の骨格が共存する。楽器の技術的・表現的可能性を極限まで引き出している。

2. 祝祭的で超越的な響き
第1曲プレリュードの輝かしい上昇音型に象徴されるように、全体が「歓喜と解放」の雰囲気を湛える。第1〜5番に比べ、より壮大で明朗な色彩を持つ。

3. 精神性の頂点
全6曲中の総まとめとして位置づけられ、技巧・構造・精神性が統合される。多声的でポリフォニックな響きは、チェロ独奏でありながらオーケストラ的厚みを感じさせる。
──つまり、第6番は「チェロのための交響曲」とも呼ぶべきスケールを持ち、演奏者と聴き手の双方を高みに引き上げる普遍的な力を備えているのです。
最後のバッハ無伴奏チェロ組曲。クラシック音楽の教養を高めるためには、生演奏を聴く経験しかありません。まだお席は用意できるそうですので、宜しかったらいらしてくださいね。

【参加費】
15,000円(税込) 立食スタイルの食事付きです。

【曲目】
・バッハ:無伴奏チェロ組曲 第6番 ニ長調 BWV1012
Johann Sebastian Bach: Suite for Solo Cello in D Major, BWV1012
I. Prélude
II. Allemande
III. Courante
IV. Sarabande
V. Gavotte I & II
VI. Gigue

・ブリテン:無伴奏チェロ組曲第2番Op.80
Benjamin Britten: Second Suite for Cello Op.80
I. Declamato: Largo
II. Fuga: Andante
III. Scherzo: Allegro molto
IV. Andante lento
V. Ciaccona: Allegro

【ワインリスト】
フラテッリ・フェレーロ
2017バローロ ブリッコ・マンゾーニ
Fratelli Ferrero
2017Barolo “Bricco Manzoni” DOCG
15,400円(税込)

2021ドメーヌ・ピエール・ガイヤール
コート・ロティ
2021Domaine Pierre Gaillard
Côte-Rôtie
14,300円(税込)

 


【新国際学会周遊記──たるみ治療の雄サーマクール後継機をめぐる賛否と僕の立場】

新国際学会周遊記──たるみ治療の雄サーマクール後継機をめぐる賛否と僕の立場

国際学会の会場では、休憩時間のコーヒーブレイクにこそ白熱した議論が生まれます。大ホールでの発表以上に、隣に座った同業の先生との立ち話が、その日の学会のハイライトになることすらあります。今回のテーマは、サーマクールの後継機たち。

サーマクールのデビューは鮮烈でした。

2002年にはラジオ波(Radio freaquency)という電流を使用した治療法がASLMS(米国レーザー学会アトランタAtlanta)で発表されました。光やレーザーを利用するのではなく、電流を使用する治療を提示したのです。この治療はたるみに代表される「形態的老化」に効果を発揮します。この写真は初代のサーマクールの際に僕が使用したプレゼンテーションです。左側の写真は試作機です。

美容医療の世界は、オリジナル機器が登場した後、必ずジェネリック的な追随品が現れる。今回はオリジナルの特許技術が20年で切れた、サーマクールのその後の話です。

サーマクール後継とジェネリック群

2019年 サーマジェン(ThermaGen)
韓国製。周波数3.6MHz。サーマクールの原理を周波数を買えただけで、ほぼそのまま踏襲した最初の“パクリ機”。

2022年 ボルニューマ(Volnewma)
韓国製。周波数6.78MHz。サーマジェンより高い周波数を採用し「痛みの軽減」を謳う。

2023年 オリジオ(Origio)
韓国製。周波数6.78MHz。同じくジェネリック系の一つで、広告上は「快適性の改善」を強調。

2023年 デンシティ(Density)
韓国製。周波数6.78MHz。オリジオと同時期に登場し、差別化は限定的。

2024年 ザーフ(Zaf)
韓国製。周波数6.78MHz。最新のジェネリック群に加わったが、原理的には同列。

つまり系譜としては、最初に周波数3.6MHzのサーマジェンが登場し、特許が切れたその後は、すべてオリジナルの6.78MHzに統一されているという構図です。

「ジェネリック機をどう見るか」

一見すると改良版のように見えますが、結局のところ原理はサーマクールと大差なく、オリジナルに比べて研究開発の裏付けが弱いのは事実です。学会でも「痛みの少なさをアピールするが、本当に効果が持続するのか?」という疑問が常に出ています。

賛成派──“ジェネリックも進化する”

「サーマジェン、ボルニューマ、デンシティ、オリジオ、ザーフ。これらはサーマクールの特許が切れてから生まれたジェネリック機だが、単なるコピーにとどまらない。冷却技術や照射アルゴリズムの工夫で痛みを減らし、波長の組み合わせで治療範囲を広げている。臨床的にはむしろサーマクールを上回る快適さを感じる患者も多いんだ。」

ある韓国の若手医師はそう熱弁を振るっていました。確かに学会誌の中にも、韓国製RF機器とオリジナル・サーマクールの比較で、患者満足度に差がないとする報告もあります(J Cosmet Laser Ther 2021;23(7):375-381)。

反対派──“ジェネリックは所詮コピー”

一方で、別の先生は眉をひそめながらこう言います。

とはいえ、根本的な原理はすべてサーマクールと同じ。むしろ設計の甘さが副作用リスクを増やしている可能性すらある。価格競争に巻き込まれて質が落ちるのがジェネリックの常だよ。

僕自身の立場──“ジェネリックは嫌い”

正直に言えば、僕は工学博士としてのバックグラウンドもありますし、機器開発にかかわったこともあり、機器を一から作り上げることの大変さも知っています。基本的にジェネリックが好きではありません。

医薬品でも医療機器でも、オリジナルを作ったメーカーの知恵とリスク、そして莫大な研究開発費があるからこそ、一つの製品は世に出ます。その苦労を横目に、後から似たものを作り「より安く、より痛みが少なく」と謳うのは、どうにも僕の美学には合わないのです。

結局、サーマクールの特許が切れた後に続いた韓国製ジェネリック機は、2019年から2024年の間に一気に揃い踏みしました。しかしそれで本当に“革新”といえるのか──そこに僕は強い疑問を抱いています。

もちろん、患者にとって選択肢が増えるのは良いことです。しかし僕は、自分のクリニックでは「本家」にこだわりたい。

新しいものを取り入れるなら、例えば、エムフェイスや、ソフウェーブのように“まったく異なるアプローチ”で次の地平を切り拓いた機械であってほしいと思っています。

ただしここでも冷静さは必要です。短期的な満足度は高くとも、長期のデータが揃うのはこれから。期待値と科学的裏付けの間で、常にバランスを取らなければならないのが僕らの仕事です。

結び──進化の中での選択

学会場の空気は、「希望」と「懐疑」の二つの波で揺れ動いていました。ジェネリックに未来を見出す人もいれば、オリジナルの威厳を重んじる人もいる。そのどちらも間違いではありません。

僕が選びたいのはオリジナルと、本当に革新性を持った機器だけです。模倣ではなく、創造。コピーではなく、新しい物語。

医療は常に「新しさ」と「快適性」と「科学的根拠」の間で揺れ動きます。そのバランスを取るのは施術者の哲学であり、美学です。僕は、ただ効果があるというだけではなく、患者が笑顔で「また受けたい」と言える治療を選びたい。

美容医療の進化を旅するなら、その方がずっと心が踊るのです。

 


【新国際学会周遊記──薬の第二幕を生きるイベルメクチン】

新国際学会周遊記──薬の第二幕を生きるイベルメクチン

寄生虫から、がん・神経疾患、そして感染症へ

イベルメクチン。

1980年代に寄生虫薬として登場し、熱帯病を撲滅に近づけ、ノーベル賞へと至った薬です。

しかしその物語は、寄生虫疾患だけで完結しません。ここ数年、この薬は「がん」「神経変性疾患」「感染症」といった多彩な領域で再評価されています。

この薬については特にコロナ以降数多くの報告がありますので、僕も、薬学博士号を持つ医師として現段階での評価をまとめておこうと思います。

イベルメクチンは、マクロライド系に分類される抗寄生虫薬で、放線菌が産生するアベルメクチンの化学誘導体です。
米国メルク社では「ストロメクトール(Stromectol)」の商品名で製造・販売され、日本ではマルホが取り扱っています。

その起源は、静岡県伊東市のゴルフ場近くで採取された土壌にまで遡ります。

この土壌から大村智博士が分離した放線菌 Streptomyces avermitilis がアベルメクチンを産生し、その誘導体としてイベルメクチンが開発されました。米国メルク(MSD)との共同研究により改良が進められ、最初はフィラリアや疥癬などを対象とした動物用医薬品として使用されました。

そして1987年、ヒトへの使用が正式に承認されます。
現在では、アタマジラミ、疥癬、河川盲目症(オンコセルカ症)、腸管糞線虫症、鞭虫症、回虫症、リンパ系フィラリア症など、幅広い寄生虫感染症の治療に用いられています。

①がんとの闘い──炎症とシグナルを断つ

がんは単なる細胞の暴走ではなく、周囲の「腫瘍微小環境」によって育まれます。炎症性サイトカインが火をつけ、免疫細胞を抑え込み、血管新生を呼び込む。

イベルメクチンはここに割り込む可能性を示しています。
NF-κBという炎症の司令塔を抑え、腫瘍環境の炎症を静める。

がん細胞に直接作用しては、ミトコンドリアを介したアポトーシスを誘導し、自己破壊へと追い込む。

さらにWNT/β-catenin経路など、がんの成長を支えるシグナル伝達を阻害することも報告されています。

興味深いのは、この作用が免疫療法との相性を高める可能性です。

免疫チェックポイント阻害薬が効かない腫瘍では、炎症環境がT細胞の働きを封じてしまうことがあります。イベルメクチンで環境を整えることで、T細胞が再び目を覚ます──そんな併用戦略が国際学会の議論で語られるようになってきました。

まだ臨床段階には至っていませんが、寄生虫薬から腫瘍免疫薬への転身という壮大な物語は、研究者の想像力を大いにかき立てています。

②パーキンソン病──神経を守る炎症制御

もうひとつの挑戦はパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患です。
この病気の背景には、脳内での慢性炎症があります。とりわけミクログリアという免疫細胞が過剰に活性化し、炎症性サイトカインを放出することで、ドーパミン神経の死を加速させます。

イベルメクチンはSTAT3などのシグナル経路を調整し、この炎症を鎮める可能性があると示されています。動物モデルでは、ミクログリアの暴走が抑えられ、結果としてドーパミン神経が保護される。行動レベルでも症状の軽減が見られたという報告もあります。

さらに、イベルメクチンは脳内で神経伝達を調整する別の作用も示唆されています。

イオンチャネルや受容体に働きかけ、ドーパミンの放出や神経ネットワークのバランスを取り戻す可能性。寄生虫の神経筋を麻痺させる薬が、今度は人間の神経を守る方向に応用されようとしているのです。

もちろん、これはまだ研究段階にすぎません。しかし「寄生虫薬が神経を救うかもしれない」という逆転の発想は、医学の歴史を振り返るときにしばしば現れる大きな転換点の予兆なのかもしれません。

③COVID-19──世界が注目した瞬間

そして2020年、世界的パンデミックの最中に再び脚光を浴びたのが「抗ウイルス作用の可能性」でした。

イベルメクチンはウイルスが宿主細胞の核に侵入する際に利用する「インポーチンα/β1経路」を阻害するとされ、試験管レベルではSARS-CoV-2の増殖を強力に抑える結果が示されました。

この報告は瞬く間に広まり、各国で臨床試験が行われました。

しかし結果は一様ではなく、大規模で信頼性の高い試験では有効性が確認されず、現在は「標準治療として推奨しない」という立場が国際的なコンセンサスとなっています。

ただし、ここで重要なのは「完全に否定された」のではなく、「単剤での有効性は乏しい」という点です。

抗炎症作用や免疫調整作用を持つことから、重症化予防や他の治療との併用に可能性を探る研究は続いています。パンデミックという未曽有の危機の中で、古い薬に光を当てる「リポジショニングの力」を世界が改めて体感した瞬間でもありました。

薬の第二幕という視点

こうして見てみると、イベルメクチンの歩みは「薬の旅路」の縮図のようです。

• 寄生虫疾患を救い、
• 皮膚の炎症治療に使われ、
• がんや神経疾患の研究に広がり、
• 感染症のパンデミックで再び脚光を浴びた。

薬には人生の第二幕がある。

人類が直面する新たな課題に応じて、同じ分子が異なる物語を紡ぎ続けるのです。

結びに

国際学会の廊下で、研究者たちが語り合うイベルメクチンの新しい姿は、単なる薬の再利用ではありません。

それは「自然から与えられた分子の潜在力を、時代ごとに掘り起こす営み」そのものです。

寄生虫から皮膚へ、皮膚から脳へ、そして腫瘍やウイルスへ。

イベルメクチンの旅路は、私たち自身の科学の旅路と重なっています。

──薬にも、人生と同じく、第二幕がある。

その幕が上がる瞬間に立ち会うことこそ、臨床医であり研究者である僕らの醍醐味なのだと、改めて感じるのです。

イベルメクチンの図はwikiよりお借りしました。


カテゴリー