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【新国際学会周遊記──茶の社会的歴史と禅・医学の交点】

新国際学会周遊記──茶の社会的歴史と禅・医学の交点

◆作陶と茶の記憶

作陶は僕の小さな趣味のひとつです。また、直接師について学んだことはありませんが、大叔母が茶道の教室を開いていたこともあり、自然とお茶を点てる所作には親しんできました。自分の手で作った器に抹茶を点て、一服を味わう。その瞬間は、まさに時間を超えた喜びでもあります。

◆三国志の始まりと「茶」

三国志演義をひもとくと、若き日の劉備玄徳が母のために高価な茶を買い求めたという逸話に出会います。ところが母はそれを「不必要な奢り」として怒り、茶を川に流してしまったのです。この場面に浮かび上がるのは、茶が単なる嗜好品ではなく、孝行や倫理、社会的規範と深く結びついた存在であったという事実です。
つまり茶は、最初から「飲み物」という枠を超え、人間の欲や道徳を映し出す鏡であったのです。

◆茶と医学──薬から嗜好品へ

茶の源流を辿れば、その出発点は薬用でした。『神農本草経』(後漢時代、1–2世紀)には「久しく服すれば人を益し、力を増す」と記され、解毒や利尿に用いられたと伝わります。現代科学もこの知恵を裏づけています。カテキン類は抗酸化作用を示し、心血管疾患や糖尿病の予防効果があることが報告されています。
劉備の母が水に流した茶は、当時の社会にとって「医療資源」であり、浪費を戒める象徴でもあったのです。

◆禅僧と抹茶──眠気を払い、心を澄ます

宋代に日本へ伝わった抹茶は、禅僧にとって修行の友となりました。長時間にわたる坐禅は眠気を誘います。その時に助けとなったのが、茶に含まれるカフェインとテアニンです。テアニンが脳波にα波を増加させることは研究によって示されており、抹茶が「静けさの中の覚醒」を支える科学的基盤が見えてきます。

◆禅と医療──心身を調える「一服」

現代医学は、禅の効用を新しい言葉で語り直しています。マインドフルネス研究はストレス低減や免疫機能の改善を裏づけ、そこに添えられる茶は、まさに臨床的な「補助療法」となります。
さらに抹茶に含まれる抗酸化物質は生活習慣病予防に寄与し、精神医療と身体医学の双方に橋を架けているのです。

◆茶室と茶道──医学から美学へ

千利休によって大成された茶道は、やがて医学的効用を超え、美学と哲学の世界へと昇華しました。しかし、その根底には「心身を調える」という発想が脈打っています。閉ざされた茶室で一服の茶を味わう行為は、自律神経を副交感優位に導き、心拍を落ち着ける「環境療法」そのものでした。
茶道は「芸術化された医療空間」であり、同時に「禅の哲学を日常に組み込む装置」だったのです。

◆無常を映す茶碗

抹茶は熱を帯び、やがて冷め、そして飲み干され、碗は空になります。この一連の過程は、生老病死の四苦を象徴する小さなサイクルに他なりません。茶碗の底を見つめるとき、私たちは医学が向き合う有限な生命と、仏教が説く「無常」の哲理を重ね合わせているのです。

◆茶室とクリニック──癒しの場の共通原理

茶室に足を踏み入れると、まず感じるのは「静けさ」です。土壁や畳、わずかな採光、そして掛け軸や花一輪といった最小限の装飾。そのすべてが人の心を落ち着かせ、外界の喧噪を遮断します。この構造は現代医学が注目する「環境療法」に他なりません。
ストレス医療の分野では、照明や音響、香り、温度といった感覚刺激が自律神経に大きく作用することが報告されています。茶室が数百年前から実践してきた空間設計は、実は最先端の環境医学の原理に通じているのです。

◆茶の所作と診療の所作

茶を点てる一連の所作──柄杓で湯をすくい、茶筅を振り、茶碗を客に差し出す──その流れには「間」があります。この「間」がもたらす心の調律は、医療現場における医師の所作にも似ています。
診察室で患者に声をかける間合い、処置を施す手のリズム。そこに急ぎや乱れがあると、不安や緊張が増幅されます。逆に静かで丁寧な所作は、患者の自律神経を和らげ、治療そのものを補強するのです。つまり茶の所作は「医療の所作の原型」であったとも言えるでしょう。

◆茶と音楽──空間の二重奏

私自身がクリニックで大切にしているのは「音楽」です。待合室で流れるバッハやオペラの旋律は、患者の緊張をほどき、治療に向けた心身の準備を整えます。茶室の静寂に響く茶筅の音と同じように、音楽は空間に「律動」を与え、身体のリズムを共鳴させます。
医学的にも、音楽療法は副交感神経を優位に導き、痛みや不安を和らげる効果が報告されています。茶と音楽、二つの異なる文化的表現は、同じ「心身を癒す波動」として響き合うのです。

◆茶室の精神を未来の医療へ

茶道が大切にしてきた「和敬清寂」の精神は、現代のクリニックデザインにも応用可能です。患者を迎える「和」、医療者と患者の相互尊重としての「敬」、清潔で整えられた空間の「清」、そして医療が目指す静かな安心の「寂」。
こうしてみると、茶室は単なる伝統文化ではなく、現代の医療空間をデザインするうえでの哲学的指針となり得るのです。

◆一服の未来

自作の茶器で点てた抹茶を口に含むとき、僕は祖母の時代の茶の記憶と、医学・仏教・禅が重なり合う大きな歴史の流れを感じます。
クリニックの待合室で患者が音楽と静寂に包まれるとき、その背景には茶室と同じ原理が流れている──そう考えると、未来の医療のかたちもまた「一服の茶」のように、シンプルで深いものになっていくのではないでしょうか。

◆現代における茶──ストレス社会の処方箋

今日、抹茶は世界的なスーパーフードとして脚光を浴びています。抗酸化作用、抗炎症作用、集中力を高める効果が明らかにされ、現代のストレス社会において新しい「処方箋」として再評価されています。
オフィスで抹茶ラテを手にする現代人の姿は、千年前、坐禅堂で眠気と闘った僧侶とどこかで重なります。科学と宗教、医学と哲学──そのすべてを結びつけるのが、一服の茶。
劉備の母が「水に流した茶」は、時代を超えて、人間の生と死、欲と戒め、治療と修行を結ぶ「文化の水脈」として、今日もなお流れ続けているのです。


クリニックFとゴルフ医科学研究所連名の論文

クリニックFとゴルフ医科学研究所の連名で、HIFEM機器により、コア筋肉を鍛える事で、ゴルフドライビング飛距離が伸びるという論文がJOURNAL OF ORTHOPAEDICS AND SPORTS MEDICINE誌にパブリッシュされました!

基本は医学論文ですが、物理数式を8つ入れたので、なかなか査読者が付かずに苦労しましたが、良かったです!

ご希望の方にはPDFファイルをお渡しできますよ!

開業して5年目にしてゴルフ医科学研究所の名前を世界に出せたのが嬉しいです。

Institute of Golf Medical Science, 2-5-10
Kojimachi, Chiyoda, Tokyo, Japan


【新国際学会周遊記 性ホルモンから見る昭和・平成・令和】

新国際学会周遊記 性ホルモンから見る昭和・平成・令和

──人間の内なるリズムと社会のかたち

社会の空気や人々の価値観は、経済や政治の出来事によって変化すると考えられがちです。しかし、その深層には「ホルモン」という生物学的なリズムが流れているのかもしれません。
とりわけ性ホルモン──男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)は、個人の行動を超えて、社会の方向性そのものを左右しているのです。
ここでは、昭和から平成、令和へと移り変わる日本社会を「性ホルモン史観」で読み解きながら、私たちがどう生きるべきかを考えてみたいと思います。

◆昭和:テストステロン優位の拡張期

戦後復興から高度経済成長へ──昭和はまさにテストステロンの時代でした。
競争、拡張、スピード、そして「俺についてこい」という強いリーダーシップ。
テストステロンは攻撃性や競争心を高める一方で、公平感覚をも育むことが知られています。そのため、社会全体は熾烈な競争を繰り広げつつも、秩序や公正を重んじる方向にまとまり、経済的な奇跡を成し遂げたのです。

◆平成:ストレス社会とホルモン低下

バブル崩壊以降の平成は、長引く経済停滞と社会不安により、慢性的なストレスが人々を覆いました。
ストレスホルモンであるコルチゾールの慢性的上昇は、テストステロンやエストロゲンを抑制し、人々は「元気」と「優しさ」を失いやすくなった。過労死やうつ病といった社会問題は、このホルモン環境の崩れを背景に見ると理解しやすいのです。

◆令和:エストロゲンとオキシトシンの時代へ

超高齢社会に入った令和は、力強い拡張よりも「共感」と「ケア」が求められる時代です。
女性ホルモンやオキシトシンは「つながり」「持続可能性」を象徴します。研究でも、エストロゲンが感情認知や共感性に影響することが示されています。介護や子育て支援、地域コミュニティの再生といった政策課題は、まさにこのホルモン特性と呼応しているといえるでしょう。

〇性ホルモンが社会に与える影響

1. 男性ホルモンと公平感覚
 競争心や性エネルギーを生み出す一方で、公平さや弱者への優しさをも育む。

2. 女性ホルモンと共感性
 妊娠や育児だけでなく、共感や感情的な調和を支える。

3. ホルモンと社会設計
 テストステロン優位の時代は拡張と競争へ、エストロゲン優位の時代は共感と持続性へ。社会の方向性そのものが、ホルモンの影響を受けている。

4. 現代へのヒント
 ストレスによるホルモン低下は優しさを奪う。だからこそ、食事・運動・人間関係・休養といった生活習慣は、個人の健康だけでなく、社会全体の空気を変える基盤になる。

結びに──ホルモンが時代を作る

昭和はテストステロン、平成はストレスによるホルモン低下、令和はエストロゲンとオキシトシン。
この流れで時代を眺めると、政治や経済の出来事は単なる外的要因ではなく、私たちの体内リズムの反映として浮かび上がります。
性ホルモンは、個人の行動を超えて社会を形づくる無形の力。
個人の中のエネルギーが社会に波及し、社会の空気がまた個人に影響を返す。
その循環の中に、「死ぬまで元気に生きる」ためのヒントがあるのではないでしょうか。


【新国際学会周遊記 ワインとバッハ+αの夕べ】

国際学会周遊記 ワインとバッハ+αの夕べ

本日は「ワインとバッハ+α」の会。7年ぶりに上京した両親、そして真ん中の弟も揃い、家族でチェリスト金子鈴太郎さんによるバッハとブリテンの無伴奏チェロ組曲を堪能しました。

https://www.facebook.com/1486146253/videos/pcb.10240119580075692/1306779111243495

音楽に合わせて用意されたワインは、ジュヴレ=シャンベルタンとシャンボール=ミュジニのピノ・ノワール。いずれもハ短調のチェロの深い響きと見事に溶け合い、音と香りと味わいが三位一体となった贅沢な時間となりました。

半世紀前に撮った家族写真とは顔ぶれも変わりましたが、家族の大切さは変わらないものです。

戸籍制度を軽んじ、夫婦別姓によって家族の絆を形骸化させるような動きには強い疑問を覚えます。

むしろ、先祖を敬い、子孫の繁栄を祈りながら、日本人としてのアイデンティティを確かに受け継いでいきたい──そんな思いを新たにした夜でした。


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